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臨床の現場から

からだコラム

[臨床の現場から]患者への説得と納得

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 Fさんは、72歳のパーキンソン病の患者さん。診察日に様子を聴くと3週間前に胸痛が起き、かかりつけ医を受診したらすぐに心電図と胸部X線をとられ、「異常なし」と診断されたという。痛みが続くので、大学病院に行ったが、同じ検査でまた「異常なし」。「胸痛の原因は何ですか?」と尋ねたら「検査結果は正常なので心配ない。心配なら薬を出します」と言われ、狭心症薬が処方された。服薬しても痛みは消えず、納得できないまま、私の受診日となった。

 鈍い痛みで、何かの拍子に鋭い痛みがあるという。触診してみると、部位は大胸筋の付け根で、運動による筋肉痛と診断した。診察の度に「運動している?」と聞かれるので、1ヶ月前から運動を始めたという。原因がわかって納得され、貼り薬で痛みも改善した。

 一方、Oさんは68歳の運動失調症の患者さん。ふらつき、排尿障害などが進行するが、筋力は保たれる病気だ。筋力が低下するとふらつきが更に強くなること、使わないと筋力は急速に低下することを十分説明して、身の回りの事は自分で行い、立つ、歩くなどの運動を勧めた。しかし、転ぶと危ないなど様々な理由をつけて、ほとんど運動をしない。通所リハビリを勧めたが、自らは四肢や歩行の訓練をせず、マッサージや療法士に四肢を動かしてもらい、訓練した気分でいる。ある日、立てなくなったと嘆くので、毎日どのくらい、立つ訓練をしているかを尋ねると、「全くしていない」という。Oさんは、訓練の重要性を説明されても納得できず、まじめに向かい合うことができなかったようだ。

 患者さんに納得してもらおうと一生懸命説明するが、堂々巡りになり、診療を終えなければならないことがある。医師として限界を感じる時でもある。(山本紘子・藤田保健衛生大名誉教授)

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