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茂木健一郎のILOVE脳

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痩せたら変わった意外なもの

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 というわけで、私の体重は、いよいよ、本格的に「標準体重」の上限である、BMI=25、73キロを下回ってきたようです。

 最新の体重変化が、写真1。時には、73キロを上回ることもあるのですが、基本的に、73キロを下回っている。

写真1

 「もはやデブではない!」

 高らかに、宣言しても良さそうです。

 思えば、体重が、ピークだった昨年の8月頃から、10キロ痩せたわけであります。

 私のリュックは、パソコンや書類や本や、さまざまなものが入っていて、ほぼ10キロ。持った人は「こんなに重いなんて」と驚きます。

 去年の夏頃は、おなかのまわりなどに、このリュック分の脂肪がついていたのかと思うと、ちょっとぞっとするというか、人体の「めこむ」能力の高さに、改めて驚愕きょうがくするのであります。


 それにしても、人間は、変わろうと思えば、変わるものだな、と思います。

 そして、「デブ」と「標準」の違いは、どうも、体重だけにあるのではなさそうだ、とも思うのです。

 走るだけではなかなか痩せなかった私が、椎名誠師匠の「男は一日一回、床と勝負しろ」という教えに従い、筋トレを始めたら、徐々に体重が減り始めた。

 それと同時に、不思議なことなのですが、食べ物の好みも変わっていったのです。


ポテトチップスよりフルーツが好きに

 デブ時代の私は、例えば、お酒を飲む時でも、ポテトチップスを食べるのが好きでした。

 地方に行って、ホテルで眠る前に飲むときでも、缶ビールを片手に、ポテトチップスを一袋食べてしまう。

 それが、当然だと思っていたのです。

 ところが、筋トレを始めて、体重が減り始めたら、不思議なことに、食べ物の好みが変わっていきました。

 ポテトチップスなどは余り食べなくなって、代わりに、フルーツが好きになったのです。

 極端な話、ビールのおつまみに、フルーツでもいい、という、ヘルシーな人になっていったのです。

 デブ時代には、ポテトチップスを食べずに、フルーツを食べている人を見て、「なんかいじましいな」と思っていました。

 健康のためだからといって、食べたいものも食べずにがまんして、かわいそうだな、と思っていました。

 私は、なんと、浅はかだったことでしょう。

 そうではないのです。身体が変わると、本当に、食べ物の好みも変わるのです。

 がまんしているのではない。食べたくなくなるのです。

 きっと、私の友人たちは、お酒を飲みながらも、以前のようにポテトチップスに手を伸ばさない私を見て、「ああ、かわいそうに、我慢しているんだな」「そうまでして、痩せたいかなあ」とか思っていることでしょう。

 そうではないのです!

 本当に、食べたくなくなっているんだってば!

 もう、信じてくれよ!



 さて、話は変わりますが、私は、4月から、フジテレビの『バイキング』という番組に、時々おじゃますることになりました。

 先日、その取材で、理化学研究所の辨野べんの義己先生をお訪ねしました。

 理化学研究所は、私の「古巣」。博士号を取得した後、理化学研究所で脳研究グループを立ち上げていた伊藤正男先生の下で、脳科学の研究を始めたのです。

 その、懐かしい理化学研究所で、辨野先生に、たいへん興味深いお話を伺いました。

 辨野先生は、腸内細菌の権威。そして、腸内細菌については、最近、いろいろと興味深い事実がわかってきているということなのです!


腸内細菌が変化

 なんと、「デブ」の人と、標準体重の人では、腸内細菌の種類が、違うというのです。

 いわば、デブの人の腸内には、「デブ菌」とでもいうべき一連の腸内細菌がすんでいて、そのことと、体重がオーバーであるということの間には、関係があるかもしれない。そのような可能性が、研究で示されているというのです。

 「どうしたら、腸内細菌は変えられるのですか?」

 私は、自分でもびっくりするほど真剣に、辯野先生に伺いました。

 「やはり、食生活ですね。ヨーグルトや、野菜などの繊維をとること。食べ物は、腸内細菌を養う、養分でもあるのです。」

 「なるほど!」

 「腸内に、デブ菌が多かった人でも、食生活に気をかけているうちに、次第に腸内細菌の種類が改善される、ということを示唆するデータもあるのです。」

 「そうですか!」

 辯野先生のお話を伺いながら、私の脳裏では、走馬灯のように、デブだった頃から今までの人生が早回しで見えました。

 走った、筋トレをした、体重計に乗った、ため息をついた、ガッツポーズをした、停滞した、一気に減った、そして、ついに、標準体重になった(まだ上限のあたりだけど)。

 その過程で、私の腸内細菌は、きっと変化していったのですね。思えば、フルーツや野菜、そしてヨーグルトを確かによく食べた。そんな中、次第に、ポテトチップスとはサヨナラしていった。

 そして、今、私の腸内のデブ菌は、きっと、減っている。

 デブ時代に比べたら、ずいぶん減っている。

 そうだったのか。私の旅は、一人旅ではなく、腸内細菌との旅でもあったのだ!

 私は、「気付き」の喜びに打ち震えながら、辯野先生の話に、しきりにうなずいていたのであります。

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茂木 健一郎(もぎ けんいちろう)
脳科学者、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。1962年、東京生まれ。東大大学院理学系研究科物理学専攻博士課程修了。クオリア(感覚の持つ質感)をキーワードに脳と心を研究。最先端の科学知識をテレビや講演活動でわかりやすく解説している。主な著書に「脳の中の人生」(中公新書ラクレ)、「脳とクオリア」(日経サイエンス社)、「脳内現象」(NHK出版)、「ひらめき脳」(新潮社)など。

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