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専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話

yomiDr.記事アーカイブ

似て非なる麻薬と覚醒剤(1)ASKA被告みたいにはなりません

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 ASKA被告の事件で、覚醒剤について再び脚光があたっています。

 そのような事件があると、時折このようなやり取りが出て来ます。

 「先生、麻薬ってやはり飲まなくちゃいけないのかな…」

 「痛み止めとして今は効いていますから、飲んだほうが良いと思いますよ」

 「だってあれだろ…あの音楽の人…あんなになっちゃうんでしょう?」

 どうやら麻薬と覚醒剤が混同されているようです。


 皆さんは麻薬と覚醒剤は別物とご存じですか?

 まず材料が違います。

 麻薬はケシから作ります。覚醒剤は麻黄から抽出したエフェドリンから精製します。

 作用も違います。

 モルヒネなど医療用にも使用されるアヘン類の麻薬は、中枢神経を抑制します。一方で覚醒剤は中枢神経を興奮させます。それなので、疲れ知らずになるということで、芸能界等にも乱用者が出てしまいます。

 他にも取り締まる法律も違います。

 そして以前「依存と離脱症状」のお話をしましたが、実はモルヒネなどは(医療用ではない場合の、不適切な使用で)精神依存と身体依存の双方を形成しますが、覚醒剤は精神依存のみです。じゃあ覚醒剤は(身体依存を起こしている際の薬物中止で出る)離脱症状が起きないからいいね…とはなりません。覚醒剤の精神依存は強力で、すぐに強い依存を形成して、止めることができなくなり、生涯にわたって暗い影響を及ぼすことになります。

 なお余談ですが、お酒(アルコール)もたばこも精神依存と身体依存の双方を形成しますので、単に「やめられない」だけではなく、中断した場合に身体依存の形成からの離脱症状を起こすことがあります。

 このように薬剤だけではなく嗜好しこう品にも精神依存・身体依存を形成するものは数多くあり、あくまで程度の問題ではあります。

 しかし医療用麻薬は、がんなどの慢性的痛みがある患者さんに対しての使用では、これらの依存の形成が弱いことはこれまでの連載で説明しました。

 「音楽の人…のようにはなりませんから大丈夫です」

 自信をもって答えられます。

 また覚醒剤に指定されているアンフェタミンに類似した構造を持つメチルフェニデートも、ナルコレプシーという病気等の治療薬として用いられています。しかしこのメチルフェニデート、商品名リタリンは、不適切な処方からの事件が起こったため、現在は限られた医師しか処方できなくなっています。

 いずれにせよ医療用に、適切に使用する分には、利益を享受することができる一方で、もちろん街中でひそかに売っているこれら薬剤に手を出したら破滅の入り口が開くのは周知の事実です。

 次回に続きます。

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専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話_profile写真_大津秀一

大津 秀一(おおつ しゅういち)
緩和医療医。東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長。茨城県生まれ。岐阜大学医学部卒業。日本緩和医療学会緩和医療専門医、がん治療認定医、老年病専門医、日本消化器病学会専門医、日本内科学会認定内科医、2006年度笹川医学医療研究財団ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。内科医としての経験の後、ホスピス、在宅療養支援診療所、大学病院に勤務し緩和医療、在宅緩和ケアを実践。著書に『死ぬときに後悔すること25』『人生の〆方』(新潮文庫)、『どんな病気でも後悔しない死に方』(KADOKAWA)、『大切な人を看取る作法』『傾聴力』(大和書房)、『「いい人生だった」と言える10の習慣』(青春出版社)、『死ぬときに人はどうなる』(致知出版社)などがある。

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