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難手術、安易に挑戦…腹腔鏡 学会調査

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 群馬大学病院の腹腔鏡ふくくうきょう手術問題を受け、日本肝胆膵かんたんすい外科学会が行った全国調査。半数を超える病院(診療科)で、保険適用外の腹腔鏡手術が倫理審査もせずに実行されていたことがわかった。調査結果は、高難度手術が不透明な手続きでなし崩し的に行われている実態をうかがわせる。

不十分な審査、技術も未確立

調査結果について会見で説明する宮崎勝・日本肝胆膵外科学会理事長(右)(千葉市の千葉大医学部で)

■ 「把握せず」

 「半数で倫理審査が行われていないとは、学会として把握していなかった」

 同学会理事長の宮崎勝・千葉大教授は23日、千葉市内で記者会見を開き、深刻な表情でこう語った。

 腹腔鏡手術は、腹部に細長い手術器具を入れてカメラで見ながら行う手術方法。大きく切り開く開腹手術に比べ、患者への負担が少ないとされるが、医師が技術を習得するのに時間がかかるという問題がある。

 今回の調査は昨年11月に発覚した群馬大病院の問題を受けて緊急で実施された。手術実績が多い病院が対象で、群馬大病院も含まれている。

 保険適用外手術を行う際に倫理審査を受けたかどうかは診療科ごとの回答で、176診療科のうち「全く受けていない」が97診療科(55%)で最多。「一部受けている」37診療科を合わせると134診療科となり、76%が倫理審査も受けず高難度手術をしていた。また、46診療科は回答自体していないため、実際はもっと多い可能性もある。


■ 死亡率の差

 保険適用手術と適用外手術の死亡率の差も目を引いた。肝臓の保険適用手術の死亡率が0・27%であるのに対し、適用外手術は1・45%で、その差は5・4倍あった。また膵臓の保険適用の死亡率は0・10%で、保険適用外は1・08%と、その差は10・8倍に開いていた。

 宮崎理事長は「腹腔鏡手術は保険適用外といっても比較的軽い症例を選んで行われていると推測される。それでも死亡率の差がこれだけあるのは驚きで、注意が必要だ」と見ている。

 

■ 法整備求める声

 調査結果からは、高難度手術はリスクが高いにもかかわらず、倫理手続きも不十分な中、技術的に未確立の手術が安易に行われてきた現実がうかがえる。

 医療倫理に詳しい東京財団の橳島ぬでしま次郎研究員は「適用外手術は安全性と有効性が確認されていない手術で、患者が不利益を被る可能性があり、倫理審査は欠かせない」と語る。

 しかし、実態は、肝胆膵分野で指導的立場にある病院でさえ、徹底されていなかった。橳島研究員は「腹腔鏡手術に限らず、試験段階の医療技術全般の扱いについて、国は法整備を検討すべきだ」と話している。

日本肝胆膵外科学会の調査結果まとめ

 保険適用手術と保険適用外の高難度手術の死亡率を比較すると、肝切除で5.4倍、膵切除では10.8倍と大きな開きがある。

 保険適用外である高難度肝切除の死亡率を手術方法別に見ると、胆管切除を要する肝切除が、9.76%と特に死亡率が高いことが確認された。

 保険適用外症例に対する腹腔鏡肝および膵切除を行うに際して、学内倫理審査を行った上で手術が実施されているのか質問したところ、無回答の診療科を除く176診療科中97診療科(55%)が行っていないことが示された。

 以上のような結果を踏まえ、日本肝胆膵外科学会としては、腹腔鏡による高難度の肝胆膵外科手術を行う際には、各施設がこれまでの成績を再評価し、その適用にあたって症例ごと手術方法別に、倫理審査を踏まえた上で、慎重に判断していくように全会員に注意喚起を行っていくべきだと考えられた。(抜粋、一部改変)

群馬大学病院の腹腔鏡手術問題
 2010年12月~14年6月、第二外科による肝臓の腹腔鏡手術を受けた患者93人中58人に保険適用外の手術が行われ、うち8人が術後約3か月以内に死亡した。開腹手術でも09年度以降10人の死亡が明らかになっている。

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胆管切除、開腹でも高難度…専門家「患者のメリット疑問」

 群馬大病院第二外科で腹腔鏡手術の後、死亡した8人のうち3人は、胆管切除を伴う肝臓手術を受けていた。調査結果では、この手術方法は全国で41人に行われ、4人が死亡。死亡率は9・76%と高い割合になった。

 適用外手術でも、ほかの手術方法では死亡率は1%前後にとどまっており、いかに高率かがわかる。

 この手術方法は、胆管を切除して、切り口を腸とつなぐもの。細い管を縫いつける細かい作業が困難で、開腹手術でも難易度が高く、縫い合わせが不十分となり、術後に問題が起こりやすい。

 肝臓の腹腔鏡手術を日本で最初に行い、この分野の第一人者である金子弘真ひろのり・東邦大大森病院消化器センター教授でさえ、「私自身は胆管切除を伴う腹腔鏡下肝切除術は1例も行っていない」と慎重な対応を守っている。

 金子教授は「このような手術を腹腔鏡を使って行うのは時間もかかり、患者にとってメリットがどこにあるのか疑問だ。今後、学会などで議論していくポイントになる」と断言する。

 こうした調査結果を受け、同学会は「この手術方法で肝切除を行う際、腹腔鏡を使うことには極めて慎重であるべきだ」としている。

 
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