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なるほど!認知症(12)生活力維持するリハビリ

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日常動作、趣味など取り入れ

 「リハビリテーション」というと、筋力トレーニングなど身体機能の向上を目指すイメージが強いが、日常生活の動作や趣味を取り入れたリハビリが、認知症の人に有効だとして注目されている。

 体を動かすことが認知機能の維持や向上につながるほか、家事などができるようになることで、住み慣れた家で暮らし続ける助けになると期待されている。

 福島県の70歳代の女性は、数年前から認知症による物忘れがみられたが、介護サービスは使わず、夫と2人で暮らしていた。だが、1年ほど前に夫が亡くなると、ふさぎ込むことが増え、外出が減った。

 次第に、掃除や身だしなみを整えることができなくなり、火の不始末もみられるように。介護保険のサービスを使うためケアマネジャーに相談すると、同県会津若松市の通所リハビリテーション施設「TRY(トライ)」に通い、認知症の人を対象にしたリハビリを受けることになった。

 TRYで女性は、以前から好きだった生け花を楽しみ、他の利用者と交流するようになった。外出の機会が増え、表情に明るさが戻り、おしゃれにも気を配るようになった。3か月でリハビリを終え、現在はデイサービスに通う。女性は「皆でお茶を飲むのが楽しい」と笑顔を見せる。

 TRYでは、リハビリの利用は6か月を基本にしている。短期間で集中的にリハビリを行って生活能力を改善した後、デイサービスや訪問介護など他のサービスに引き継ぐ。

 まず、リハビリの前に作業療法士らが利用者の家を訪問し、心身の状態や自宅の様子などを確認する。家族からも話を聞き、生活の課題を明らかにする。

 その情報を基に、本人の希望をふまえて目標を設定する。「認知機能テストの得点を上げる」などではなく、「着替えができるようにする」「畑仕事を再開する」など、生活にかかわる具体的な内容にするのがポイントだ。リハビリの目的を暮らしの改善に置き、具体的な成果をイメージした方が、本人も熱意を持てるためだ。

リハビリとして、帽子を縫う認知症の女性。試着したスタッフが「大きさがぴったり」と褒めて励ます(通所リハビリテーション「TRY」で)

 リハビリ計画を立てる際に重視するのが、利用者のこれまでの暮らしぶり。大工だった人には木工を、農家だった人には野菜の栽培を取り入れる。「仕事や趣味で繰り返しやってきた動作は、認知症が進んでも忘れない。慣れた作業なら、失敗も少なく、その人の能力を生かすことができる」と、TRYの作業療法士の村山由美さんが解説する。

 ここでは利用者に、トイレでのズボンの上げ下げや昼食の配膳などもなるべくやってもらう。他の利用者の分までお茶を入れたり食器を洗ったりすることで、「自分も役に立っている」と感じることも重要だという。自宅でも家事や身の回りの作業ができるように、室内で動きやすい家具の位置をアドバイスするのも村山さんらの重要な仕事だ。

 認知症の人を対象にしたリハビリについて、西九州大の田平隆行准教授(作業療法学)は「料理をする際にお湯を沸かしながら野菜を切るなど、家事は、複数の作業を同時に行うことが多く、脳を活性化し、認知機能の低下を防ぐことが期待できる」と話す。

 また、国内外の研究で、定期的な有酸素運動が、認知機能の維持・改善につながることが分かってきた。認知症の人には、軽度~中等度の運動・活動が適しており、掃除や階段の上り下りなど日常の動作の多くが当てはまるという。

 こうした研究成果を受け、厚生労働省は、4月の介護報酬改定で、利用者が暮らす自宅などに通所リハビリ施設のスタッフが訪問し、指導を行った場合、介護報酬を上乗せすることにしている。リハビリを強化し、社会参加や生活能力の維持を図るのが狙いだ。

 認知症のリハビリに詳しい熊本大の池田学教授(神経精神医学)は、「認知症の人が地域で暮らし続けるには、リハビリが大きな支えになる。だが、高い技量を持つ多職種のスタッフが連携する必要があり、人材育成や費用など課題も多い」と話している。(飯田祐子)

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