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(下)相談室の看護師 不安解消

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 甲状腺の働きが活発になり過ぎる「バセドウ病」を始めとした甲状腺の病気は、長期間の治療が必要な場合も多く、患者は日ごろから様々な悩みを抱えがちだ。甲状腺の病気を専門的に診る隈病院(神戸市中央区)では、経験豊富な看護師が患者の相談に応じる「医療相談室」を設置、不安の解消に努めている。

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新田さん(右)は「患者に寄り添い、不安を和らげたい」と話す(隈病院の医療相談室で)

 医療相談室が設けられているのは、隈病院3階の一角。看護部長の新田早苗(46)ら4人のベテラン看護師が、バセドウ病などの患者からの相談に応じている。

 バセドウ病は、細胞を活発に働かせる甲状腺ホルモンの量が過剰になり、動悸どうきや息切れ、大量の発汗、体重の減少、疲労感などの症状を引き起こす病気だ。女性に多い。

 治療は、甲状腺ホルモンの産生量を減らす薬を服用するのが基本だ。定期的に医師の診察を受けながら、少なくとも2年間は服薬を続ける必要があり、さらに長引くことも少なくない。その場合、手術で甲状腺の一部を切除したり、医療用の放射性物質で治療したりすることもある。

 相談に来るバセドウ病患者の質問で多いのは、「ワカメや昆布を食べてはいけないのか」というものだ。

 ワカメや昆布は、甲状腺ホルモンの原料となる「ヨード」を豊富に含む。そのため、バセドウ病患者が食べると、甲状腺ホルモンが増えて症状が悪化するので一切食べない方がよいとの情報が、インターネット上などで見られる。だが、常識的な食事量であれば、摂取されるヨードの量も知れている。「気にせずに食べて問題ない」と新田は言う。

 「治療中に妊娠・出産できるのか」と悩む女性患者も多い。ネット上では、殊更に危険視する意見もみられるが、新田は「専門医の指導の下で治療を受けて症状を安定させれば、健康な人と同じように子どもを産める」と励ます。

 ネット上には、いいかげんな情報が少なくない。「専門家にしっかり確認してほしい」と呼びかける。

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 「とてもしんどいのに家族や職場の人がわかってくれない」。患者の多くが、そんな悩みを抱えている。

 服薬治療の効果で症状が和らぐと、元気になったように見えるが、体調には波がある。つらい時に「家事や仕事を怠けている」などと心ない言葉を投げつけられ、傷つく。相談室で、泣きながら胸の内を明かす患者もいるという。

 そんな時は、じっと耳を傾け、共感するよう心がけている。相談後、「気持ちが楽になった」と、穏やかな表情で帰途につく姿を見るたび、社会の病気への理解を広げる大切さを痛感する。「身近にいる人は、患者の心に寄り添い、支えてあげてほしい」と願う。(敬称略、竹内芳朗)

 

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