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いい湯で健康 温泉と自然療法

yomiDr.記事アーカイブ

泥湯でやけど、泥湯で治す…別府温泉の思い出

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 このブログを始めてから、まもなく1年になります。当初の目標であった期間を継続できてホッとしていますが、今回と次回をもって温泉のブログを閉じようと思っています。ということで、今回は私の温泉に関する思い出話を、次回は温泉の健康増進への応用と題して終わりにする予定です。それから、今まで疑問に思われてきたことがありましたら、この際にぜひお寄せください。分かる範囲でお答えします。


 登別に赴任したのが24年前の4月でした。その時まで温泉については全く素人で、何の研究をすればいいのか、何から手をつけたらいいのか、と悩みましたが、毎日温泉に入っていると風邪をひかないことに気づきました。一方、そのころ出た論文に、草津温泉の高温浴(時間湯)を繰り返すと免疫能(体の抵抗力)が下がる、というのがありました。これは過剰な免疫反応を起こしている、たとえばリウマチ性疾患、アトピー性皮膚炎などには好都合です。

 では、草津温泉のような強酸性の高温浴ではない、単純泉はどうなのかと、弟子屈の病院長にお願いして免疫能を測ってもらいました。すると温泉治療後に免疫機能がアップしていたのです。これが温泉に入っていると風邪をひかなくなる一つの理由なのだと思い、論文にしました。

 分院は私が赴任後5年でその役割を終えてしまいましたが、その間、ヨーロッパの温泉治療に触れる機会を与えていただき、今日の私の基礎が形成されました。閉院後は手足をもがれた状態でしたが、何とかここまでやってこられたのは、当時の仲間や現在も温泉地の病院で活躍している医師たちの協力のおかげだと思っています。

 温泉を研究する学会に入ることで、全国の温泉地に行くことができるのも、この分野の研究では楽しいことです。その中での思い出と言えば、やはり別府温泉での泥湯でやけどして、泥湯で治したという貴重な体験でした。室内の熱い泥湯ですねにやけどし、露天のぬるい泥湯で治したのです。温泉の威力を身をもって体験しました。この施設も時代の流れなのか、露天風呂が小さくなっており、解放感が少なくなったのは残念です。

 また、温泉や入浴に関することで講演やコメントを求められることがあるのも、刺激になります。学生時代のサークルの仲間から、ラジオを聴いたとか、新聞を見たとか連絡が入るとうれしかったり、私自身は眠くて見ていないのに、23時過ぎのテレビを見て「出ていましたね」と言われて驚いたりすることもありました。

 現在、登別の分院が存在した跡地は民間に売却され、ソーラーパネルが設置されており、昔の面影はまったくありません。先日、医学部の新入生が分院の歴史・研究成果について教えて欲しいと訪ねてきました。温泉治療に興味を持つ若い世代が現れたことに喜びを感じ、予定した時間をオーバーしてお話してしまいました。

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いい湯で健康 温泉と自然療法_大塚吉則_顔120px

大塚吉則(おおつか よしのり)

北海道大大学院教育学研究院教授

 

1955年、北海道生まれ。79年、北海道大医学部卒、第1内科に入局。89年から米ニューヨーク市のコーネル医科大に留学。北海道大病院登別分院・医学部附属温泉治療研究施設(温研)勤務などを経て2007年から現職。国際温泉気候医学会(ISMH)アジア・オセアニア地区代表、日本温泉気候物理医学会理事長、日本生気象学会幹事、NPO健康保養ネットワーク理事長。主な著書に「新版温泉療法 温泉と自然が生み出す健康づくり」(Crews)、「そもそも、すべてが『体質』のせいなのか? 自然治癒力を引き出し幸せになる方法」(Medical Tribune)など。

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2件 のコメント

もう一度、ありがとうございました。

うらら

テレビ番組、拝見しました。大塚先生のお話は、このブログのようにとても分かりやすい説明でした。温泉が糖尿病や便秘にも効いて、効能書きにもたくさんの...


テレビ番組、拝見しました。
大塚先生のお話は、このブログのようにとても分かりやすい説明でした。
温泉が糖尿病や便秘にも効いて、効能書きにもたくさんの病名が書いてありました。
日本も、ヨーロッパや昔の日本のように、もっと温泉療養が活用されるようになればいいのにと思いました。
バブルの時に、宴会温泉になってしまったから湯治の習慣が消えたのでしょうか。
食べきれないご馳走じゃなくて、食事はほどほどで、1週間単位のお安い料金設定で湯治出来たら、「今月は草津、来月は別府、夏は北海道に行こう」という老夫婦がたくさんいるような気がします。お年寄りは、どこかしら痛いところや何かしら病気を抱えていますからね。
ヨーロッパのように保険がきいたら言うことなしですね。

温泉関係の方々、よろしくお願い申し上げます。(もうじき老夫婦より)

このブログがいつまでも続くものと思っていました。突然の発表で、びっくりしました。
第1回が3月3日だったので、1年たったのですね。
お陰さまで、温泉つうになれた(かな?)楽しかったです。ありがとうございました。
質問ですが、2週間の北海道野宿旅行の時、十勝ワイン城の近くの清見温泉に行ったとき、お湯の色が茶色でした。タオルがすぐに茶色に染まりました。毎日来ていると言っていたおばあさんのタオルはほぼ黒に近いこげ茶色でした。あれは何の色だったのでしょうか。ずっと気になっています。ご存知でしたら教えてください。

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同種療法の裏付けですね。

山林の賢者

一言だけコメントを付け加えますと、「泥湯でやけど、泥湯で治す…別府温泉の思い出」というタイトルですが、実は一部の人の間に知られている同種療法の効...

一言だけコメントを付け加えますと、「泥湯でやけど、泥湯で治す…別府温泉の思い出」というタイトルですが、実は一部の人の間に知られている同種療法の効果です。ヨーロッパのチェフの一部では知られているのですが、料理中の手のやけどはお水につけるのではなく、ほどほどのお湯につけるか、炎に安全な距離まで近づけて、痛みが治まるまで持ってみると、やけどが後も残らずなおりますよ。

でも、いつも大変面白い温泉のお話を書いていただいて本当にありがとうございます!

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