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自立を支える(11)リハビリで高める存在価値

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熊谷 隆史

 人は誰でも年をとり、時には病気にもなります。そうなったら元気に暮らせないのでしょうか?

 障害があっても、生き生きと暮らす人はいます。そうした生活を実現させる支援の一つが作業療法です。

 2年前に出会った60歳代の男性、Aさんは、9年前の脳梗塞の影響で右半身が自由に動きません。趣味は旅先での写真撮影。Aさんが構図を決め、右手が不自由なAさんに代わり、妻がシャッターを押していました。

 私と出会う少し前、その妻が亡くなり、Aさんは閉じこもりがちになっていました。身の回りの事に不自由はないのですが、生きがいをなくしてしまったのです。Aさんは、「生活での困り事はない。妻と電車で旅行して写真を撮っていたが、しなくなった。片手で撮影は難しいから」と言いました。

 作業療法では、体の機能や心の状態などから、今、できる事、難しい事、工夫すればできる事などを判断します。私は、Aさんが、電車を利用してウォーキングのイベントに参加し、写真を撮ることは可能だと判断しました。Aさんも「頑張ってみる」と同意してくれました。

 自宅周辺の散歩から始め、電車の利用方法の確認などを一緒にしました。写真撮影も、小型のデジカメを自由のきく左手で上下逆さに持てば、親指でシャッターが押せました。

 練習の結果、体力も付き、電車で出かけてウォーキングを楽しみ、花の撮影もできるようになりました。「もう無理だ」と思っていた事ができるようになると、料理にも挑戦するようになりました。

 リハビリというと、体を動かすための訓練と思われがちですが、それだけではありません。その人が心から好きな事をできるようにすると同時に、自身の存在価値を高めてもらう事も大切なのです。私自身、Aさんを支える中で、改めてそう感じました。(作業療法士)

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