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ネット依存 大人に拡大

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「つぶやき」止まらない

 インターネットから離れられない「ネット依存」が、社会人や主婦など大人にも及びつつある。

 絶えずスマートフォンに触れているうちに、依存に陥ることもある。ネットの利用状態について、正しく自覚したい。

 東京都内の主婦(48)は2年ほど前から、ツイッターをするために、スマホが手放せない日々が続いている。共通の趣味をもつ人たちと互いに「フォロー」しあい、日中から深夜まで「つぶやき」を交わす。夕方の買い物の最中も、つい画面を見てしまうようになった。自分のつぶやきへの反応が気になり、熟睡できない日もあるという。

 そうした日は翌朝、夫や子どもを送り出すと、昼過ぎまで再び寝てしまい、家事を怠ることもある。「初めは単純にやりとりを楽しんでいたが、最近は束縛されているようで息苦しさも感じる。でも、やめられない」と打ち明ける。

 インターネット利用がやめられない人が増えている。そのために日常生活に支障をきたすこともある。アルコール依存のような肉体的な禁断症状はないが、使用を抑えられないなど共通点が多い。未解明な部分も多く、精神医学では研究が進められている。

 従来、ネット依存は、ゲームをする未成年に多いと言われてきた。しかし、厚生労働省の研究班が昨年、20歳以上の4153人に実施した調査によると、男性の4・5%、女性の3・5%が、ネットの利用状態に問題があり、ネット依存の傾向があるとされた。国内全体では、5年前の1・5倍にあたる約421万人にのぼると推計される。

 スマホは使用場所を問わないため、通勤中や家事、仕事の間などにも絶えず、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などを利用しているうちに、依存に陥ってしまう恐れがある。

 国立病院機構・久里浜医療センター(神奈川県)でネット依存外来を担当する中山秀紀さんは、「スマホの普及がさらに進めば、依存する人も増えていくと思われます」と話す。

 どのような状態をネット依存とするか、まだ明確な線引きはないが、「寝不足になったり、食事がおろそかになったりして、生活や仕事に支障が出ていれば、ネット依存とみていいでしょう」と中山さんは説明する。

 依存状態かどうかを自己診断するのに参考になるものとしては、米国の研究者が作成したものから、同センターが抜き出した5項目の設問=別表=がある。あてはまる項目が多いほど、依存状態にある可能性が高く、注意が必要だという。

 スマホの使いすぎが身体に与える弊害も見逃せない。

 頭痛外来のある山王クリニック(東京)ではここ数年、外来患者が急増している。問診の結果、多くの人が長時間、スマホを使っていた。「仕事も含め、スマホとパソコンを1日に15時間以上使っている人もいました」と、同クリニック院長の山王直子さん。

 山王さんによると、慢性的な頭痛の多くは、スマホの使い過ぎが症状を悪化させるという。「画面の光による刺激は頭痛に悪影響を与えます。下を向いてスマホを使うのも、首や肩の筋肉や神経が緊張し、頭痛の原因になります」

 スマホはもはや生活に欠かせない存在。それだけに、自分が適切に使用しているかどうか、把握する必要がある。

スマホを手に四六時中…自分なりのルール必要

スマホの電源を切って読書に臨んだ「スマダン読書会」(栃木県那珂川町で)=宇都宮読書会提供

 ネット依存にならないためには、スマホの使用にもメリハリをつけることが必要だ。休日などにスマホから離れる日を設けたり、一定の時間帯にはスマホの使用を控えたり、といった取り組みが考えられる。

 宇都宮市の読書サークル「宇都宮読書会」は、今年6月と9月の2回、「スマダン(スマホ断食)読書会」を試みた。10人ほどが、静かな研修施設に集まり、午前11時から午後5時まで、スマホの電源を切って、読書を楽しんだ。

 きっかけは、「スマホに時間をとられ、読書の時間がとれない」「スマホでSNSやメールの返信をするため、読書に集中できない」といった声が上がったこと。2回とも参加した会社員の横山浩紀さん(38)は、「スマホと離れることで、本とじっくり向き合う雰囲気を作り出すことができました」と振り返る。来春には、泊まりがけの「スマダン合宿」も計画しているという。

 日常生活では、未明までSNSを続けるといった際限ないスマホ使用は控えたい。スマホの安心使用を奨励しているNTTドコモCSR部長の川崎博子さんは「自分なりの使用ルールを定めてください。特に子育て中の人は、子どもの模範になるよう、率先して取り組んで」と呼びかける。

 例えば、午前0時から朝まではスマホに触らない、休日は通話以外は利用を控える、といったルールなら取り組みやすいという。

 ドコモの一部のスマホでは、メールやツイッターなどのアプリを利用する時間帯を、曜日ごとに制限できる「あんしんモード」という無料アプリを利用できる。本来は青少年向けのサービスだが、年齢に関係なく利用可能。「良くないと思いながらも、ついスマホに触れてしまう、と自覚している人は、利用を検討してみては」と川崎さん。ソフトバンクも有料で同種のサービスを提供している。

 また、予備のバッテリーや充電器を持ち歩かない手もある。電池切れになれば使えなくなるため、おのずと使いすぎを防げる。

 他人とのやりとりを、スマホに頼りすぎないことも重要だ。精神科医で銀座泰明クリニック院長の茅野分ちのぶんさんは、「人間関係を良好に保つため、なるべく顔を合わせてコミュニケーションをとるようにしましょう。他人とのトラブルからネット依存に陥り、さらに人間関係が悪化するといった悪循環も防げます」と話している。(田中左千夫)

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