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蛭子能収さん(3)「孤独な方が、いい作品ができる」

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 ――蛭子さんは漫画家でいらっしゃいますが、一人で何かに向き合う時間は大事なんですかね。

 「そうですね。漫画を描く時は、周りに人がいたとしても、べちゃべちゃしゃべりながらでは絶対に描けません。やはり作業する時間は一生懸命一人になります」


 ――孤独が好きなだけでなくて、必要な時があるのですね。

 「ものを作る時は孤独な方がいい作品ができると思います。しゃべりながらだといいかげんなものしかできない気がします」


 ――何ででしょうね?

 「脳が分散しないんじゃないでしょうか? しゃべっていると、脳がそちらに分散して集中できない。しゃべらないと、それだけを見て考えるから、作品もいいものができる。俺はべちゃべちゃしゃべりながらだと絶対にいいものは描けません。まあしゃべりながらも描けるんだけど、しゃべらずに描きたい」


 ――やはり、作品とか仕事とか、集中する時は一人で自分と向き合うことが大事なんですかね? それこそ今はそばにスマホがあって、仕事しながらちょこちょこチェックしている人もいます。

 「途中で気が散る人は、絵自体、本当は描きたくないんじゃないかと思いますけれども。本当に描きたい人は、スマホなんか途中でいじらないですよ。一人になる時間は仕事には大事です。携帯とか途中でいじっている人は、結局本当に作りたいものがないんじゃないですか? 何もしたいことがないのかもしれませんね」


 ――なるほど。

 「それで結局、話し相手を見つけて、時間をつぶしているのかも。だから、やりたいものを持っている人は、そういう人に捕まったら大変ですよね。そういう人に捕まって、暇つぶしの道具にされないように、うまい逃げ言葉を見つけておいた方がいい」


 ――逆に、やりたいことがある人は一人でいられるし、一人でいる時間が大事?

 「そうです。俺、あんまり人とずっとしゃべったりしているのが苦手なんで」


 ――インタビュー、すみません…。

 「ああ、すみません(笑)」


 ――もう終わりますので(笑)。

 「一人で何かやっている方が好きなんですよ。映画とか見ている方が」


 ――最後に、一人を楽しむコツを読者に伝授してください。

 「とにかく、自分で考えたことを自由に実行に移せるって楽しいですよと伝えたい。その時に、あまり他人に頼らないで。友達と思ってちょっと協力してくれよというのは、相手の負担になるし、自由を奪うからよくないと思うんですよね。手が足りない時は業者に頼む。お金を払ってでも。友達に頼むと、今度は友達に頼まれることになるから」

 「それに、一人でいると言っても、自分が何をしたいということがないと始まらない。まずは、自分が何に興味があって、何をしたいかをちゃんと知ることですよね。そうしないと、ただ、だらだら生きているだけの人になってしまう。いやまあ、それでもいいんですけれども。だらだら生きているだけであってもね(笑)」


 ――だらだら、お好きかと思っていました。

 「俺はせっかちだから、ちょっとでも暇な時間があったら、好きなことをぱっとやる。マージャンをやっている頃は、30分でも時間があったら、ぱっと行くんですよ。1回だけでもできるから。今はそこまでやっていないですけれども。だから、すごく積極的に時間を有効に使っています。ちょっとの時間でも自分の好きなことをする。無駄には使わない」


 ―― 一人でいる人は、自分が何をしたいかわかっている人なんですね。目からウロコです。

 「そう、それがわからないと、ただボーッとしているだけになっちゃう。だから自分のしたことを考えないと。それを何も持っていない人はやはりちょっとおかしいですよね。一人でいられないから、人に流されて、人に使われるようになっちゃう。一生人に使われて終わるんじゃないかと思いますよ」


 ――厳しいですね。

 「そう?(笑)やっぱりちょっと自分で何をしたいかぐらい考えないと。せっかく生きた意味がないというかね」


 ――人生論ですね。ところで、おうちでは奥さんとどう過ごしていらっしゃるんですか?

 「家にいると、うちの女房の考え通りに、女房の動きに俺は協力していますよ」


 ――それは苦痛に感じないんですか?

 「いや、苦痛に感じます(笑)。だけど、唯一寂しさを救ってくれる人だから。女房といる時は女房の言うとおりに動くけど、寂しさはないから」


 ――窮屈ではあるけど、いいこともあるからそれは仕方ないと(笑)。

 「そうしょうがない(笑)。その代わり、女房が三つ自分の好きなところに連れて行くとすると、俺は一つ自分の好きなところに行く。3対1ぐらいの割合で自由をもらっています」


 ――一緒に旅行なんて行ったら、自由時間などは作られるんですか?

 「いや、うちは一緒に旅行に行くと、ほとんど女房の行きたいところにくっついていく。ほとんど神社とかお寺回りなんですよ。それに付き合わされてばかり」


 ――ちょっと街歩きしてくるよ、なんて言えないですか?

 「二人で行った場合はそれはできないね。怖くて(笑)。(頭を抱えながら)それはできないっす(笑)」


 ――じゃあ、奥様と二人だと土地の名物も食べるんですね。カツカレー食べたいなんて言えない?

 「カツカレーは食わしてもらえないでしょうねえ(笑)。まあ寂しさは解消できているし、一長一短ですよ」

(終わり)

蛭子能収(えびす・よしかず)さん

 1947年、長崎県生まれ。ちりがみ交換、会社員などを経て、33歳で漫画家デビュー。タレントとしてもテレビ番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京)などで活躍中。

 
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