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(2)世界の先端研究を支援…ローレンス・タバック氏
◆ローレンス・タバック 米国立衛生研究所首席副所長
米国立衛生研究所(NIH)は、米国の医療研究を支える「執事」のような存在です。健康的な生活を増進し、疾病や障害を減らすことに取り組んでいます。
米国だけでなく海外でも、大学、病院及び研究所に籍を置く科学者の研究や育成を支援しています。NIHは145名のノーベル賞受賞者を輩出しました。その中には、日本人3人も含まれています。
NIHの予算は、年間約300億ドルぐらいです。米国の健康増進と医療に大きく貢献しています。がん死亡率が1%下がると約5000億ドルの医療費を節約できます。このように米国民の平均寿命を延ばしたことにより、1970年以降、大体1年当たり3.2兆ドルの富がもたらされたとみています。また、2012年度のNIH予算は、米国内で推定40万人の雇用を生み出しています。
米国では、民間セクターが継続的に医学研究を支援していますが、その金額は減ってきています。特に基礎研究では著しく、NIHの支援がなかったならば、未来の医学を一変するような基礎研究は生まれないでしょう。NIH予算の60%以上は、研究者個人の着想やアイデアを支援するために使われています。最も独創的で革新的アイデアを支援しています。
研究助成の申請は年間7万~8万件あります。公衆衛生上の必要性や、科学的なメリットがあるかどうかを考慮して、科学者による厳格な審査で選びます。選ばれるのは20%以下です。
新たな医療に向けて
医学についての知識の大幅な向上につながることが明らかな場合には、大規模な研究計画を立案します。その一例がビッグデータから知見を得るプログラムです。
生命科学のデータは爆発的に増えています。電子カルテに記載される項目の一つ一つをとっても、研究してみればとても面白く、新たな試みになると思います。これらのデータをまとめて保管し、共有・解析する新たな方法を開発しています。こういったデータをまとめるのは、国民皆保険というシステムを採用している日本のほうがうまくいくのではないかと思います。
新興感染症の対応も強化しています。エボラ出血熱が2014年に、驚くべき規模で流行しました。NIHはワクチンや迅速診断の開発・研究を急いでいます。
もう一つ重視しているのが個別化医療です。
基礎研究が進み、実現に向けて、絶好のチャンスが到来しています。技術革新やビッグデータなどをまずがん治療に生かしていきます。なぜがんは薬剤耐性を持ったりするのか。薬の併用療法がうまくいったりいかなかったりするのはなぜなのか。こうしたことを解明し、さらにがん再発の予測とモニタリングをするということも大事です。
まずがん治療で個別化医療を実用化し、将来的にはほかの病気に広げていきたいと考えています。
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