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隈病院 甲状腺治療

深化する医療

(中)嚢胞 手術せず針刺し消滅

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ペイト治療の方法を説明する福島さん。「治療後の経過観察はしっかりと続けてほしい」と話す(神戸市中央区の隈病院で)

 甲状腺に血液成分などの液体がたまった袋状の組織(嚢胞のうほう)ができる「甲状腺嚢胞」という病気がある。従来は手術が必要だったが、ここ10年あまりで、皮膚の上から針を刺して嚢胞を縮小させるペイト治療が、徐々に広がっている。手術に比べ患者の負担が非常に軽いのが特徴で、甲状腺の病気を専門的に治療する隈病院(神戸市中央区)でも取り入れている。

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 甲状腺嚢胞の正体は、多くは良性腫瘍。命を脅かす心配はほとんどない。小さい嚢胞は皮膚の上から触っても分からないが、大きいと硬いしこりになる。普通は痛みはない。

 嚢胞ができても、がんが見られず、小さくて症状や見た目の問題がなければ、治療の必要はない。だが、大きくなると、周辺の組織が圧迫され、食べ物をのみこむ際に違和感があるなどの症状が出るほか、外見的に目立つようになる。この場合、治療の必要が生じる。

 まずは注射針で液体を抜くのが一つの手段だが、しばらくすると再び液体がたまることが多い。根本的に治すためには、以前は入院し、手術で切除するしか方法がなかった。

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 甲状腺嚢胞に対する新たな治療法として、国内で広がって来たのがペイト治療だ。2002年に健康保険の適用が認められた。

 まずは超音波で嚢胞の位置を確認し、狙いを定めて皮膚の上から針を刺し、液体を抜く。その後、アルコールを注入。その作用で袋状の嚢胞を構成する細胞を壊死えしさせ、再び液体がたまらないようにする。

 隈病院でこの治療を受け持つ外科医長の福島光浩(48)によると、入院の必要はなく、治療そのものは1分程度で終わる。「手術を受けなくても、短時間の治療で症状が治まり、外見もきれいになる」と長所を説明する。

 ただし、効果は個人差が大きい。1回の治療で済む人もいるが、複数回の治療でようやく治る人、何度治療を受けても液体がたまってしまう人もいる。

 福島は「誰にでも確実な治療ではない。『手術を受けずに済んだら幸運』という心持ちでいてほしい」と話す。なお、嚢胞が非常に大きい場合はペイト治療の効果は低く、最初から手術が勧められるという。

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 甲状腺の腫瘍には、悪性腫瘍(がん)のほか、甲状腺嚢胞のような良性の腫瘍も数種類ある。1~数個のしこりができ、首が腫れるなどする「結節性甲状腺腫」や、痛みを伴わないしこりがゆっくりと成長する「濾胞ろほう腺腫」なども良性腫瘍だ。

 良性と悪性は、組織の一部を採取する検査などを行って区別するが、検査の精度には限界がある。当初は良性と診断されても、後に悪性と分かることもある。福島は「定期的な経過観察をしっかりと受けてほしい」と呼びかける。(敬称略、竹内芳朗)

 
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