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福祉の職種「CSW」…最先進地域は大阪

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「ずいぶん地域の役に立ってますよ」。CSWの吉田聡子さんは自治会長(中央)とともに、男性(手前)を勇気づける(寝屋川市内で)

 コミュニティーソーシャルワーカー(CSW)という福祉の職種がある。制度の谷間で生活に困難を抱えている人や、社会的に孤立している人を援助し、地域住民と一緒に解決を目指す。

 その取り組みの最先進地域が大阪だ。府内の全市町村に計214人が配置されている。活動の一端を取材した。

 「知らない土地に1人で来て、心細かった。地域の皆さんの助けがなかったら、どうなっていたことか」

 寝屋川市に住む40歳代の男性は、そう振り返る。

 3年前、事情があって市内のアパートに別の市から引っ越してきた。以前の職場で起きたトラブルのせいで精神的に落ち込み、ひきこもりに近い状態。髪もひげも伸び、食べ物もろくになかった。

 CSWの吉田聡子さん(47)は、生活保護の申請を助けるとともに、民生委員と住民に協力を依頼した。

 自治会役員たちは、リサイクル用に集めていた冷蔵庫や洗濯機を無償で提供してくれた。地元の人と関係ができる中で、男性は自治会の仕事を手伝うようになった。子どもの下校の見守り、学校の芝生の草取り、夜間の防犯見回り、各種の行事の準備、川の共同清掃。自分が役に立てることで、笑顔が出てきた。

 「いろんな行事に役員が分担して出るのも大変やから、助かってるよ」と自治会長。

 寝屋川市の委託で、市社会福祉協議会は2中学校区に1人ずつ、計6人のCSWを置いている。各地域では「まちかど相談所」をほぼ毎週、地元の会館などで開く。研修を受けたボランティアが、CSWらとともに相談に乗る。

 「具体的な問題を一緒に考える中で、動いてくれる人が増え、情報も入ってくる。地域を暮らしやすくするのは住民。ひとごとではないんです」と吉田さんは説明する。

 行政のように制度ごとの縦割りではなく、担当地域で起きているあらゆる生活上の問題を、様々な機関、住民と連携して解決していく。同時に地域の福祉力を高める。それがCSWの役割だ。ほとんどは社会福祉士が務めている。

 大阪では、府の地域福祉支援計画で提案され、2004年度から市町村への補助で配置が始まった(現在は他の事業と合わせた交付金)。府内の政令市、中核市も独自に配置した。島根県、香川県、東京都、秋田県などの一部にもCSWはいるが、全域に配置されているのは大阪だけだ。

 東大阪市で東端の2中学校区を担当するCSW、湯浅直樹さん(41)(社会福祉法人仁風会所属)=写真=は、相手に寄り添い続ける「伴走型の支援」を心がけている。

 30歳を過ぎた女性は、高校を出てから日常生活を家族に頼り切っていた。家族が亡くなってからは外出せず、入浴せず、着替えもしない。本人は「困っていない」と言ったが、湯浅さんの勧めで自費のヘルパーを頼んだ。湯浅さんは月に何回か訪れ、どんな支援がありうるか探っている。

 「一定の資産はあるから生活保護の対象ではなく、介護保険も違う。公的な制度だけでは解決しない問題がたくさんある。支援を拒否する人でも、根気よくかかわって信頼関係を築くうちに、変化してくることがある」と言う。

 堺市社会福祉協議会の宮崎浩二さん(42)=写真=は、東区担当のCSWになって5年目。このごろ相談が増えているのは「ごみ屋敷」だ。

 「うわぁ、これは」。60歳代の男性が暮らすマンションの部屋に入ると、生活ごみが山積み。ゴキブリが何十匹もはっていた。体力と気力が低下して、片づけられないらしい。区内の福祉専門職に集まってもらい、トラック何台分も運び出して、行政の環境美化部門の協力で処理した。

 「その人が住民から排除されないよう気を配る。片づけた後、どういう支援をするかも大きな課題」という。

 高齢者を中心に独り暮らしの人が増える中、問題の発見にも解決にも住民の力が欠かせない。そこで地域の会合やふれあい喫茶などにこまめに足を運び、顔の見える関係をつくる。気になる人への「お元気ですか訪問」に、地元の人たちとともに取り組む。

 小野達也・大阪府立大准教授(地域福祉)は「住民参加の地域福祉は日本で生まれた考え方。大阪は小学校区ごとの福祉委員会など住民活動の基盤があり、CSWが力を発揮している。全国のモデルの一つになっている」と話す。(編集委員 原昌平)

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