最新医療~夕刊からだ面より
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多発性骨髄腫の新薬…再発遅らせる分子標的薬
骨の中(骨髄)で異常な血液細胞が増える多発性骨髄腫は、治療が難しい血液がんの一つだが、新薬が相次いで登場した。東京都渋谷区の日赤医療センター・血液内科部長の鈴木憲史さんは「新薬による治療で再発を遅らせ、生存期間を延ばすことができている」と話す。
多発性骨髄腫は、免疫機能を担う血液中の形質細胞ががん化して骨髄腫細胞となることで起こる。長い期間、無症状で過ごす患者もいるが、骨髄腫細胞が骨髄内に増えると、正常な赤血球や白血球などが作れず、貧血や風邪、鼻血などの症状が表れる。
骨が溶けてもろくなり、腰や背中が痛むこともある。このほか、骨髄腫細胞が作る異常なたんぱくが腎臓にたまって腎機能が低下したり、頭が痛んだり、と様々な症状が出る。
治療は、複数の抗がん剤を使うのが一般的だ。ただし、骨髄腫細胞を殺しても、生き残った細胞によって再発を繰り返す。65歳未満の患者には抗がん剤治療に加え、血液を作り出す造血幹細胞を移植することもある。
新薬は、ボルテゾミブ(商品名ベルケイド)という分子標的薬で、2006年に保険適用された。細胞内で不要になったたんぱくを分解する酵素の「プロテアソーム」の働きを邪魔して細胞分裂を防ぎ、骨髄腫細胞を死に導く。
日赤医療センターの鈴木さんは「従来の抗がん剤にボルテゾミブを加えることで、かなり少ないレベルまで骨髄腫細胞を減らせるようになった」と説明する。海外の臨床試験では、従来の薬による平均生存期間が約3年半であるのに対し、ボルテゾミブを加えた治療では5年近くに延びた。
新潟県の女性(73)は昨年12月、雪かき中に息苦しさを感じた。病院で検査を受けたところ、11年前に発症して以来、治療を受けている多発性骨髄腫の病状が悪化していることがわかった。今年1月に日赤医療センターに入院。ボルテゾミブの注射を始めた。「この治療でまた、頑張れると思っています」と話す。
ボルテゾミブの副作用には、手足のしびれがある。また息が苦しくなる急性肺障害などによる死亡例もあり、注意が必要だ。
一方、この病気では、サリドマイド(商品名サレドカプセル)とレナリドミド(商品名レブラミド)という内服薬も08年と10年からそれぞれ保険で使えるようになった。
サリドマイドは、服用した妊婦が手足に奇形がある赤ちゃんを産んで社会問題になったが、骨髄腫細胞の増殖に必要な血管の新生を抑える働きがあることが分かった。レナリドミドはより少ない服用量で、サリドマイドと同じように骨髄腫細胞の増殖を妨げる。
レナリドミドの副作用としては、
日本骨髄腫患者の会・副代表の上甲恭子さんは「薬を続けたいために主治医に副作用を伝えない患者もいる。主治医は、副作用と治療効果の兼ね合いをつけてくれるので相談してほしい」と話している。(渡辺理雄)



