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りんくう総合医療センター 感染症対応

深化する医療

(中)外国人診療 無料通訳で対応

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 世界各国と空路でつながる関西空港には、機内で発熱したり、体調を崩したりして感染症が疑われる渡航者が日常的に現れる。空港島の対岸にある「りんくう総合医療センター」(大阪府泉佐野市)は、こうした渡航者や在留外国人の受け入れに力を入れている。

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 外国人患者が多い同センターは、英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語の医療通訳や、海外の旅行保険会社への対応などを行う全国でも珍しい「国際診療科」を設置。医療通訳には約60人がボランティア登録し、依頼があれば無料で患者に付き添う通訳サービスを続けてきた。

 一昨年3月には、厚生労働省が創設した「外国人患者受け入れ医療機関認証制度」の認証を他の2病院とともに全国で初めて受けたことで外国人患者がさらに増加。医療通訳の今年度の利用者は延べ521人(昨年11月末現在)と、すでに同245人だった昨年度の倍以上にのぼる。

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中国語と英語で治療にあたる三島伸介医長(りんくう総合医療センターで)=守屋由子撮影

 昨年12月中旬、堺市に住む大学留学生のブルガリア人男性(41)が訪れた。寄生虫治療のため、2度目の来院だった。

 担当したのは総合内科・感染症内科医長の三島伸介(43)。前回の治療で、消化管の寄生虫は消えたが、首や腕などに赤い筋状の発疹が出ていた。

 三島は英語で、「皮膚の下を移動する別種の寄生虫にも感染している可能性がある」と指摘。最近の食事内容だけでなく、母国での食生活や狩猟歴、ペットの飼育歴なども細かく聞き取った。その結果、「欧州から取り寄せている食材が原因かもしれない」とし、血液検査などで原因がわかるまで、その食材を控えた方がいいと説明した。

 男性は「外国人対応と感染症治療の両方が整っていると聞いて来院した。英語なら、症状をより詳しく伝えられるので安心できる」と話す。この日は日本人の妻と一緒に訪れたが、前回は一人で来たため医療通訳を依頼した。「受付から会計まで付き添ってくれたので、スムーズに治療を受けられた。また利用したい」と笑顔を見せた。

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 三島は、渡航者の健康問題に対処する「渡航医学」の専門家だ。英語が公用語のアフリカ南部マラウイで寄生虫研究を6年続け、中国にも5年留学したことで、英語と中国語を使いこなせるようになった。中国では現地の医師免許も取得した。

 ただし、「医療通訳体制は整備されつつあるが、対応困難な言語も少なくない」と課題を挙げる。

 エボラ出血熱の疑いで昨年11月に入院したギニア国籍の患者のケースでは、同国公用語のフランス語を話せるスタッフがいないため、医師らがフランス語と英語の医療対訳集を利用するなどして対応したという。

 「アフリカではかつての宗主国の影響が薄れ、英語やフランス語を話せない人も増えている。少数民族の言葉しか話せない患者も時々来る」。そんな場合、タブレット端末に検査内容のイラストを描いたり、インターネットで検索した画像を表示したりし、意思疎通を図るという。

 来日する外国人は一昨年、1000万人を超えた。今後も多くの国の患者の来院が見込まれる。三島は「十分な意思疎通ができるよう、語学研修を増やすなど受け入れ態勢を強化する必要がある」と話す。(敬称略、萩原隆史)

 
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