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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

医療とお金(22)障害年金をもらおう

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 公的年金というと、一定の年齢に達してから受け取る「老齢年金」しかイメージしない人がけっこう多いようです。とくに国民年金だけの場合、厚生年金と違って保険料が給料からの天引きでないうえ、老齢基礎年金は満額で年77万円余り。長年にわたって保険料を納めてもその程度か、と思ってしまうのでしょうか。保険料の未納が以前から問題になっています。

 でも、公的年金制度による給付は、老齢年金だけではありません。障害年金、遺族年金もあります。人生の途中でいつ起こるかもしれない障害や死亡に備えた「保険」でもあるのです。

 とりわけ障害年金は、存在自体をよく知らなかったりして、もらいそこねている人が相当いるようです。医療とお金(12)「障害者向けの制度も使える」でも少し紹介しましたが、改めて強調しておきます。もらえる年金はしっかりもらいましょう。

 そのためにも保険料の未納は絶対に避けましょう。いざという時に大きな違いが出ます。


幅広い病気で対象になりうる

 障害という言葉を聞くと、目、耳、手足の不自由な人、なかでも生まれつきの障害の人や、事故で障害を負った人を思い浮かべる人が多いかもしれません。

 しかし、障害年金の対象はもっと広く、いろいろな病気によって生じたものも障害です。

 心身の機能や形に不具合があって、日常生活の制約、あるいは労働の制限が続いていれば(一般的には1年6か月以上)、年金の給付を受けられる可能性があるのです。

 認定の対象になりうる主な障害は、以下の通りです。ただし、65歳以上になって発症したときは原則として障害年金は出ません(70歳までの厚生年金加入者には障害厚生年金だけ出る)。

眼=視力障害、視野障害、まぶたの障害、調節機能障害、眼球の運動障害など

耳・鼻=聴力障害、平衡機能の障害、呼吸機能の障害を伴う鼻の欠損

かみ砕き・のみこみの障害、音声・言語機能の障害

上肢・下肢・体幹・脊柱=機能障害、欠損、変形、人工関節、脳性まひ、小児まひなど

肢体の機能障害=脳血管障害、脊髄損傷、神経・筋疾患など

精神=統合失調症、うつ病、そう病、高次脳機能障害、認知症、てんかん、知的障害、発達障害

神経=脳血管障害、神経損傷による強い痛み、人工呼吸器など

呼吸器=肺結核、じん肺、気管支ぜんそく、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎など

心臓=弁膜症、心筋症、心筋梗塞、狭心症、難治性不整脈、大動脈疾患、先天性心疾患

腎臓=慢性腎不全、人工透析

肝臓=肝硬変、食道静脈瘤、肝がんなど

血液系=難治性貧血、血小板減少性紫斑病、血友病、白血病、悪性リンパ種、多発性骨髄腫など

代謝疾患=糖尿病(インスリンでもコントロール不良)、合併症を伴う糖尿病など

がん=各種のがんとその治療による局所の障害、機能障害、全身衰弱

高血圧=合併症を伴う高血圧、悪性高血圧症

その他=人工肛門、尿路変更、遷延性意識障害、難病、臓器移植後、HIV感染など


 脳卒中も、ぜんそくも、糖尿病も、がんも、と驚いた人が多いのではないでしょうか。

 認定基準の詳しい内容は、次のようなサイトに示されています。

日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準
かめい社会保険労務士事務所(大阪)


いくら受け取れるのか

 公的年金制度は2階建てになっています。1階部分は国民年金制度による障害基礎年金で、1級と2級があります。2階部分は厚生年金保険による障害厚生年金で、こちらは3級まであり、それより程度の軽い障害手当金(一時金)も定められています。

 2014年度の障害年金の額は、次の通りです。

<国民年金>

障害基礎年金1級=96万6000円(2級の1.25倍。月8万円台)

障害基礎年金2級=77万2800円(老齢基礎年金の満額と同じ。月6万円台)


 18歳になった年度内の子どもがいれば、加算があります(1級または2級の障害のある子は20歳未満まで加算)。1人目・2人目は22万2400円、3人目以降は7万4100円です。


<厚生年金>

障害厚生年金1級=2級の1.25倍

障害厚生年金2級=平均標準報酬額×加入月数に比例

障害厚生年金3級=2級と同じ額(最低保障額57万9700円)

障害手当金=2級の2年分の一時金(最低保障額115万3800円)


 厚生年金保険に加入していたことのある人は、1級、2級なら、同じ等級の障害基礎年金と障害厚生年金がセットで支給されます。障害厚生年金の部分の金額は、加入期間の平均標準報酬額と加入月数(障害認定日の月まで)によって違ってきます。3級・障害手当金の場合は、障害基礎年金が出ないので、最低保障額があります。

 注目したいのは、加入期間が短くても300月(25年)の加入とみなして計算すること。わずかな期間でも厚生年金保険に加入していると、ずいぶんプラスになるのです。この点もあり、障害基礎年金と大きく違わない程度の年金額になることが多いようです。

 1級・2級の場合、65歳未満の配偶者がいれば、配偶者加給年金(22万2400円)が上乗せされます(所得などの要件あり)。

 公務員などの共済もおおむね同じですが、在職中は基本的に障害基礎年金しか支給されません。


障害の等級のイメージ

 認定基準は、大まかに言うとこんな考え方です。

1級=他人の介助がなければ、日常生活を送ることがほとんどできない
(活動範囲はおおむね、自宅では寝ている部屋、病院ではベッド周辺)

2級=必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活が著しく制限される
(活動範囲はおおむね、自宅なら家屋内、入院中なら病棟内)

3級=障害によって労働が著しく制限されるか、病気が治っていないために労働が制限される

障害手当金=病気やけがは治っていて、労働が制限される


 個々のケースでどれにあてはまるかは、診断と生活の状況を踏まえた判断になります。

 受給後に障害が重くなったら、等級を上げるよう改定請求ができます。逆に一定期間ごとの審査で障害が軽くなったときは等級が下がったり、支給が停止されたりします。

 なお、障害年金の等級は、障害者手帳の等級とは別です(精神障害者の手帳のみ、ほぼ同じ等級区分)。医師から「その程度で障害年金は無理」などと言われても、うのみにせず、自分で年金事務所などに確かめましょう。年金制度をよく知らない医師も少なくないからです。


働いていても受給できる

 認定基準では、2級について「労働により収入を得ることができない程度」と書かれています。実際には、2級を受給しつつ、職場の援助を得て働いている人もいます。障害者枠の就労もあるし、車いすの経営者や人工透析を受けるサラリーマンもいます。

 しかし近年、精神障害を中心に、就労の有無によって判定が左右され、ハードルが上がっているという声が、年金請求に携わる社会保険労務士や精神保健福祉士から出ています。障害者の雇用促進に合わない機械的な運用が行われていることもあるのかもしれません。


受給するための3要件

 障害年金を実際に受け取るには、次の3点をクリアしないといけません。

(1)初診日に、その年金制度の加入者(被保険者)だった(例外あり)

(2)初診日の前々月までの加入期間のうち、保険料の未納期間が3分の1以下。または初診日の前々月までの直近1年間に未納がない

(3)初診日の1年6か月後、またはその前の症状固定日に、障害等級にあてはまる状態だった


 詳しくは、次回に説明します。

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原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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