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群大病院立ち入り検査…死亡例放置 背景追及へ

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再発防止策の徹底 焦点

 

立ち入り検査を終え群馬大学病院から出る厚生労働省の担当者ら(13日午後、前橋市で)=鈴木希撮影

 肝臓の腹腔ふくくう鏡手術を受けた患者8人が死亡した群馬大病院に対し、厚生労働省は13日、前橋市と合同で立ち入り検査を行った。

 検査結果によっては、高度医療を担う「特定機能病院」の承認が取り消される恐れもある。

■異常事態

 

 「安全管理態勢がどうなっているのか、疑念を持たされる事案だ」。塩崎厚労相は13日の閣議後記者会見で、徹底的な検査を行う必要があると強調した。

 この日の検査で、厚労省は、病院長や患者の手術をした執刀医らから聞き取りを行い、患者死亡の経緯や院内で再発防止策が徹底されているかを確認した。

 厚労省が最も問題視しているのは、患者8人が死亡するまで約3年半もの長期間にわたって異常事態を放置してきた点だ。

 群馬大病院の第二外科が肝臓がんの患者らに対し、腹腔鏡手術を始めたのは2010年末。その翌月の11年1月には最初の死者が出た。その後、14年5月までに60歳~80歳代の男女7人が相次いで死亡。いずれも同じ40歳代の男性助教が執刀しており、院内では深刻に捉えていた医師もいた。

 ところが、病院長ら病院幹部に患者死亡の情報は伝わらず、執刀医を指導する教授でさえ「死亡例は認識していたものの、問題との認識は十分になかった」(群馬大病院)という。

 また、読売新聞の取材で、患者が死亡した場合、通常なら原因と対策を協議するため行われる「死亡症例検討会」が、8人の死後、一度も行われていなかったことが判明。この執刀医による肝臓の開腹手術でも患者10人が死亡していたことも明らかになっている。

 厚労省は、病院のずさんな安全管理がこうした事態を招いたとみている。

■患者への説明

 

 患者側へのインフォームド・コンセント(説明と同意)の在り方も問われる。

 患者の体に小さな穴を開けてカメラを挿入して行う腹腔鏡手術は、体を大きく切る開腹手術より体への負担は少ないメリットがある反面、高度な技術が必要とされる。群馬大病院で死亡した患者は、腹腔鏡の中でもリスクが高い保険適用外の手術を受けており、本来なら病院側はこうした事情を詳しく説明する必要があった。

 しかし、死亡した患者らの遺族は読売新聞の取材に「専門用語を並べられ、危険な手術とは思わなかった」「体への負担が少ないことを強調された」などと、いずれも説明が不十分だったと口をそろえている。

 今回の検査結果を踏まえ、今後、社会保障審議会医療分科会(厚労相の諮問機関)で、医師ら専門家が特定機能病院の取り消しの是非を議論する。分科会では、なぜ相次ぐ患者の死亡を食い止められなかったのか、患者への説明は十分だったのかなどの問題点を分析した上で、同病院が打ち出している対策で再発を防げるかどうかが検証される。

■「基本的機能なし」

 

 特定機能病院の承認を取り消すかどうかは、結果の重大性よりも、再発防止策に主眼が置かれる傾向がある。同病院は昨年11月の問題発覚以降、約1か月間で改善報告書をまとめ、診療科の再編や手術関連死の報告態勢をつくるなど改善策を打ち出しており、厚労省内には、地域医療への影響も考慮し、取り消しに慎重な意見もある。

 ただ、一連の問題は医療界に衝撃を与えた。問題が発覚した昨年11月、日本肝胆すい外科学会は、腹腔鏡手術の実績が多い全国214病院の死亡実態調査に乗り出した。日本外科学会も全国の手術を登録したデータベースを使い、腹腔鏡手術の手術成績について初の全例調査を進めている。

 「医療の安全管理、感染対策といった基本的な機能がなく、国立大学病院としての責務を果たせていない状態にある」。国立大の病院長として医療安全に取り組んできた坂本徹・元東京医科歯科大医学部付属病院長は、群馬大病院の医療態勢そのものを疑問視する。同病院が打ち出した再発防止策も標準的なレベルに達するための入り口に過ぎないとして、「本当に対策を運用できるのか、厳しく見極める必要がある」と話している。

 特定機能病院 一般病院よりも高い技術の医療についての技術提供、研究開発、研修を行う機能を持つ病院。医療法に基づき、厚生労働大臣が承認する。80ある大学病院本院のほか、国立がん研究センター中央病院など計86病院が承認されている。診療報酬が優遇され、収入増が図られている。(社会部 小田克朗、医療部 高梨ゆき子)

◇         ◇         ◇

 

診療報酬優遇 打ち切り…特定機能承認取り消しなら

 

 特定機能病院の承認取り消しは大きな打撃となる。取り消されれば、診療報酬の優遇措置が受けられなくなり数億円規模の減収となるほか、医療への信頼も損なわれるためだ。

 社会保障審議会医療分科会で2001年以降、承認取り消しが検討された4件のうち、実際に取り消されたのは東京女子医大病院(02年)と東京医大病院(05年)の2件。いずれも患者が死亡する深刻な医療事故だったことに加え、事後対応の悪さが影響した。

 東京女子医大病院は、女児が死亡した医療事故を起こした後に医師が手術記録を改ざんし、刑事事件に発展。東京医大病院は、人工内耳の取り違えなどで04年に「指導」処分を受けた後、心臓手術で4人が死亡する事故が起きていたことが発覚した。2病院は3~5年後に再承認を受けている。

 一方、10年に患者が死亡する院内感染が起きた帝京大病院の取り消しは見送られた。新しい細菌による感染で予測が困難だったことに加え、遺族への丁寧な対応が評価された。承認取り消しの基準について、厚労省の担当者は「同じような事故を二度と起こさないという病院側の姿勢が最も問われることになる」と話す。

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