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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

医療とお金(14)難病の医療制度が1月から大きく変わる

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 いわゆる難病は、発病のメカニズムが未解明で、治療法が確立しておらず、長いつきあいが必要になる病気で、比較的まれなものを指します。

 その難病患者の医療制度が2015年1月1日、つまり来年から大きく変わります。医療費の負担が軽くなる病気の範囲が広がり、自己負担の割合は2割に下がります。

 一方、これまで自己負担ゼロだった低所得世帯(住民税非課税世帯)や、重症の患者にも、一定の自己負担が生じます。

 患者団体の要望を踏まえつつ、「薄く広くする」という感じの制度変革です。

 長期療養が必要な子どもの医療費を軽くする「小児慢性」の制度も、同時に変わります。

 これらの制度で現在、医療費の助成を受けている人や、これから受けようと思っている人は、2014年のうちに「受給者証」の更新・申請の手続きをしておくと、経過措置が適用されて3年間、新制度よりも負担が少なくて済みます(所得区分によっては経過措置による減額なし)。入院中の食費も新制度では、従来と違って全額、一般患者と同じ負担額に変わりますが、経過措置が適用されると3年間は半額に軽減されます。小児慢性の入院中の食費も、一般患者の半額の負担に変わりますが、経過措置が適用されると従来通り、負担ゼロです。

 12月中に急いで手続きしましょう。

対象となる病気の範囲が広がり、負担はやや増える

 難病患者への医療費助成は、これまで法律がなく、要綱をもとした予算措置によって、特定疾患治療研究事業として行われてきましたが、今年5月に難病法が成立し、法律に基づく医療費の支給制度になります。制度を実施するのは都道府県で、費用の2分の1を国が義務的に負担します。

 制度の対象となる病気(指定難病)は、現在の56種類から、110種類に増えます。来年夏には約300種類に拡大される予定です。

・指定難病一覧
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000062437.html
・難病情報センター
 http://www.nanbyou.or.jp/

 これらの病気の患者のうち、基準を満たす状態にある人が制度の対象です(軽快者は除外)。その病気に関連する医療費に限り、自己負担が軽減されます。

 自己負担割合は、これまで一般患者と同様に3割が基本だったのが、2割になります(もともと1割負担、2割負担の年齢層はそのまま)。

 所得の区分と、月あたりの負担の上限は、次の通りです。

 基本高額かつ長期人工呼吸器等市区町村民税
上位所得3万円2万円1000円所得割25万1000円以上
一般所得Ⅱ2万円1万円1000円所得割 7万1000円以上
一般所得Ⅰ1万円5000円1000円所得割 7万1000円未満
低所得Ⅱ5000円5000円1000円非課税(本人年収80万円超)
低所得Ⅰ2500円2500円1000円非課税(本人年収80万円未満)
生活保護0円0円0円   

 所得の区分は、「同じ医療保険の世帯」に属する人の税額の合計で判定します(現行制度は生計中心者の所得税額で区分)。低所得で患者本人が子どもの場合は、保護者のうち収入の多い人の年収で判断します。税額だと線引きがわかりにくいときは、年収の目安を下記の「子どもの慢性の病気」のほうの表(所得の線引きは同じ)に示したので、そちらを見てください。

 現行制度は、医療機関ごと、入院・外来別、医科・歯科別の限度額になっています(調剤薬局・訪問看護は自己負担なし)。これに対し、新制度では複数の医療機関(入院・外来とも)、調剤薬局、訪問看護の自己負担を合計して、上限と照らし合わせます。同じ世帯に指定難病または小児慢性特定疾病の患者が複数いるときは、合計で世帯の上限額になるよう、各人の上限額を設定します。

 現在は、医療機関ごとに上限額まで支払う方式ですが、新制度では患者が「上限額管理表」を持参して医療機関で自己負担した額を記入してもらい、それが月の上限額に達すると、それ以上の負担がなくなる方式になります。

 「高額かつ長期」とは、医療費の総額が月額5万円(2割負担だと自己負担1万円)を超える月が、過去11か月間に5回以上あった場合です。現行制度で自己負担ゼロになっている「重症患者」の扱いはなくなります(薬害のスモンは切り離されて従来の事業に残り、引き続き自己負担ゼロ)。

 「人工呼吸器等」は、人工呼吸器(鼻マスクを含む)、補助人工心臓を常時つけている患者です。

 これまで制度の対象外だった生活保護の患者も、新制度の対象になります。本人の負担はゼロで変わりませんが、その分の医療費の財源は、生活保護制度から難病制度に移ります。

 また、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの対象となる難病は、関節リウマチを含めて130種類でしたが、1月から若干増えて、151種類になります。難病患者を雇った事業主に雇用助成金が支給される病気の種類も、現在の131種類から、156種類に増えます。

子どもの慢性の病気も新制度に

 18歳未満の子どもの慢性疾患には、児童福祉法による医療費の公費負担制度があります(継続治療が必要なときは20歳未満まで延長)。

 難病だけでなく、がん、腎臓病、ぜんそく、心臓病、糖尿病、先天性障害を含めて、長期間の療養が必要な病気が幅広く対象になっています。

 5月の児童福祉法改正を受けて来年から、対象となる病気は11疾患群514種類から、14疾患群704種類に広がります。名称も「小児慢性特定疾患治療研究事業」から、「小児慢性特定疾病」の制度に変わります。病名のリストは次のサイトにあります。

・小児慢性特定疾病情報センター
 http://www.shouman.jp/

 自己負担割合は、これまで3割だったのが、2割になります(小学校入学前は通常でも2割)。

 所得区分の線引きは難病と同じで、月あたりの負担上限額は、難病患者のそれぞれ半分です。

 基本重症人工呼吸器等年収目安(夫婦と子1人の場合)
上位所得1万5000円1万円500円850万円以上
一般所得Ⅱ1万円5000円500円430万円以上
一般所得Ⅰ5000円2500円500円200万円以上
低所得Ⅱ2500円2500円500円80万円以上(住民税非課税)
低所得Ⅰ1250円1250円500円80万円未満(住民税非課税)
生活保護0円0円0円   

 自己負担分の支払いは、難病と同様に「上限額管理表」を患者が持参して、月の上限額を超えないよう記録していく方式になります。

 「重症」には、医療費の総額が月額5万円(2割負担だと自己負担が月1万円)を超える月が過去11か月間に5回以上あった場合のほか、現行の重症患者基準にあたる場合も含まれます。ただし、血友病は従来通り、自己負担ゼロです。

不服申し立てが可能になる

 難病、小児慢性とも、新しい制度では、受給者として認定されないなど制度上に扱いに不満があるときに、行政不服申し立てができるようになります。

 また、指定医療機関、指定医の制度が導入されます。新制度の医療を扱えるのは、指定された医療機関だけになり、認定申請に必要な書類を書けるのも指定医に限られます。とはいえ、いま患者が利用している医療機関は、おおむね指定される見込みです。

 制度の実施主体は、難病が都道府県、小児慢性が都道府県・政令市・中核市ですが、手続きの窓口の設定は自治体にまかされており、地元の保健所や市区町村が窓口になることも多いようです。

 わからない点は、各都道府県にある難病相談・支援センターや、ほとんどの都道府県にある難病連(患者団体)に尋ねてください。

・難病相談・支援センターの一覧
 http://www.nanbyou.or.jp/entry/1361

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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