文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

教えて!yomiDr.

医療・健康・介護のニュース・解説

医薬分業を巡る議論 利便性、コスト…見直し浮上

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

厚労省など反発

 病院と薬局でそれぞれ診療、調剤を分担する「医薬分業」について、政府の規制改革会議が規制緩和を提案した。

 病院の前に「門前薬局」が並ぶ状況から、「病院内に入ればもっと便利」「高い調剤費用に見合ったサービスをしているのか」と、立地やコストの面で見直しを求めている。厚生労働省や日本薬剤師会は、患者の健康を守るのに規制は必要と緩和に反対している。

 「病院と薬局が別々に立地するルールは、癒着が起きない保証がなければ変えてはいけない」、「高熱の患者が薬をもらうために寒い外に出る、というルールに意味があるのか。国民目線に欠けている」。医療関係者を交えた先月の公開討論で意見がぶつかりあった。

 厚労省は医薬分業をする際は、病院と薬局に〈1〉経営が別である〈2〉道を挟むなど建物が分かれて立地する――ことを義務づけている。同会議は立地のルール変更を議題に挙げた。「多くの病院にコンビニやカフェが入居しており、経営が別なら薬局も入っていい。病院で処方箋を受け取り、薬をもらうのに別の建物の薬局まで行くのは不便。高齢者の負担も重い」との考えだ。

 薬はもともと江戸時代には医師が調剤していた。明治時代になり医薬分業の概念は西洋から入り、法律にも明記されたが、例外規定があり浸透しなかった。だが、医師が過剰に薬を出す薬漬けが問題化、薬局による二重チェックが必要だとの声が高まった。分業によって病院の収入が増える仕組みが1974年に導入され、分業率はほぼ0%から67%(2013年度)にまで伸びた。

 厚労省は、患者が自宅近くで普段から使う「かかりつけ薬局」の役割を重視し、医薬分業を進めてきた。患者が複数の病院で処方された薬を把握してチェック、飲み合わせや飲み残しの相談を受ける。必要に応じ医師に処方の変更を求める。糖尿病や認知症などを抱え複数の病院に通う高齢者には特に重要だという。

 院内薬局では、他の病院に通う患者は来なくなり、品ぞろえは入居先の病院の診療内容に偏ると想定される。厚労省や日本薬剤師会は「かかりつけ薬局とかけ離れた存在が生まれる。薬をチェックし医師に意見を言う機能も落ちるのでは」などと規制緩和に反対する。

 規制改革会議が見直しを求めるもう一つの論点は、患者が病院の窓口で薬を受け取る院内処方より、医薬分業の医療費が高いことだ。

 健康保険組合連合会が花粉症治療薬14日分にかかる医療費を計算すると、院内処方は1500円、医薬分業は3250円になった。患者の負担額(3割)は医薬分業が530円高い。

 だが、内閣府が1036人に行ったインターネット調査では、薬局のサービスがこうした価格差に見合うかとの質問に6割近くが「高すぎる」と答えた。患者宅から遠い、病院の前に店を構える「門前薬局」が増え、病院の診療の内容や時間に合わせた運営をするようになったことが一因とみられる。

 公開討論で、ある委員は「患者がサービスを実感できないならば、医薬分業で今の病院や薬局に対し設定する価格でいいのか」と疑問を投げかけた。

 日本薬剤師会は「飲み方の助言などを通じ、薬局の良さを感じてもらう努力が必要」と話す。緊急時のために、24時間対応できる体制作りも大切だという。

 医薬分業を巡る議論は6月までに決着がつく見通しだ。薬には副作用のリスクが伴い、薬局にはそのリスクを減らす役割がある。患者のためになる薬局のあり方が問い直されている。(米山粛彦)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

教えて!yomiDr.の一覧を見る

最新記事