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大阪府立急性期・総合医療センター 腎臓病治療

深化する医療

(上)「腹膜透析」通院月1、2回

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 慢性の腎臓病患者は約1300万人とされ、「新たな国民病」とも言われる。高齢化などを背景に、腎臓病が悪化して継続的に透析を受ける人は増え、2013年には31万人に達した。透析は患者の身体的・精神的負担が大きい。大阪府立急性期・総合医療センター(大阪市住吉区)は、患者の仕事や生活に合わせた様々な療法を採り入れ、生活の質の向上を目指す。

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腹膜透析のカテーテルを設置するため、腹腔鏡を使い手術する医師ら(府立急性期・総合医療センターで)=長沖真未撮影

 1月下旬、腎臓・高血圧内科と消化器外科、麻酔科の医師5人が、腎臓の機能が低下した70歳代の女性に「腹膜透析用カテーテル挿入」の手術を行った。腹部の3か所を0・5~3センチほど切開し、小型カメラの付いた腹腔ふくくう鏡や手術器具を差し入れ、モニター画面で確認しながら樹脂製のカテーテル(管)を挿入、固定した。

 腹膜透析は、腹膜を腎臓代わりに使い、老廃物をこし取る手法だ。設置したカテーテルを通して腹部の空間に透析液を入れると、内臓や腹膜の血管から、老廃物や余分な水分が、濃度差のため透析液にしみ出てくる。数時間から半日後、患者自身が透析液をカテーテルから体外に排出する。

 腹膜透析は通院が月1~2回で済む。就寝中に透析液を自動交換できる自宅用の装置や、体内に長時間ため続けられる透析液も開発され、透析のタイミングを生活に合わせやすい。腎臓の残った機能が長持ちするとの報告もある。

 カテーテルの設置は通常、腹部を数センチ切開して手探りで行うが同センターでは3年前から腹腔鏡を導入した。腹腔内の状態を目で確認できるので、設置がより安全になる。カテーテルを狙った場所に確実に固定できる効果もある。消化器外科医長の宮崎進(41)は「手間はかかるが、よりよい治療になる」と言う。

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 慢性腎不全の治療法は、大きく分けて〈1〉機械による血液透析〈2〉腹膜透析〈3〉腎移植――の三つがある。主流は血液透析。一般的に「透析」と呼ばれる治療だ。日本透析医学会の調査では、2013年に透析を導入するか腎移植を受けた患者のうち、93・7%がこの治療を受ける。

 血液透析は、血液を体外に循環させ、ダイアライザーと呼ばれる装置で老廃物を除去する。一般的には週3回ほど通院し、1回の透析に約4時間かかる。生活の制約は大きいが、老廃物を効率よく除去できるうえ、広く普及しているので通院先の選択肢は多い。

 一方、腹膜透析は5・5%にとどまる。大きな理由は、管理の難しさだ。患者自身が1日3~4回、液を交換するが、操作時に管を清潔にしないと感染症の恐れがある。患者への細かい指導が必要なため、実施する医療機関は限られる。さらに、どうしても腹膜が傷んでしまうため、6~8年ほどで血液透析に切り替えざるを得ない。

 腎臓移植は、日本移植学会などによると年間約1600例にとどまる。日本では死者からの献腎移植が少なく、二つの腎臓のうち一つを親族らから提供してもらう生体腎移植が9割を占める。

 センターで昨年に透析などを導入した148人のうち、血液透析が126人だが、腹膜透析は17人で11%と、全国平均の約2倍に達した。「本当は腹膜透析が適した患者が、よく知らされないまま血液透析を受けるケースも多い。大きな問題だ」と、腎臓・高血圧内科主任部長の林晃正(52)は指摘する。

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 「医者任せにしたら絶対にダメ。どの方法のメリットや特徴が、自分の仕事や社会的な条件に合っているか、よく考えて」

 1月中旬、院内の講義室に集まった患者や家族ら6組9人に、林が語りかけた。センターで毎月1回開く「選択外来」だ。透析や移植が必要になりそうな患者に、療法をよく知ってもらおうと、3年前に始めた。看護師とともに約2時間をかけて、療法の特徴をはじめ、長所や短所を説明した。

 それぞれの療法の希望者には「準備外来」も用意し、詳しい方法や注意点を具体的に紹介する。参加した70歳代男性は「透析は、患者にとって未知の世界。きちんと説明を受けて選べるのはありがたい」と喜ぶ。(敬称略、阿部健)

増える透析患者 糖尿病腎症44%

 慢性腎臓病では、血液中の老廃物や余分な水分を濾過ろかして尿をつくる「糸球体」という部位が壊れていく。たんぱく尿や血尿が3か月以上続き、腎臓の機能が60%未満に低下した状態が該当。15%未満になれば末期腎不全と呼ばれる。

 排尿によって老廃物を体外に出すことが難しくなり、尿毒症などのほか、心不全や脳梗塞などの合併症の恐れもある。一般的に10%以下で透析や移植を検討する。日本透析医学会によると、透析患者は増加の一途で、2000年に20万人、11年に30万人を突破。13年に透析導入か移植したのは約3万6000人に上る。

 原因となる疾患や病態はさまざまで、治療法も異なる。食生活の西洋化などで増えた糖尿病性腎症が44%を占め、糸球体が炎症を起こす慢性糸球体腎炎が19%、高血圧によって腎臓の血管が動脈硬化を起こす腎硬化症が13%で続く。

 
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