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不妊治療 どう乗り切る…期間や気持ち夫婦で確認を
晩婚化などで不妊に悩み、治療を受ける夫婦が増えているが、うまくいかず、つらい思いをする人は少なくない。どのような気持ちで治療に臨めば良いのだろうか。
大分市にある「セント・ルカ産婦人科」で2月下旬、体外受精を受ける人を対象にした「体外受精教室」が開かれ、約100人が参加した。
院長の宇津宮隆史さんが、妊娠に至る過程や体外受精の進め方について解説。治療で女性が使う「排卵誘発剤」は、おなかが張ったり吐き気がしたりといった副作用が出ることも説明した。そして、「治療は夫婦2人で乗り切るもの」と強調した。
参加した女性(34)は「排卵誘発剤の注射はつらくて、どうして私だけ負担しなければならないのかとイライラすることがあります。夫と、子どもをほしいという気持ちを確認したり、どの段階まで治療を続けるのか、話し合ったりするきっかけにしたいと感じました」と話す。
日本産科婦人科学会によると、2012年に行われた体外受精は約32万6000件。毎年増えているが、妊娠率は全体で17%だ。30歳では28%だが、35歳は23%、40歳は14%と下がる。
体外受精を最も多く受けているのは39歳だ。
宇津宮さんは「加齢とともに卵子の染色体異常が増え、流産する確率が高くなります。また、精子に異常があっても子どもはできません。正しい知識をもって治療に臨んでほしい」と指摘する。
「結婚すれば、自然に子どもができると思っていました」
約10年間、不妊治療を続けた大阪府の女性(50)はこう振り返る。37歳で結婚。すぐに子どもを望んだが、なかなかできなかった。38歳から体外受精を始め、42歳までに2回妊娠したが、いずれも流産した。
排卵誘発剤の注射を打つと体がむくみ、卵巣は腫れた。ストレスもたまり、精神的に不安定になった。だが、自分を犠牲にしても子どもを産む決意だった。つらい気持ちを誰にも打ち明けられず、自分だけ孤立している気がした。
45歳の時、夫から「2人だけの生活でも十分じゃない?」と声を掛けられた。子どもをあきらめるという選択肢はなかったが、肩の荷が下りた気もした。
「家族の人数が幸せの大きさではない」。そう思えるようになり、46歳で不妊治療をやめた。女性は「夫婦で、例えば3年という具合に治療期間を決め、時期が来たらいったん立ち止まり、話し合うことが大事だったと思います」と話す。
男性はどう向き合えば良いのか。
不妊に悩む人たちを支援するNPO法人「Fine(ファイン)」理事長の松本亜樹子さんは「できるだけ一緒に医療機関に行き、女性の体の状態や治療について理解することが大事」と指摘する。治療が次の段階に進む時は、体の負担が増えないか、治療費の問題は大丈夫か、2人で検討する。
治療中は、ホルモンの影響で女性の気持ちの浮き沈みが激しくなりがちだ。松本さんは「泣きたい時は泣かせてあげて、その後、どのようなサポートをしてほしいか尋ねる。気持ちを全部聴き、問題の解決策を2人で考えるようにしてほしい」と助言する。(利根川昌紀)
■メモ NPO法人Fine(ファイン) 不妊に悩むカップルを支援しようと、2004年から活動している。医師らを招いて行う不妊治療の勉強会や、治療を受けている人が情報交換を行うイベントなどを開催。治療の経済的負担の軽減を国に求める活動もしている。問い合わせは、ホームページ(http://j-fine.jp/)。
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