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「ダンスセラピー」認知症患者 歌に合わせ運動

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気分が改善 脳の血流活発に

認知症患者らにダンスセラピーを行う平山さん(堺市の阪南病院で)

 音楽に合わせて体を自由に動かす「ダンスセラピー」と呼ばれる心理療法を使って、認知症患者などの症状改善を図ろうという取り組みが行われている。

 先月下旬の昼下がり。堺市にある阪南病院の病棟に、認知症などで入院している患者約15人が集まった。患者が大きな輪になって座ると、ダンスセラピストの平山久美さんが一人ずつ握手やタッチを交わした。その後、「もうすぐお正月やなぁ。お雑煮の具は何を入れる?」と話しかけた。

 患者らは、口々に「もちを入れる」「かまぼこも入れる」「だしは昆布でとる」などと返した。すると平山さんは、「かまぼこは、どんな形をしている?」などと問いかけた。

 患者が提案した動きを取り入れ、平山さんは、それぞれの食材の形や、具材を鍋に入れるしぐさを、「こんな感じかな」などと言いながら、やってみせた。その後、歌謡曲などに合わせ、みんなで体を動かした。繰り返すうちに、笑顔になったり手拍子をしたり。終了後も、名残惜しそうに平山さんの手を握り、体を動かす患者も見られた。

 ダンスセラピーのプログラムは40~50分。毎回、テーマを決め、セラピストが参加者と対話をしながら、振り付けを考えていく。平山さんは「笑わなくなった人が笑ってくれたり、手を握っても反応がなかった人が握り返してくれたりします。体を動かすことで筋力の回復にもつながると思っています」と話す。

 認知症と診断されて、同病院に入院した堺市の井上マサヨさん(88)は、他の患者と一緒に体を動かす自信がなく、自分の病室でダンスセラピーを受けている。平山さんが手を取って、童謡「通りゃんせ」に合わせて体を動かすと、井上さんは自然と歌詞を口ずさんだ。「好きな音楽に合わせて体を動かすと気分がいい。歌うと不安が吹き飛んで、落ち着きます」と笑顔を見せた。

 阪南病院は、2010年11月からダンスセラピーを取り入れている。現在は、認知症治療病棟と児童精神科病棟で週1回、実施している。

 13年5月から半年間、筑波大の研究グループとともにダンスセラピーの効果を調べた。認知症の患者に月2回(1回約30分間)、ダンスセラピーを受けてもらい、11人の脳の血流などを測定した。すると、血流が良くなっていた。中でも、言語機能にかかわる部分の血流が良くなっていた。

 研究に加わった精神科医で同大人間総合科学研究科教授の水上勝義さんは、「患者が自分で考えた動きをすることで、脳の動きが活発になっていると考えられます」と分析する。

 参加者の心拍の変動を解析し、自律神経にどのような影響があるかも調べると、体の動きや音楽の種類により、活気づいたりリラックスしたりする傾向があった。水上さんは「認知症患者の場合、いらいらして怒りっぽくなったり意欲が低下したりしてしまうことがあります。ダンスセラピーには、薬を使わずこうした症状を改善していく効果があるのかもしれません」と話している。(利根川昌紀)

 ダンスセラピー 
 体の動きを通した心理療法で、1940年代に米国で本格的に始まった。精神疾患をもつ人や高齢者にとどまらず、健常者へのメンタルケアの効果も期待できる。国内では、日本ダンス・セラピー協会が認定する資格をもつセラピストが病院や福祉施設などで実施している。
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