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からだコラム

[臨床の現場から]病気の理解で前向きに

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 患者さんや家族が病気と治療法の説明を受け、十分理解した上で自ら選択して、医師と治療を行っていく過程をインフォームド・コンセント(正しい情報を伝えられた上での合意)と言います。

 病気の中には、がんのように検査や治療法がほぼ確立され、患者さんにもある程度の知識があるものもあります。しかし、原因不明の難病で治療法もないような場合には、真のインフォームド・コンセントを得るのは困難です。

 脊髄小脳変性症という神経難病の中学生の女の子を主治医として診たことがあります。病気を理解して前向きに生きてほしいと願って、〈1〉ゆっくりであるが症状は進行していく〈2〉筋力を保つリハビリが大切〈3〉今のところ病気に効く薬はない――などを時間をかけて説明しました。一緒に病気に立ち向かっていこうと約束してインフォームド・コンセントを終えました。

 闘病生活の中で、症状が変化しますが、その度に質問があり、考えられる理由を話すのですが、また数日すると同じ質問が繰り返されました。病気の進むことに対する不安のためでしたが、そこを脱却しないと気持ちがなえてしまいます。患者さんにお願いして、質問の内容と答えを記録して、その記録を読んでから質問するようにしてもらうと、病気の理解が深くなり、休みがちであったリハビリに一生懸命取り組むようになりました。この記録を基にまとめられたのがテレビドラマにもなった「1リットルの涙」という闘病記です。

 医師が病気の説明をしても内容を理解し、正確に記憶している患者さんは残念ながら、あまり多くありません。医師の説明や体の状態を記録して、病気を深く理解することで、より適切に病気に立ち向かっていけると思います。(山本紘子・藤田保健衛生大名誉教授)

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