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乱れた食生活 うつの一因…食事指導で精神疾患改善

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肥満解消 栄養素の補充

理想的な食事を模型で示しながら栄養指導を行う今泉さん(東京都小平市の国立精神・神経医療研究センター病院で)

 うつ病は実はメタボの人に多い――。肥満を招く偏った食生活や、栄養素の不足が、抑うつなどの精神症状を引き起こすことが近年の研究で分かり、患者の食事指導を行う病院も出てきた。

 栄養の基礎的な研究から、外来の食事指導まで幅広く行う国立精神・神経医療研究センター病院(東京都小平市)の取り組みを見た。

 病院の一角にある栄養管理室。定期的な精神科外来の日に、ここで食事指導を受ける患者が増えている。最近、室長の今泉博文さんら管理栄養士に、真っ先にスマートフォンの画面を見せる患者が目立つ。

 「どうですか。頑張りましたよ」

 「いいですね。野菜もしっかりとっている」

 患者のスマホには、この日までに口にした食べ物の写真が記録されている。3食きちんと食べて、ご飯の量は少なめ、野菜や果物も加えていれば、今泉さんはほめてくれる。細々としたカロリー計算は、患者の負担になるので求めない。

 「コンビニ弁当の日も、野菜の総菜を一つ加えたり、砂糖無添加の野菜ジュースを飲んだりするだけで栄養バランスは良くなります。患者さんは一人暮らしの人が多いので、楽に継続できることが大切です」と今泉さんは語る。

 うつ病などを発症する人は、食事を中心とした生活リズムが大きく乱れていることが多い。深夜にいつも間食をし、朝起きられない肥満気味のうつ病の男性は、今泉さんの食事指導で夕食を早くとり、早く床につくようにした。すると次第にやせて活動的になり、うつ病も回復していった。

 うつ病患者は、食事がのどを通らずやせ細るというイメージを持たれやすい。だが、むしろ肥満気味で中性脂肪や血糖値が高い人に多いことが、同センター疾病研究第三部部長の功刀くぬぎ浩さんらの研究で分かった。

 食欲を調整する脳の部位は、ストレスを調整する部位でもあるので、うつ病患者に「ストレス太り」が多いのは納得できる。糖尿病などの代謝異常が起こると、体内の組織に慢性的な軽い炎症が起きてうつ病の発症リスクが高まったり、血糖値を下げるインスリンの機能が低下して、脳機能に悪影響が出たりするとの指摘もある。

 栄養素の不足も精神症状を引き起こす。例えば鉄分。不足すると、集中力低下や疲労感、焦燥感などが起きることが知られている。多量の出血を伴う出産後、抑うつ的になる産後うつは、鉄分不足との関係が指摘されている。功刀さんは「産後うつの全てに効くわけではないが、鉄分の補充で改善する人はいる」と話す。

 緑黄色野菜に多い葉酸は、不足すると神経伝達物質の働きに影響して意欲低下を招くなど、精神症状に関係する栄養素は多い。

 ただ、サプリメントでとり過ぎると体に害を及ぼす栄養素もあるので注意が必要だ。

 うつ病治療は、薬物療法とカウンセリングが両輪とされてきたが、功刀さんは「生活習慣病と同様に、食事や栄養、運動の指導を丁寧に行うことも重要になる」と話している。(佐藤光展)

 外来の食事指導 国立精神・神経医療研究センター病院では、医師が必要と判断した患者に行っている。栄養バランスの良い献立は、今泉さんと功刀さんの著書「うつ病の毎日ごはん」(女子栄養大学出版部)に詳しい。

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