文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

宋美玄のママライフ実況中継

医療・健康・介護のコラム

妊婦の身体能力を最大限引き出す…ガスケアプローチとは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
建国記念の日にディズニーランドに行ったら、めちゃくちゃ混んでいました

 先週はバレンタインデーでしたね。娘は保育園でチョコレートを作ってパパにあげていましたが、チョコレート好きなので製作途中でぺろぺろなめたりしていたそうです。チョコレートは美味おいしいですが、家にチョコレートがあるのが分かると娘がとても欲しがるので、コントロールが難しいです。

骨盤底筋群に働きかける身体的アプローチ

 こちらで何度かご紹介しているフランス発の呼吸と姿勢とペリネ(骨盤底筋群)の身体メソッド、ガスケアプローチの日本支部を設立いたしました。「一般社団法人日本ガスケアプローチ協会」という団体で、私が代表理事を務めております。ガスケアプローチを一言で説明するのは難しいのですが、フランス人医師ベルナデット・ド・ガスケ医師によって確立された、姿勢と呼吸からグローバルにペリネ(骨盤底筋群)に働きかける身体的アプローチです。ペリネは、骨盤の底にある筋肉のガードルのようなもので、日本でも近年ペリネに対する関心が高まってきています。女性の場合、ペリネには尿道・ちつ・肛門の3つの穴が開いています。腹圧が高まり上から過度の圧力が加わると、骨盤内にある臓器が下に向かって押し出される形になるだけでなく、ペリネそのものにもダメージを与えることになります。ひいては尿漏れ、ガス・便漏れ、子宮脱、女性性機能への悪影響といった問題を引き起こすことになります。

 出産をはじめ、日常生活での姿勢のとり方や呼吸法、せきやくしゃみ、排便時のいきみ方、腹筋運動など、不適切な方法によって生じた過剰な腹圧が下方に向かう圧力となり、結果的にペリネは日々小さなダメージを受け続けることになるのです(流行しているダイエット法で、「くびれ」のために腹圧をかけ続ける運動が結構あり、ペリネへのダメージが非常に気になります)。ガスケアプローチでは、出産だけでなく日常生活全体の中で、姿勢と呼吸を整え、腹圧をコントロールし、しなやかさのある正常なペリネの機能を維持することで、出産後の女性に高頻度に見られる尿漏れや子宮脱などの予防を目指しています。日本で知られている、尿を途中で止めるような動きをする「キーゲル体操」が表面的な運動であるのに対し、ガスケアプローチは呼吸や姿勢を整え、ペリネの奥から腹筋、横隔膜までつながった理論で、鍛えると同時にいかに日常生活でペリネにダメージを与えないかというところにも重点が置かれます。

 私がガスケアプローチに出会ったのは娘を妊娠していた時でした。それまで、10年以上出産に携わってきましたが、何の疑問もなく妊婦さんがおなかを折り曲げて腹圧をかける出産法を指導していましたが、ガスケアプローチに出会ってそれは子宮ごと赤ちゃんが下がるだけでペリネに大きなダメージを与えていることと、姿勢と呼吸法で子宮を上げ、型を抜くように赤ちゃんを産むガスケアプローチのお産を学びました。それまで出産の時に骨盤の関節がどうなっているか、「いきみ」はなぜ起こるのか、など考える機会がなかったのですが、自分の身体や骨盤模型などを使って学ぶことができました。

理想のお産とは?

 そして、「理想のお産とは」という問いに答えを得ました。医療が手出しをしない「自然出産」が良いか、こだわりや満足度を犠牲にした「安全な出産」が良いかということが議論になります。医療が介入しないことや、分娩ぶんべん台で仰向けで産むのではなく、畳でフリースタイルなら良いというわけではなく、安全なお産と満足が両立しないわけではありません。大事なのは「自然」ではなく(しかも「自然」は、人によって意味するところが異なる)、「生理的」であるかどうかということ。生理的、というのが分かりにくければ、妊婦の持つ身体能力を最大限に生かし、ダメージを少なくできているかということです。出産の際に身体に起こっていることを正確に知らなければ、生理的な出産はできません。その理論がガスケアプローチなのです。すでにいくつかの産院で実践されています。また、最近注目が集まっている産後ケアについても、ケアの仕方を間違えれば傷ついた身体とペリネによりダメージを与えることになってしまうので、ケアの担い手は身体を知ることが大切です。

 当面の活動はフランスから講師を招いての講習会の開催ですが、近いうちに日本でも公認指導員が何人か誕生する予定です(また、骨盤支持ベルトや授乳にも使える多目的抱き枕の販売も行っています)。ホームページが出来たので興味のある方はのぞいてみてください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

son_n_400

宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

宋美玄のママライフ実況中継の一覧を見る

3件 のコメント

コメントを書く

骨盤支持ベルトについて

ゆっちまま

宋先生、こんにちは。現在17週の妊婦です。ガスケの骨盤支持ベルトは早産予防にもなりますでしょうか。第一子妊婦時に張りの回数が多く切迫流産・早産で...

宋先生、こんにちは。
現在17週の妊婦です。
ガスケの骨盤支持ベルトは早産予防にもなりますでしょうか。
第一子妊婦時に張りの回数が多く切迫流産・早産で5カ月入院しており、途中から助産師さんの勧めでTちゃんベルトを使用してましたがすぐによれてしまい使い心地が良くありませんでした。
宋先生がお薦めされてるガスケ骨盤支持ベルトに興味があるので早産予防になるか教えていただけたらと思います。
いつも応援しています。お忙しいと思いますがよろしくお願いいたします。

つづきを読む

違反報告

そして母は娘に何を伝えるべきか

憂い母

5人を出産した母親(60代)ですが、身体の機能低下を如実に感じています。所謂サルコペニアと称するには余りに日常生活に支障をきたすこの変化に、ペリ...

5人を出産した母親(60代)ですが、身体の機能低下を如実に感じています。所謂サルコペニアと称するには余りに日常生活に支障をきたすこの変化に、ペリアの機能低下とすれば納得致しました。講習会等に赴かずとも多くの年代の女性にも広めていただきたいです。
多くの提言をこのようなコラムで知ることができ、又宋さんの体験から同時代の女性が共有できるなら、医学的見地をふまえて自分の身体を甘やかさず労わりながら鍛えてほしいですね。次世代応援してます。

つづきを読む

違反報告

産前トレーニングとデータや症状のリンク

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

心臓外科学会に来ています。開胸手術後の胸骨固定の器具の成果を計るために、VASだけではなく、より客観的な呼吸機能を診るアイデアがあり、大学時代に...

心臓外科学会に来ています。

開胸手術後の胸骨固定の器具の成果を計るために、VASだけではなく、より客観的な呼吸機能を診るアイデアがあり、大学時代に医局会で提案した内容を思い出しました。

手術による疼痛改善により間接的に呼吸機能も改善するという仮説の提案という形でしたが、中身は同じです。


妊娠・出産でも、母体や胎児に定量的あるいは定性的なデータの変化が起こりますが、それらは直接、間接にリンクしています。



先天的な要素や変えられない環境的な要素は仕方ありませんが、人間は習慣や意識を変えればそれ相応に適応し心身共に変化します。

現代社会生活では(より原始的な社会に比べ)本来発達するべき身体能力が育たない傾向があります。
姿勢や筋力も一日でどうにかなるものではありません。

講習会を機会に継続的な運動の習慣がつくことが一番大事なのではないかと思います。

特定筋力だけでなく、バランスよく全身を鍛えていく方がいいのではないかと思います。

スポーツでも、より良い結果を求めて、フォームや姿勢、筋力をデザインしたり、新しい能力を獲得していきますが基礎体力そのものはもっと重要です。


変な話、妊娠や出産前にフィジカルテストをする時代が来るかもしれないですね。
多分、胎盤梗塞とかって大なり小なり誰でもあって、目に見えるようなデータや身体所見の異常の患者だけが引っ掛かっているだけでしょうから。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事