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胎児に障害招く恐れ サイトメガロウイルス…母子感染防ぐマニュアル

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 胎児が感染すると難聴や発達の遅れを招くおそれがあるサイトメガロウイルス。厚生労働省研究班は妊娠中の対応をまとめたマニュアルを作成し、感染が疑われる新生児の検査も始めた。対策の整備や正しい知識の普及が欠かせない。


 サイトメガロウイルスは、世界中にあるありふれたウイルスで、主に幼児期にウイルスを含む唾液や尿が、目や鼻、口から体内に入ることで感染する。ほとんどの場合、症状が出ないか、軽い風邪程度ですむ。

 ただ、妊娠中に感染すると胎児に障害を起こす恐れがある。近年、感染しないまま成人になる人が増え、妊婦の約3割はウイルスを排除する抗体を持っていないことがわかっている。〈1〉乳幼児と飲食物や食器の共有を避ける〈2〉おむつ交換などの後にこまめに手を洗う――などの対策で妊娠中の感染は防げるが、ウイルスの存在そのものがあまり知られてこなかった。

 次女(2)の妊娠中に感染した母親(31)は、「上の娘が大人用のコップやスプーンを使いたがる時期でもあり、妊娠中に何も知らず、食器を共有していた」と振り返る。次女は難聴で、発達も遅れている。2歳を過ぎて、ようやくつたい歩きを始めた。「元気で生まれてくるはずの我が子に障害を負わせてしまった。同じ悔しさを味わう母子を減らしたい」と話す。

 事態を改善するため、厚労省研究班は昨年12月、妊婦への対応を具体的に示したマニュアルを作成、全国の産科医に配布した。すべての妊婦に対し、感染予防の具体策を指導することを推奨したほか、感染の疑いがある妊婦への対応策も示している。

 妊娠中にこのウイルスに感染するのは、免疫のない妊婦の1~2%。そのうち約4割が胎児にも感染する。新生児全体の約300人に1人は、胎内で感染しているが、このうち約8割は何の症状もない。症状がなく生まれた赤ちゃんの約9割は問題なく成長する。

 そこで、感染の疑いのある妊婦には超音波検査を行い、異常が見つかれば詳しい検査やカウンセリングができる病院を紹介する。異常がない場合は、「胎児に感染していないか、感染していたとしても症状がない可能性が高い」など十分説明する。作成に携わった神戸大産婦人科教授の山田秀人さんは、「産科医が適切な対応をとることで、妊婦の過度の心配や混乱を防げる」と話す。

 生まれた赤ちゃんの感染の有無は尿などのウイルスを調べればわかるが、保険適用になっていない。このため、研究班では昨年末から感染の疑いがある新生児の診断サービスを始めた。医師や医療機関から、尿検査を無償で受け付け、相談にも応じる。同時に保険適用できる検査の開発も進めている。「症状がない感染児も赤ちゃんのうちに診断し、発達を注意深く見守る体制を作りたい」と研究班の代表者で東大産婦人科教授の藤井知行さん。

 このウイルスは多くの乳幼児が自然に感染するため、胎内で感染した赤ちゃんだけに対する特別な防護策は必要ない。だが、「先天性トキソプラズマ&サイトメガロウイルス感染症患者会トーチの会」代表の渡辺智美さんによると、保育園で出生時に感染していた子どもだけが隔離されているとの相談もある。「妊婦以外も正しい知識を持ってほしい」と訴える。(中島久美子)

 
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