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抗がん剤治療 患者の美容支援

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笑顔よみがえるメイク

美容で前向きに。化粧の仕方をアドバイスする山崎さん(20日、聖路加国際病院で)=伊藤紘二撮影

 抗がん剤の治療を受けると、髪の毛が抜けたり肌が荒れたりして、人目を避けたくなる。

 ふさぎこみがちな患者に美容のサポートを行い、見た目も気持ちも自分らしさを取り戻してもらおうという活動が、聖路加国際病院(東京都)で始まっている。

 抗がん剤でまつ毛が抜けた女性(43)の上まぶたの輪郭を、美容ジャーナリストで講師役の山崎多賀子さんが専用のペン(アイライナー)で描いていく。「黒目がはっきりして目ヂカラが戻ったでしょう」というと、参加したほかの女性から「つけまつ毛がなくても、顔に違和感はないよ」と声が上がり、話に花が咲いた。

 がんを治療する女性対象の美容講座「ビューティ・リング」の一幕だ。同病院が山崎さんのほか、美容師、ネイリストなど美容の専門家と連携して開催、今月20日は乳がんの女性3人が同病院の一室に集まった。

 この日はメイクの講習に先立ち、同病院の看護師が、肌が乾燥して紫外線などの刺激に弱くなる、などの抗がん剤による皮膚への影響やその仕組みを解説。外出時の日焼け止め、洗い物での手袋の利用を勧めた。

 看護師の説明を踏まえ、山崎さんは「肌にたっぷりと保湿クリームを塗ります。ツヤが出ます」と助言。保湿によって病気で暗くなりがちな表情を生き生きとみせ、肌の防御機能も高まる、と説いた。「男性も保湿は重要」と加えた。

 山崎さんは9年前に乳がんが見つかった。治療中に身につけた、まつ毛の脱毛など外見の変化に対応し表情を明るく見せるメイクの方法を伝えている。

 元気な笑顔を作るコツに力点を置く。鏡に向かって笑顔を作り、ほおの盛り上がった場所に、ほお紅を入れるやり方だ。

 がん患者は病気や外見の変化から精神的に傷つき、表情が乏しくなりがち。部屋にこもる人もいる。鏡に向かっての笑顔作りは、そんな患者に、笑う表情を思い出してもらう効果も狙う。患者が笑うようになれば、心配していた家族が安心して外出に誘えるようになる。

 医療技術が進み、抗がん剤治療を入院せずに通院で受けられるようになってきた。治療しながら働く人が増え、職場で過剰に気を使われたくない思いも強い。この日のある参加者は「子供の送迎で知人に治療を気づかれたくない」と打ち明けた。だが、多くの病院は患者の日常生活へのケアにまで手が届いていない。

 そんな状況を変えようと、同病院ブレストセンター長の山内英子さんらは2012年11月から、美容の専門家の協力を得て、入通院患者の相談に応じ始めた。心の健康の専門家で看護師の池田真理さん(東京大助教)が協力し、今年2月からは参加者同士が美容の工夫をきっかけに日常の悩みや不安を語り合う時間を交え、3回コースにした。この日の参加者からは「メイクと医学上の話の両方をその場でできて安心」「参加者同士が同じ感覚で気軽に話せる」と好評だった。

 外見が変わるのを嫌って治療を受けない患者には、美容で前向きになってほしいという。池田さんは「患者が医療機関で、治療と合わせて身も心も美しくなるケアを、当たり前に受けられるような環境を作っていきたい」と話している。(米山粛彦)

 抗がん剤による皮膚への影響 
 新陳代謝の盛んな皮膚の一部がダメージを受け、皮膚の再生能力がにぶる。同時に皮膚を保湿、保護する液体を出す組織も働きが弱まる。この結果、肌が乾燥し、バリア機能も低下する。
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