文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

ニュース・解説

腹腔鏡の波紋(中)…診療報酬「適用外」も請求

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

高難度手術倫理、審査受けず

 

35人分の適用外手術を保険請求していた群馬大病院

 関東地方の病院で2013年に、肝臓の右半分に当たる「右葉うよう」を切除する手術が行われた。患者は女性で、手術には腹腔鏡ふくくうきょうが使われた。

 大きな出血を起こす心配があった腫瘍は切除され、患者は無事退院。しかしこの手術には問題があった。保険が利かない「適用外」であるにもかかわらず、保険請求されていたのだ。不正請求に当たる疑いがある。

 腹腔鏡を使った肝臓手術では現在、二つの方法しか認められていない。肝臓の左3分の1に当たる外側区域の切除と、腫瘍をくりぬくように切り取る「部分切除」だ。

 これら以外は全て適用外で、100万円以上かかる治療費は患者が全額支払う自由診療か、病院が研究費などから賄うのが本来の姿だ。しかし、適用外の手術でも多くが保険請求されているとみられる。

 冒頭の関東地方の病院幹部は「右葉切除だが『部分切除』で請求した。適用外の腹腔鏡について他の病院に尋ねたが、どこも国から不正請求と指摘された所はなく、請求しても問題ないと判断した」と話す。

 読売新聞が、適用外の腹腔鏡手術について学会発表している28病院に質問したところ、関東地方の同病院を含む4病院が「保険請求した」と答えた(1病院は自由診療、23病院は無回答)。

 適用外の腹腔鏡手術は保険適用に比べ死亡率が高く、安全性や有効性が確認されていない。公の議論がないまま、病院側の判断で保険請求され、支払いが認められれば、なし崩し的に適用外の手術が広がることになる。

 患者が相次いで死亡した群馬大病院では、10年12月~14年6月の間に、58人に適用外の腹腔鏡手術が行われ、そのうち35人の手術が保険請求された。

 ある大学病院の病院長は「適用外でも保険適用の手術として会計上処理されていれば、難易度が高くない手術として倫理審査も受けずに済む。どうしても院内のチェックは甘くなる」と指摘する。

 同じ構図は、膵臓すいぞうの腹腔鏡手術を受けた患者が相次いで死亡していることが昨年4月に発覚した千葉県がんセンター(千葉市中央区)でもみられた。同センターは、13年に行った適用外で高難度の腹腔鏡手術を通常の開腹手術として請求していた。同センターは健康保険法に基づく国の調査を受けている。

 群馬大病院に対しても厚生労働省は調査を行う方針だ。他の病院の適用外手術の保険請求に対しては「病院側から出ている保険請求内容と、院内の手術記録を突き合わせてみないと不正かどうかわからない。群馬大病院の調査結果を見て判断したい」と対応を検討している。

 日本肝胆膵かんたんすい外科学会などの調査によると、この分野の適用外の腹腔鏡手術は年間約400件。保険の「不正請求」についても実態解明が急務だ。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事