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蛭子能収さん(1)「群れずに生きたい」

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 東日本大震災以降、全国で「絆」の大事さが強調され、スマートフォンの普及で、誰かと常につながりたい人が増えている。そんな中、あえて今、一人でいる心地よさを語る新書「ひとりぼっちを笑うな」(角川書店)が7刷を重ねるヒット中だ。漫画家でタレントの著者、蛭子能収さん(67)に、孤独の喜びを聞いてみた。(岩永直子)

蛭子能収(えびす・よしかず)さん

 1947年、長崎県生まれ。ちりがみ交換、会社員などを経て、33歳で漫画家デビュー。タレントとしてもテレビ番組「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」(テレビ東京)などで活躍中。



 ―― 一人で行動するのがお好きなんですね。

 「テレビのロケで地方に行くと、スタッフと土地の名物を食べながら打ち上げをするでしょう。みんなで集まって語り合うのが苦手だし、大皿で名物をつつくよりも、一人分のカレーがいい。早く一人になって町をぷらぷら歩きたいなあと思うんです。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』で共演しているタレントの太川陽介さんは、気を使ってくれて、俺が食べ終わってもじもじしていると、『蛭子さん、もう帰っていいよ』っていつも言ってくれるんですよね。それで気楽になって、外に出られるんです」「ずっと団体のまま行動していると、誰かに命令されて動いているばかりだなと思って、つまらなくなるんです。でもちょっとでも団体から離れて一人になると、気持ちがふっと軽くなる」

 「大勢で歩くと真っすぐ目的地を目指すだけで、町を楽しめません。一人なら知らない土地の人の顔を見たり、知らない店に入って地元の人とマージャンしたりして、その町を満喫できる。繁華街を歩くのが好きで、風俗には行かないんですが、店の前に立っている男の人に『ちょっとちょっと』と声をかけられたりするのがすごく好きなんです」


 ――どれだけ親しい人であっても、二人だと、その時間は邪魔されちゃう感じなんですか?

 「相手が自由にしている人で、『こっち行こう』と言っても、『おれはそっちに行かない、こっちに行くよ』と反対意見を気楽に言ってくれる人ならいいんです。自分の希望を押し殺して、べったりくっついていないといけない、というのは苦手なんですよ。例えば、『今日ちょっと俺、競艇に行こうと思うんだけれど行かない?』って声をかけたとしますね。そしたら、『俺、今日ちょっと用事があるから』って断ってくれる人が好きなんです。『お前が行くんだったら、俺も行こうかな』と合わせるんじゃなく、互いに軽く断ることができる関係ですね。『なんだお前付き合い悪いな』『協調性がないな』とか言わない関係。『頼みを断れないのが友達』なら、そんな関係はいらないです」


 ――結構そういう関係で世の中にあふれていますね。友達なんだから頼みを聞いてくれるはずとか、お金を貸してくれるはず、とか。

 「借金を頼まれて貸したとすると、なかなか返せないし、こちらも返せとは言いづらいし、まずその人とは仲が悪くなる。借金に限らず、だから自分は人に頼み事はしませんね。自分で処理できないことは、業者に頼んで処理する。友達への頼み事は、マージャンのメンツが足りない時に電話して、『できる?』と聞くぐらいですね。できないと言われても気にしないし」


 ――群れることに嫌悪感をお持ちですね。

 「生きていて一番楽しいのって自分で考えたことを行動に移すことなのに、群れるとそれがしづらい。誰かの提案に乗りたくないこともあるし、いやいや付き合うのも苦しいでしょう。まあ、競艇に行こうと言われたら乗りますけど、そのほかのことはあまり乗らない(笑)」「それに群れにいるとリーダーや弱い人ができて、顔色をうかがったりいじめられたりする。そういう関係にあえて入る必要はないんじゃないかと思いますけれども。最近、広島の女の子グループで、ラインで悪口言われたからって殺された子がいたじゃない? ああいう事件を見ると、そういう仲間に入らなければ、殺されることもなかったろうにって思うんですよね。群れる人は仲間はずれをとても恐れるけれど、一人でいることが平気ならそれほど苦にはなりませんよ。群れるとグループの長やその長に尽くす人、そうでもない人とだんだん分かれてきて、そんなのが嫌。俺はどれにもなりたくないし、一人の方が気楽でいいなと思うんですよね」


 ――フェイスブックやツイッターをされたことありますか?

 「ないです。全然」


 ――街中でスマホをいじっている人見たことありますか?

 「あります、あります」


 ――どう思いますか?

 「なんか時間がもったいないなとは思いますけどね。全然興味がないというか、そもそも俺はあの機械を扱えないんですけれども(笑)。でもこういう本を出すと、ツイッターとかで勝手に宣伝してくれて、そういうのは助かるなと思いますけれど。自分が好きでやっているならいいんです。面倒くさいと俺は思うけど、その人が好きでやっているなら否定はしない。でも、すぐに返信を返さなくちゃとか、人に気を使って仕方なくやっているなら時間がもったいない。そういうつながりなら自分の方からすぱっと切った方がいいと思います。歩きながらやるのは、交通の邪魔だしね。それにせっかく通りを歩いたり、電車で移動したりしているのに、スマホを見ていたら現実の景色が見えないじゃないですか。自分は新幹線でも、富士山が今日はきれいに見えるか、変わった景色はないかに興味がある。よく窓辺に座ったとたん、カーテンを閉める人にはどういうつもりなのかと腹が立ちます。こっちが見えなくなるじゃないですか? 景色や周囲に関心を払えない人が、携帯電話に没頭するんだと思います」

続く

 
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