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からだコラム

[臨床の現場から]老いた体と上手に付き合う

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 健康長寿を願うなら若い時からの摂生が大切です、と前回書きました。では、既に高齢となり、あちこちに支障をきたしている人はどうしたらよいでしょうか?

 長年の酷使で、内臓や骨、関節に生じた不具合は、すっきりとは治らず、少しずつ進行することも多いのです。私は80歳の方であれば、「あなたは築80年の家です。家に不具合が起きたら、もう古いから、仕方がないとあきらめ、ちょっと手を入れて上手に住むか、新しく建て直すでしょう。あなたの身体も同じで、新築のようにはできないので、上手に付き合っていきましょう」と話しています。

 上手に付き合うというのは、身体を酷使せず、大事にし過ぎもせず、毎日同じ調子を保って生活をすることです。ついつい運動をさぼったり、食べ過ぎたりするなど規則正しく生活することは容易ではありません。同じように生活していても、年を重ねれば、新しい不具合が生じてきます。昨日までできた動作が、今日はスムーズにできないと、病気じゃないかと考えがちですが、加齢現象かもしれません。私は、「今日が一番若く、明日は未知との遭遇です」と伝え、年を重ねる自分を客観的に見つめるようすすめています。

 90歳になった方が敬老の日にいただいたお祝い金を老後のために貯金されたという話を聞いたことがあります。自分が生涯のどの辺りにいるかは意外に意識されていないようです。

 私が医師になった頃は、「もう年だから」と言われる患者さんが多かったのですが、今は老化は克服できるという風潮が強く、年と言われると拒否反応が起きます。いつまでも若々しいことは素晴らしいことですが、楽観的過ぎず悲観的過ぎず、改めてほどほどを認識したいものです。(山本紘子・藤田保健衛生大名誉教授)

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