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最新医療~夕刊からだ面より

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子どもの睡眠時無呼吸症候群…心身発達に重大な影響

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 眠っている時に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」。肥満でいびきをかく大人の病気と思われがちだが、子どもも発症し、心身の発達に重大な影響を与えることがわかった。だが、診療体制は現在、整っているとは言い難い。そうした中、睡眠時無呼吸症候群を含めた子どもの睡眠障害を総合的に診察するクリニックも登場した。

 大人の睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中、10秒以上の呼吸停止または浅い呼吸が1時間あたり5回以上あること。睡眠障害に詳しい太田総合病院記念研究所(川崎市)所長の千葉伸太郎さんは「子どもでは、10秒未満でも1回以上あれば、この病気が疑われる」という。

 〈1〉肥満〈2〉リンパ組織で喉の奥の両側にある扁桃へんとうや鼻の奥にあるアデノイドの肥大〈3〉鼻づまり〈4〉小さい顎――などにより、空気の通り道の気道が狭くなることで起きる。成長途上の子どもは気道が狭く、発症しやすい。15歳未満の子どもの2~4%が、この病気とされる。

 虎の門病院(東京都港区)睡眠センター長の成井浩司さんによると、症状は、いびきのほか、寝起きの悪さ、日中の眠気などがある。

 大人と違い、子どもにとって深刻な症状がある。おねしょ、胸の中央がへこむ漏斗胸、低身長・低体重だ。集中力が散漫で落ち着きがなく、怒りっぽくなり、学業成績が低迷する。睡眠時無呼吸症候群の子どもは、睡眠時の成長ホルモン分泌量が少ないため、心身に悪影響を与える。

 治療法は、〈1〉マスクをして鼻から空気を送り、気道を広げる「CPAP(シーパップ)」の装着〈2〉肥大した扁桃やアデノイドの摘出〈3〉顎が小さい子どもに対し、矯正具を使って上顎の幅を広げ、気道を確保する――などがある。ただし、上顎の矯正は、治療効果が明確には確認されていない。

 生まれつき顎が小さく、睡眠時無呼吸症候群で低体重の女児が2005年、親とともに虎の門病院を受診。生後8か月からシーパップを使い、4か月後、体重が約1キロ増えて約7キロとなり、標準体重の約9キロに達しないが、改善傾向が見られた。成井さんは「治療で、本来の成長に回復させ、海外では学業成績が改善したとの報告もある」と話す。

 最も治療が難しいのは肥満の子どもだ。眠気で日中の活動が低下し、運動不足になり、なかなか痩せられない。太田総合病院記念研究所所長の千葉さんは、「重症者はシーパップで睡眠の質を改善しつつ、子どもの肥満治療の専門家の指導の下、無理なく、計画的に減量する必要がある」と話す。

 子どもの睡眠障害を総合的に診療する「キッズすいみんクリニック」が今年2月、東京都中央区の「スリープクリニック銀座」内にオープンした。内科、小児科、耳鼻咽喉科、心療内科、精神科の医師が連携。一つの窓口で様々な患者に対応できる。

 院長の遠藤拓郎さんは「睡眠時無呼吸症候群のため、学業成績などの点で本来持っている力を出し切れていないケースもある。子どもは自分で睡眠の異常に気づかない。周囲の大人が気づき、早期治療に結びつけてほしい」と話す。

 睡眠外来を設けている病院もある。ホームページなどで探して相談してほしい。(原隆也)

 
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