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再認識される「世代間交流」…高齢者に活力 子どもに経験

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 かつての日本では、大人が仕事や家事で忙しい昼間、高齢者が子どもの面倒を見る姿は一般的だった。

 それが、高齢者に活力を与え、子どもの経験の幅を広げるだけでなく、親世代の負担軽減にもつながっていた。当たり前だった世代間交流が、核家族化が進んだ今、再認識されている。

 「むすんで、開いて…」

 井口マリ子さん(67)ら60~70歳代の「おもちゃ学芸員」が歌う童謡に合わせ、木の香りにあふれるおもちゃに囲まれた部屋で、小さな子どもたちが手をたたいたり、跳びはねたりする。歌のテンポが上がると、動きが速くなり、笑い声も起こる。

 東京・四谷の小学校舎跡にある「東京おもちゃ美術館」。おもちゃに触れて遊べる体験型美術館で、訪れた親子連れなどを相手に、ボランティアのおもちゃ学芸員が昔ながらの遊びを教えたり、絵本の読み聞かせをしたり、工作教室を開いたりしている。その中には、井口さんのような高齢者も多い。

 保育と高齢者福祉の研究者でもある館長、多田千尋さんは「子どもはいろいろなことに興味を持ち、たくさん話を聞きたがる。一方、高齢者は概して話し好き。世代は離れているが、『繰り返し』を好むという共通点もあり、両者は相性がいいんです」と語る。

 おもちゃ学芸員になるには受講料を払って2日間の講習を受ける必要があるが、高齢者が「子どもと触れ合いたい」と希望する例も後を絶たない。「人の役に立つ実感を得られることが魅力なのでしょう」と多田さんはみている。

 井口さんも「歌遊びや絵本の読み聞かせの後、子どもたちに『ありがとう』なんて言われるとうれしい。なにより子どもの笑顔を見ると元気になれる」と張り合いを感じている。

 一方、親子の反応も上々だ。毎週のように、長女ゆうちゃん(1)と通う主婦石田章江さん(44)は「年配のスタッフに教えてもらった手遊びに子どもも夢中です。『友達の力ってすごいわよ』とか、発育に応じた子育てのヒントも聞けて助かります」と話す。

 近年、こうした世代間交流の場作りが注目されている。

 介護・保育の事業者が、老人ホームと保育所や学童クラブの併設・交流に乗り出すケースがでてきたほか、大学生が高齢者と同居したり、高齢者宅に宿泊したりする活動も各地で試みられている。教育、福祉などの専門家らが集まる「日本世代間交流学会」という学会もある。

 「『老人と子ども』統合ケア」の編著のある千葉大法政経学部教授、広井良典さんは、「超高齢社会を巡る話題では、高齢者は一方的に『ケアを受ける側』と見られがちだが、実は、人生経験や時間的余裕を生かし、社会に役立てることは多い。子どもとの交流は、そんな高齢者の潜在能力をなにげなく引き出してくれる」と指摘する。(高橋圭史)

 ◎おもちゃ学芸員になるには

 東京おもちゃ美術館が開く養成講座を受講する。2日間で学芸員の役割、手作りおもちゃの指導術などを学ぶ。受講料は4000円。ほかに、学芸員登録費用(ユニホーム代含む)が7500円かかる。18歳以上で月2回以上、同じ曜日に参加できる人が対象。交通費と1日1000円の謝礼が出る。今年の養成講座は6月と11月の予定。問い合わせは、同美術館((電)03・5367・9601)へ。

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