オトコのコト 医師・小堀善友ブログ
妊娠・育児・性の悩み
医療を変える異分野融合
いきなり話がそれて申し訳ございません。私の周りだけなのかもしれませんが、アメリカ人は朝が早い!と思います。私の現在いるイリノイ大学では、毎週水曜日は患者のカンファレンスが朝の6時30分より始まります。そして金曜日には午前7時より工学部の学生やスタッフたちとミーティングがあります。私は郊外に住んでいるので、4時に起きて用意をして5時過ぎの電車に乗らないとミーティングに間に合いません。となると、夜は眠たくなるので9時には寝てしまっています。
その分、早く仕事が終わるのはいいことかと思いますが。私の研究室にいるスタッフは仕事が終われば午後5時には帰ってしまいます。もちろん、夜まで残って仕事をしている人もいますし、患者さんを診察している臨床に携わっているレジデントは夜まで忙しく仕事をしているようです。しかし、基本的に早く仕事を始めて早く終わるという考え方は良いことかと思います。
そういう気質だから、サマータイム(夏時間)が適応されるのでしょうかね。欧米では夏の間はサマータイムと言って、時計の針を1時間早くします。そのため、朝の涼しいうちから仕事が始められる。これだと環境にいいですし、明るいうちに帰れるので家族との時間を長く保つことができるというわけです。
日本だったら、そういうわけにはいかないかな、と考えてしまいます。朝早く始まったとしても仕事は暗くなるまで続けて結局は長時間労働となってしまうでしょうから。それが、勤勉である日本人の良いところなのかとも考えます。
医者を驚かすエンジニアの仰天アイデア!
さてさて、その金曜日のミーティングの話です。
毎週工学部の学生さんやスタッフの人たちとミーティングをするのですが、工学の専門家と医者が何を話し合っているのか? 実は、これがとても面白いのです。
実際にあった例をあげます。私が実験で使用する細胞を効率良く凍結保存するための容器が必要になったことがありました。そのとき、その容器を作製するために、医者側の意見と工学の専門家の意見をぶつけて、そこで容器のアイデアを出します。
そのアイデアを、CAD(Computer-Aided Design:コンピューターを用いて設計すること)のソフトですぐに設計して、それを3Dプリンターですぐに作ってしまうことができるのです。近年は3Dプリンターの医療への活用も多数報告されており、たとえば体の中へ埋め込む医療器具を作製したり、手術前のシミュレーションに用いたりすることもでき、応用できる分野は拡大しています。
あたりまえなのですが、工学部の学生さんは医療や手術のことなんて何にも知りません。知らないからこそ、びっくりするようなアイデアを出してきて、医者を驚かせます。まさにブレインストーミング。
面白い例は、まだ他にもあります。
たとえば、「全方向が見られる内視鏡を使って手術ができないか?」というアイデアがありました。つまり、一つの方向だけではなく、上も下も横も見ることができるにはどうしたらいいのか。
そうすると、翌週には工学部のスタッフが中古のカメラレンズを20個買ってきて、それを合体させてなにやら奇妙なカメラの塊を作ってきました。これはちょっと笑ってしまったのですが、そんなアイデアのぶつけ合いによって、新しい発見を生み出すことができるのかもしれないなと感じています。そして、何よりもスピードが速いのです。
医学の発展には様々なテクノロジーの最先端が集まっていくことが必要であるということが強く感じられました。そして、医者も病気のことばかり考えるだけではなく、患者さんのためにはどんな技術を使うことができるのか、ということを考えることも重要ではないかと考えます。
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共同参加で知識と技術の融合の時代かな
小町ファン
昔は技術者と医師には接点があったんですけどね。ハサミやメスなどを自分オリジナルに作ってもらうとか。注射針も切れなくなると研ぎにだしていましたから...
昔は技術者と医師には接点があったんですけどね。
ハサミやメスなどを自分オリジナルに作ってもらうとか。
注射針も切れなくなると研ぎにだしていましたから。
いつしかそれもなくなってしまったわけですけど。
心臓関係などの機器や血管に入れる装具などは医師からの意見のフィードバックで作られていると思います。
今の時代、コンピューターが支援してくれるので何がしたいのかをひとつづつ具体的に技術者にいうと、そういうのって昔からあるなんて事も。
古参の技術者もたくさんいろいろな物を知っているので協賛しながらやっていくといいと思っています。
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アメリカへようこそ
くろちゃん
小堀先生 しばらくご無沙汰していて久しぶりにブログを開いたらシカゴへ来てられたのですね。ようこそ。小生は少し南のオハイオ州に住んでいますが、シカ...
小堀先生 しばらくご無沙汰していて久しぶりにブログを開いたらシカゴへ来てられたのですね。ようこそ。小生は少し南のオハイオ州に住んでいますが、シカゴには日本領事館があり 周辺には日本の企業やレストランも多く時々訪ねます。あまり変な所へ迷い込まない限り治安も悪くないと思います。立派な博物館(美術、自然科学、医学)やシカゴ交響楽団もあるので充分に楽しんでくださいね。さて医学と工学との接点ですが これは日本でもオリンパスの内視鏡のように成功した例があるのですが やはり組織立ってアイデアをぶっつけ合うのはアメリカ人の方が得意でしょうか。小生も50年前に渡米したころ 色んなカルチャーショックを体験した事を思出します。日本の医学部では教授の顔色を伺いながらものを言う習慣だったのに、アメリカでは学生でも助手でもどんどん自分の意見を発言するのに驚いたり、またいきなり名前をファーストネームで呼ばれて「人を馬鹿にしてる」と憤慨したものの それは親愛感を持ってくれているのだと次第に判りました。先生もドクターコボリではなくヨシトモ縮んで通称ヨシにされてしまっているかも。シカゴの冬は寒いですけれど どうぞお元気で。
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3Dプリンター出現により新しい世界が
めざめたじいさん
4時起きとは辛いでしょうね。50年来5時起きでしたが、数ヶ月前から30分遅くしました。午前中の有効利用が可能です。また、生活習慣を変えないこと...
4時起きとは辛いでしょうね。50年来5時起きでしたが、数ヶ月前から30分遅くしました。午前中の有効利用が可能です。また、生活習慣を変えないことが健康を守る秘訣だと思います。米国である事業所を訪問したとき、ボスが私たち訪問客に対応中に姿を消したことがありました。あとで聞けば、勤務時間終了時刻だったのだそうです。日本では考えられないことでした。
医療現場で異分野の協力が、発展のために欠かせないことでしょう。教育現場にコンピュータが導入されたときは画期的なことが起こりました。子どもの能力は一人ひとり違います。それを1人の教師が一斉指導しています。ひとつの説明で分かる子がいる、しかし全く理解できない子もいる。一人ひとりの能力に合ったソフトを開発した結果、足踏みしなくて済む子と、背伸びしなくて済む子がでて画期的な方法だと思いました。いまでは、一人ひとりの子どもにノートPCを持たせている現場もあるようです。しかし、教育機器には限界があるのも事実です。頼りすぎなことも大事です。
3Dプリンターも然り。
「体の中へ埋め込む医療器具を作製したり、手術前のシミュレーションに用いたりすること」は意義ある活用です。中には、模造ピストルと造り、犯罪に使おうとする者も出ています。道具は両刃のやいば、上手に使えば素晴らしい道具になり、悪用すれば犯罪者の武器にもなる。
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