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宋美玄のママライフ実況中継

コラム

飛行機での出産、おめでたいだけではありません!

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幼稚園でおじぎ草を全部おじぎさせている娘

 幼稚園に慣れてきた娘ですが、今のところ、まだすんなりとは登園せず、門の外で園児たちを迎えられている園長先生が見える直前まで抱っこし、園に着いてからも植わっているイチゴやブルーベリーを観察したり色々と遠回りしたりしてから教室に入って行きます。私と別れてしまえば気持ちを切り替えているようなのですが、もうちょっとスッキリ登園してくれたら私の気持ちも楽なのですが……。

機内での出産報道、2点の疑問

 先日、カルガリーから成田に向かうエア・カナダの機内で、搭乗していた女性が産気づき、乗り合わせた医師たちの立ち会いのもと無事出産したというニュースがあり、しばらくテレビやネットニュースを騒がせたことはみなさんの記憶にも新しいと思います。

 まずは、母子ともに健康で何よりでしたが、おめでたいニュースとして扱われる前に、産婦人科医としては知りたいことが2点ありました。

 1点は、妊娠何週だったのかということです。航空会社ごとに妊娠中の搭乗については条件を設けており、臨月に近くなれば搭乗を断ったり医師の診断書や同乗を求めたりするところがほとんどです。

 今回のケースでは、赤ちゃんの両親ともに「妊娠には気づかなかった」と言っており(非常に太っていて、元々月経不順の女性で出産まで妊娠に気付かないという人もまれにいるのは事実です)、それを信じるならば分娩予定日が分からないので妊娠週数も分かりません。報道では、インファントウォーマー(生まれたての赤ちゃんを温める機械。特に早産児に寒さは大敵です)もない飛行機内で生まれて元気とのことなので(おそらくスムーズに泣いたということでしょう)、少なくとも36週には入っていたのではないかと推測しますが、エア・カナダは、早産の経験のない人であれば妊娠36週の終わりまで搭乗可能とのことです。いずれにしても、ギリギリ搭乗させてもらえるかどうかという週数だったことでしょう。

 もう1点、産婦人科医として気になるポイントは、どのような用事で太平洋を横断する飛行機に乗っていたかということです。妊娠中、特にそれなりにおなかが大きくなってからの搭乗には飛行機の中で緊急事態となるリスクがあるわけですから、それを押して乗る必要性があったのかどうかが気になります。観光や遊び目的の「マタ旅」なのか、仕事なのか、身内の緊急事態なのかで、「仕方がなかったね」と感じるかどうかが変わってきます。これも「妊娠に気付いていなかった」との主張なので知っても仕方ありませんが、マタ旅を安易に考えることのないようにお願いしたいです。

遅くとも34週までには移動を

 そして、里帰り出産をされる方も、遅くとも34週までには実家に帰られることをおすすめします。正規雇用の場合、34週で産休に入ります(双子は26週です)。それは、34週以降の早産が多いので、もう働いてはいけませんよという意味で産休に入るのです。「産休に入るまで休みが取れなかったんです」と旅行していいかを尋ねてこられる方が時々いらっしゃいますが、産休の意味を考えれば、旅行のための休みではないことがお分かりいただけると思います。それ以降の時期には、なるべく産院から遠くない場所で過ごしていただきたいです。海外旅行に関しては、「『マタ旅』ブーム…リスク覚悟してほどほどに」という記事にも書きましたが、海外旅行傷害保険が適用されませんし、現地での医療レベルが日本並みとは全く限りません。少なくとも8~9か月の大きなお腹で行くのはリスクが高すぎると思います。かといって7か月の場合は、万が一の事態に旅行先で高度な周産期医療が受けられるかどうかで大きな違いがあり、やはり避けた方が無難です。それより早い時期は行き先と妊娠経過にもよりますが、もちろん積極的にはおすすめしません。華やかなマタニティライフを売りとした芸能人のブログなどに触発されることのないようお願いします。

無理な搭乗で悲しい事態も

 以前、国際空港のすぐ近くの病院で働いていたことがあるのですが、飛行機からの搬送が時々ありました。破水しているのを知りながら飛行機に乗ったりする「強者つわもの」もいれば、飛行機の中で死産、流産するという悲しい例や、妊婦の具合が急変したため目的地を変更して着陸してくることも。キャビンアテンダントの知人によれば、妊婦が飛行機の中で体調の変化を訴えることは度々あり、中には悲しい結果になることもあるとのことでした。

 今回は母子ともに健康だったからこそにぎやかに報道される結果となりましたが、死産になってしまえばニュースになりません。自分とお腹の赤ちゃんのためにも、同じ飛行機に乗り合わせた大勢のお客さんや航空会社のためにも、無理のない移動計画を立てていただきたいと思います。

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宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

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11件 のコメント

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アメリカだと国籍が与えられるそうですが

JUJU

飛行機上だと国籍はどうなるんでしょうか?とふと疑問でした。 出生地の国籍が与えられる国もあるようなので

飛行機上だと国籍はどうなるんでしょうか?とふと疑問でした。
出生地の国籍が与えられる国もあるようなので

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賠償回避の言い訳でしょうね。

ANNA

赤ちゃんの両親ともに「妊娠には気づかなかった」 ・・・ありえない話ですね。 少なくとも36週でしょうか、生理が全くこないことを生理不順と思う考え...

赤ちゃんの両親ともに「妊娠には気づかなかった」
・・・ありえない話ですね。
少なくとも36週でしょうか、生理が全くこないことを生理不順と思う考えは危険すぎます。
産まれる前までに動いたり蹴ったりの感覚が太っているからと言って感じないことはありません。
(きっとそれもお腹の調子が悪いのかな程度の言い訳をするのでしょうか)
また男性も妻の妊娠の認識がないのなら、ずっと性行為をしてきたと思いますが、
最低限妻の体の変化に気づきはあるはずです。
私の結論としては航空機内トラブルによる賠償を払いたくないための言い訳としか思えません。
本当に気づけていなかったのなら男性はともかく、女性側の自分の体の管理、労りがなさすぎで、無事生まれたからよかったものの、そうでなかったら怒り心頭ですよ。

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日本人には向いてないですよね

エアライン

確かに日本人の妊婦さんのマタ旅は体格などの条件であまり勧められるものではないと思っています。膣口の伸びも日本、韓国の女性は柔軟ではなく断裂しやす...



確かに日本人の妊婦さんのマタ旅は体格などの条件であまり勧められるものではないと思っています。膣口の伸びも日本、韓国の女性は柔軟ではなく断裂しやすいと海外では言われていることもあるので、なるべくなら産休をしっかりとって自宅で出産準備をしていたほうが合理的ですよね。人によっては会陰マッサージなどしているようですが、感染症の事もあるので疑問に思っています。
ところで、このカナダ9便の事例は海外の方の事例なのと、目的地の成田に緊急事態を宣言して着陸の順番を早めてもらってオンタイムより早く着いているようなので、祝福以外のなにものでもないでしょう。機内にいた医師も祝福されないと患者がでたとき手を上げる医師がいなくなると思います。海外では機内出産はそう珍しいものではないという取材記事もありますね。
日本人の体格、体力では海外の方の行動を真似するには無理があるので、マタ旅なるものは芸能人の記事などを読むにとどめて自分ではやらないのが肝心という事を先生は仰りたいのだと思って読ませてもらいました。うちの子供にも日本人の特性もあるから医師の指示にしたがって出産準備をする様にとアドバイスするつもりです。

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