ボンジュール!パリからの健康便り
医療・健康・介護のコラム
歩いて手術室に…患者の緊張和らげる試み
病院で何らかの大きな検査をしたり、手術をすることは本当に緊張する。
手術を受ける人は手術することが怖いし、検査をする人はその結果がどうであるかもとても怖いと思う。
2011年からマルセイユとリヨンの病院で実験的に始まった、「手術室に歩いていく」という方法が効果を出し始めている。
従来は手術をする場合は、まず自分の病室で安定剤を投与され、後ろ開きの白衣に着替えてストレッチャーに寝て待つ、というスタイルが多いのではなかろうか。それを、自分のパジャマで、メガネもかけ、抗がん剤投与などで脱毛してカツラを付けている人は、カツラのまま手術の準備室まで自分で歩いて行く。そういう自由なスタイルのことだ。
手術を受ける人は、医師や看護師にそのすべてを委ねるわけだが、そういった状況のなか、人としての尊厳をできるだけ保つという研究の一環である。
結果、98%の人がその新しいスタイルに満足しているという。
安定剤がなくても心は落ち着き、恐怖心も大きく膨らまず、今までの生活の延長線上に手術、というふうに捉えることができるのではなかろうか。
私も半日入院の手術を受けたことがあるが、確かにあのストレッチャーに乗せられて手術室まで行く間は緊張した。
まな板の上のコイとでもいうような気分になった。
あとは医師と看護師にまかせればいい。もちろん絶対的な信頼関係があってこそ、そう思えるのだが、病院の廊下の白い天井を見つめつつ、ストレッチャーにのせられて移動しているうちにどんどんと緊張感が高まった。
いつもと違う状況は、人を極度に緊張させる。ましてや、それが手術ともなればなおさらのこと。
もちろん、本人の希望で従来のスタイルが安心するという人には今までと同じスタイルで手術室に向かう。全ては本人の希望次第である。
100%が歩いていくスタイルではない。
しかし、極度の緊張から抗不安剤が必要になる人も多い。
この「歩いて手術室へ」というスタイルで良かったのは、やはり緊張することがなく不安な気持ちが薄らいだという答えが多かったという。
また、手術室の看護師達からも、時間の短縮や、患者の精神状態が安定しているなど、効果があったという声が多かった。
病気になるとそれだけでも気が弱くなり、医師や看護師を頼る気持ちが大きくなる。こちらは命を預けている。
絶対的な信頼関係はもちろんであるが、医療従事者が患者の尊厳を第一に考えることもとても大切だと思う。
何気ない言動が患者の心を傷つけ不安にすることもある。
普段は気にもとめないような一言でも、心身ともに弱っている患者にとっては大打撃となることもある。
今フランスは、患者の立場に立って、人としての尊厳を守り、身体以上に心を傷つけないように治療をする、そういった心のケアをも考えた治療法の研究が始まっている。
■ 今週の一句 怖い夢 見て目が覚めて 椿落つ |
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2年前のこと。ガンマーカーが高く、前立腺癌を疑われた。そして、生検を受けた。経験者なら分かるだろうが、親にも見せない水戸さまを、技師にまじまじと見られるのだ。
病室で待つ間の辛さ、どんな検査か、痛みは・・不安はつのるのみ。隣のベッドの人がうなされた。「どうしたのですか?」と声を掛ける。「ああ、怖かった」と、声を掛けたことに感謝される。一瞬生検のことを忘れた。「〇〇さん、参りましょう」と、不意に若い看護師さんに言われ、歩いて手術しに。
覚悟はしていたが、お尻の割れた大きなパンツを着けていることが現実に引き戻された。台に乗り足を広げ、技師の冷たい手が・・「大丈夫ですよ。皆さん心配するようですが、麻酔をかけます」と水戸さまにゼリー状の麻酔薬が。
ないか固い器具が装着される。「始めますよ、楽にしていて下さい」と言われても身体は硬くなっていた。その時かすかに綺麗な音楽が聞こえた。「あのう、声を出してもいいでしょうか」「構いませんよ、それが一番リラックスできるのなら。そして早く済みます」と優しい言葉が返ってきた。~もう何も考えずに声を出そう~「あ~~~」ロングトーンを思い出し声を出す。
「終わりましたよ」。予定時間より短く済んだ。「うるさくて、ごめんなさい」。技師はすました顔で「看護師さんが来ましたよ」。手術室から出るときは車椅子だった。
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