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遺伝性乳がん・卵巣がん患者会…実名公表 理解広げたい

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太宰牧子さん「クラヴィスアルクス」設立

フリードマンさんは1月に来日。太宰さんと交流した際の写真が、クラヴィスアルクスのフェイスブックに掲載されている

 特定の遺伝子に変異があることで通常よりも若く、繰り返しがんにかかりやすくなる「遺伝性乳がん・卵巣がん」。患者の太宰牧子さん(46)が国内で初めて実名を公表し、患者会を設立した。

 米国の患者団体「FORCE」代表のスー・フリードマンさん(51)も来日し、仲間にエールを送った。

 太宰さんは40歳だった姉を卵巣がんで失い、自身も43歳で左胸に乳がんが見つかった。姉妹で若くして次々がんになったのに不安を抱き、遺伝子検査を受けたところ、変異があることがわかった。未発症の父も同じ変異が見つかった。

 「ショックより原因がわかって納得できました。姉が残したおいやめいら自分以外の家族も、予防に役立ててほしいと思いました」

 自身の治療方針も変わった。6ミリと小さながんで、最初の病院では医師から温存手術を勧められていたが、遺伝性がんだと、乳房や卵巣に繰り返し発症しやすい。このため全摘手術を選び、手術後も通常よりも頻繁に検診を受けるようにした。検診でがんが見つかりにくい卵巣や、未発症の乳房の予防切除も選択肢として示されたが、今も迷い続ける。

 「仲間に相談したくて患者会を探しましたが、どこにもない。自分で作るしかない」。米女優アンジェリーナ・ジョリーさんが予防切除を公表した2013年5月当時、「健康な乳房を切除するなんて」と非難の声が多かったことも、「社会の理解を広げたい」という思いを強めた。

 治療が一段落した昨年5月、「虹色の世界を開ける鍵」という意味を名前に込めた患者会「クラヴィスアルクス」を設立。当初は匿名で活動していたが「隠すことで病気に対する偏見を助長してしまう」と、専門医らの学術集会で講演をした1月、公表に踏み切った。家族は皆、応援してくれた。

 一方、同じ集会に招かれたフリードマンさんは29歳の時、乳がんを発症。33歳でリンパ節に再びがんを見つけた時、雑誌記事がきっかけで遺伝子検査を受けて変異がわかった。「卵巣がんや反対側の乳がんのリスクもあるのに、私の医療チームがその可能性を知らせなかったことに失望しました」とフリードマンさん。がんの治療後に両卵巣や反対側の乳房も予防切除し、直後の1999年、主体的に情報を集めようと患者会を設立した。

 たった一人で始めた活動は、その後16年で、〈1〉50か所以上の拠点を持つ無料電話相談〈2〉ホームページでの1000ページを超える最新情報の発信〈3〉遺伝情報による差別を禁じる法の成立〈4〉遺伝子検査を高額にしている特許無効を求める訴訟での勝訴〈5〉研究の提案や協力――などに発展した。

 「患者自身が声を上げることで世の中は変えられる」と言うフリードマンさんは、「あなたはもう一人じゃない」と太宰さんを励ました。太宰さんには5人ほどの仲間が集まり、まずは交流会や正しい知識を伝えるセミナーを開き、今後、検査の保険適用や差別を禁じる法整備も目指す。「子どもたちの世代のためにも、自分たちの手で理解ある社会を作りたい」と話している。

 クラヴィスアルクスの連絡先は070・2652・2525、http://www.clavisarcus.com、FORCEのHPはhttp://www.facingourrisk.org/(岩永直子)

 遺伝性乳がん・卵巣がん 
 乳がんや卵巣がんの5~10%を占める。特定の遺伝子の変異が50%の確率で親から子へ遺伝することが原因。特別な検診や予防切除などで早期発見や発症防止が期待できるが、日本では遺伝子検査や予防医療は保険適用外。
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