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Q 「地域包括ケア」って何

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自宅で暮らす高齢者支援


  この前、おばあちゃんの家に遊びに行ったら「この家で介護を受けながら暮らし続けたい」って言うの。家に独りだし、病気がちだから、病院や老人ホームの方が安心じゃないのかな?

  年を取ると新しい環境に慣れるのが苦手になるし、集団生活だと他の人への気兼ねもあるから、住み慣れた自宅が一番安心できると言われているよ。それに、普段買い物に行く店があったり昔からの知り合いがいたりするし、子どもが通った学校など自分が歩んできたことを感じられる思い出が、地域にはたくさんあるからね。


  そう言えば、死んだおじいちゃんも入院していた時、大好きな相撲中継を小さなテレビでイヤホンを使って見なきゃいけなくてかわいそうだった。でも、自宅だと食事を作らなきゃいけないし、敷居の段差も多いし不便じゃないの?

  介護が必要になったら、介護保険が使えるよ。原則65歳以上の人は、費用の1割を負担すれば、自宅でも介護サービスが受けられる。ホームヘルパーに炊事や洗濯などの日常生活を手伝ってもらったり、入浴やトイレの介助をしてもらったり。また、家の中に手すりを付けたり、段差をなくしたりする住宅改修も、20万円までなら1割の自己負担でできるよ。


  でも、何かあった時、医師や看護師がいないと心配じゃない?

  介護保険には、医師や看護師が家に来て助言や服薬指導など生活を支援するサービスがある。また、国は医師が患者の家に定期的に来てくれる「訪問診療」も増やしていく方針だ。

 

  いろんなサービスがあるんだね。だけど、本当にうまく使えるのかしら?

  そこが問題なんだ。地域によってはサービスが足りなかったり、お年寄りの状態に関する情報が事業者間でうまく共有できていなかったりするケースもあるんだ。そこで、国は「地域包括ケアシステム」を広めようとしているんだ。


  何それ?

  難しい言葉で分かりにくいよね。つまり、住み慣れた地域で暮らし続けられるよう、病気になった時からリハビリや介護、生活支援まで一体的に提供できる体制を整備しようという取り組みなんだ。医療や介護の専門家だけでなく、地域のボランティアなど住民も協力して、地域で暮らすお年寄りを支えるんだ。


  具体的にどうするの? 私たちも何かするの?

  例えば、介護保険では、24時間いつでも呼び出しに応じるサービスを増やす。また、自宅近くに通ったり泊まったり、逆に訪問もしてくれる小規模で地域に根ざしたサービスを充実させる予定だ。地域の子どもたちが毎朝あいさつすることだって、お年寄りを支える立派な役割なんだよ。


  自宅で暮らしたい気持ちは何となく分かったけど、死ぬまでずっと自宅がいいのかしら?

  国の調査では、意識や判断力があるうちは自宅で介護を受けながら暮らしたいと思う人が大半だけど、病気が重くなると病院や施設を希望する人の割合が増えてくる。昔は家で亡くなる人が多かったけど、今は病院で亡くなる人が8割にもなる。だけど、お年寄りの中には、本当は病院での治療はせずに家で穏やかに逝きたいと願っている人もいる。ただ、家族に迷惑をかけたくないから施設を選ぶケースもある。こうした人が遠慮せず、自宅を選べるような地域をつくっていきたいね。

(大広悠子)

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