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乳幼児の摂食障害…「少量でも楽しく」を基本に

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医療者の支援 親の孤立防ぐ

まもなく1歳になる男児を診察する田角さん(左)。なぜ食べないのか、食べる意欲はあるのか、必ず食べる様子を見て確かめる(昭和大病院で)

 母乳もミルクも飲まない、食べても吐くといった摂食障害を持つ乳幼児がいる。楽しいはずの食事が親子ともに苦痛になる。適切な支援がなく、親が孤立し、状況が悪化してしまうおそれもあるという。

 アンパンマンが大好きで、音楽が流れると自然に体が動く。静岡県の女児(2)は明るく活発だが、1日の半分、鼻から胃に入れた管を使って栄養剤を注入している。

 生後すぐ母乳を吸わなくなり、哺乳瓶もいやがった。4か月健診で、体重が増えていないとされて入院した。以来、管で栄養を補う。特に病気は見つからない。

 今は、昼、おかゆやスープを用意し、口から食べる練習を続けながら5時間おきに栄養剤を注入する。母(29)は「親子でおいしいね、と食卓を囲める日が来るのか。不安でも、相談できる人はいない」と話す。

 管を入れる前、何人もの小児科医や保健師に相談した。「おなかがすいたら飲む」「機嫌がよければ大丈夫」との返事しかなかった。ほとんど泣かず、6時間飲まなくても、何も欲しがらない様子を伝えたが、信じられない様子だった。

 もうすぐ3歳の誕生日を迎える埼玉県の男児も、生まれた時から上手に母乳を飲めなかった。小児科医からは、「吸う力が弱い」などと言われ、管を入れて栄養を補うことになった。

 注入の前には、哺乳瓶で母乳を与えた。泣いても吐いても続けた。小児科医から、「飲ませないと、ラクを覚えて管が抜けにくくなる」「飲めば吸う力がつく」と言われていたからだ。

 1歳頃から、同年齢の子どもと遊ぶ場に参加しはじめ、少しずつ食が進み始めた。まだ食べられる量や種類は少なく、管は抜けないが、母(36)は、「おやつを食べる友達の姿を楽しそうと感じたのかも。私自身、食事が楽しいと思えず、ストレスがたまっていた」と振り返る。

 昭和大小児科(東京都品川区)教授の田角たつの勝さんの外来には全国から摂食障害の乳幼児と母親が訪れる。障害と関係する病気がある子どももいれば、病気が見つからない子どももいる。

 ただ、ほとんどの親が一人で、様々な食べさせ方を試し、努力を重ねている。

 田角さんは、そこに落とし穴があると考える。努力すればするほど、楽しいはずの食事が、子どもにとって苦痛な訓練の時間になってしまうことだ。「親が少しでも多く食べさせようとするのは当然ですが、まずは少量でも楽しく食べることが大切です。医療者が、普段の食事の様子をよく聞き、実際に食べるところを確認し、食べる意欲があるかをみていかなければ、解決に向かわない」と話す。

 だが、医療者の関心は低く理解も乏しい。乳幼児の摂食障害の患者家族会「つばめの会」には、「小児科医らに相談しても『そうですか』で済まされる」「病気があり複数の小児科医の診察を受けるが、食べないことに関しては誰も自分が主治医と思っていない」といった声が多く寄せられる。「ちゃんと子どもと向き合っているのか」と育児放棄を疑われることさえある。同会代表の山内京子さんは「子どもに関わる医療者は、乳幼児にも摂食障害があると知り、不安や苦しい気持ちに寄り添ってほしい」と訴えている。(中島久美子)

 「つばめの会」 会員同士の交流や勉強会のほか、医療者や社会への啓発活動も行う。ホームページ(https://sites.google.com/site/tsubamenokai/)で体験談を公開している。

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