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茂木健一郎のILOVE脳

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感激!旅ラン「二都物語」inイタリア

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 仕事で、イタリアに旅立ちました。

 ミラノ滞在の最初の日々は、朝から夜遅くまで、ずっとスケジュールが詰まっていて、それが明けて、ようやく、少し時間の余裕ができました。

 時間があると、私が取り組むのは、そうです、旅ラン!

 昨年の栄えある「マイ流行語大賞」に輝いた(勝手に輝かせた)「旅ラン」!

 思えば、この旅ランほど、私の人生を変えた「発明」はないかもしれません。

 ある土地を旅するとき、車や地下鉄などを使うと、どうしても体験が「点」になってしまいます。

 移動の間は、風景が見えたとしても、その感覚は薄いものになってしまって、降り立って初めて、密度の濃い体験が始まる。

 それに対して、旅ランをすると、その土地が、「点」ではなく、「線」や「面」で見えてくる。

 もちろん、歩くことも素敵すてきなことなのですが、走ることで、映像が「早回し」になり、なんだかそう、映画の中にいて、その流れを体感しているような気分になってくるのです。

 ミラノには、以前何度か来たことがありますが、すべて「旅ラン」発明以前だったので、土地の様子がよくわからない。

 旅ランするにも、コースがよくわからない。

 そこで、こういう作戦を立てました。

 スマホのランニング・アプリを立ち上げてランニングを記録するとともに、地図アプリで、「たどり着きたい目標」へのルートを検索しておく。

 たとえば、大きな公園があったりすると、走るのに格好の環境ですから、とにかくその公園へのルートを表示させておく。

 あとは、できるだけ表通りを避けて裏通りを走るなどの工夫をしながら、地図アプリで、時折、自分がどのあたりを走っているのか、目的地へのルートから大きく外れていないか(だいたい方向が合っていれば、ある程度違う道を行ってもだいじょうぶです!)を確認するのです。


土地を体感、「お友だち」になった気分

 さあ、準備はできた。

 ミラノでの旅ラン、スタート!


 ホテルから出て、できるだけ裏通りを走っていく。

写真1

写真2

 途中、犬専用の公園を見つけたりして、とても楽しい旅ランだったのですが(動画)、目標としていた大きな公園にたどり着くと、なんと、そこはお城!(写真1)

 スフォルツェスコ城という、有名な観光地だったのです。

 単なる「公園」ではなかったのですね(笑)。

 あまりよくわかっていないで、適当に走っていても、このような偶然の出会いがあるのが、旅ランの醍醐味だいごみ

 むしろ、そこにあると思っていなくて、出会う方が、感激も大きいようです。

 結局、ミラノは、11.33キロを1時間3分21秒で走破!(写真2)

 旅ランする前よりも、間違いなく深く、ミラノという土地を体感し、「お友だち」になったような気がします。


 ミラノから、今度は、鉄道でローマに移動。

 旅の疲れもあってか、車窓の景色をみながら、つい眠気がさします。

 うとうとしながら、考えました。

 ローマに着いたら、数時間の余裕がある。

 その間、何をしていよう。

 突然、一つの「ひらめき!」(誘惑!)が生まれました。

 そうだ、午前中、ミラノで11キロ走ったんだから、午後、ローマに着いたら、また11キロくらい走っちゃおう!

 そうしたら、「合わせ技」で、ハーフマラソンの距離、21.0975キロを超えるじゃないか!

 つまり、ミラノからローマへ、一日の間につないだ、「ハーフマラソンinイタリア」。

 それは、素晴らしい旅のメモリアルになるだろう。

 よし、こうなったら、そうしようっと!

 一瞬で決めていました。

 さあ、ローマに着いたら、忙しくなるぞう!

 とにかく体を休ませておこう。

 私は、ふたたび、車窓に頭をもたれて、眠りの人になりました。


 ローマに着き、ホテルに荷物を置くと、即座に着替えて街に出る。

 旅ランナーは、切り替えが速いのです!


「旅ラン」なしの旅など考えられない

 ローマには以前来たことがありますが、何しろ「旅ラン」発明以前なので、「点」でしか知らない。

 そこで、ミラノでも用いた、目的地を定めてルートを粗く決めておく作戦に出る。

 目指すのは、「カラカラ浴場」跡。

 なんとはなしに、「お風呂」に魅力を感じたのでしょう。


 走る、走る。未知の小道を走る!

 そうしたら、なんと、突然姿を現したのが、かの有名なコロッセオ。

 なんだ、君は、こんなところにあったのか!

写真3

 
写真4

写真5

 
写真6

写真7
 
写真8

 思わず、感激の自撮り(写真3)。

 大抵はそこを「目指して」出会うものに、偶然出会うなんて、素敵じゃないですか?

 それが、旅ラン!

 たどりついたカラカラ浴場は、巨大過ぎて、呆然ぼうぜんとするくらいでした(写真4)。

 すごいな。古代ローマ。

 カラカラ浴場のあとは、なんとはなしに、バチカンを目指してみよう、と走りだすと、なんだか、古代ローマ人の衣装をつけた人たちがいます(写真5)。

 日曜ということもあり、何かのイベントをやっているようです。

 それにしても、イタリアの方は、古代ローマの衣装、似合いますね。ちょうど、日本人がサムライの格好をするとサマになるのと同じでしょうか。

 バチカンまで行くはずが、その手前のサンタンジェロ城のところで、時間切れ(写真6)。

 ここから、街の雑踏を抜け、有名なトレビの泉(工事中でした)を通り(写真7)、石畳の上をひたすら走って(写真8)、テルミニ駅の近くのホテルまで戻ってきました。

写真9

 結果として、永遠の都、ローマでの走行距離は、11.95キロ。タイム、1時間16分56秒。(写真9)

 ミラノに比べると遅めのペースなのは、アップダウンがあったこと、暑かったこと、そして、雑踏の中で、歩いていった区間があったことが理由です。


 というわけで、午前中はミラノで、そして午後はローマで走り、合計23.28キロを、計2時間20分17秒で走った「ハーフマラソン in イタリア」、見事完走です!

 ミラノからローマへ、旅ランの「二都物語」。

 それぞれの街の風景が、私の体の中で息づいています。

 他のやり方ではできないかたちで、その土地の精神に触れることができる。

 それが、「旅ラン」。

 もう、「旅ラン」なしでの旅など、考えられない。

 「旅ラン」のおかげで、ミラノ、そしてローマと、親しい友だちになることができました。

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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