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超高齢者の老年的超越…自然体、老い受け入れる

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内面の充実、高い幸福感

血圧の測定を受ける木村次郎右衛門さん(左は慶応大の広瀬信義さん)=2012年12月、吉野拓也撮影

 誰もが避けることのできない老い。身体の機能が衰え、社会とのつながりも薄れていく中、85歳以上の超高齢者たちは、老いをありのままに受け入れ、心の内面を充実させることで、幸福感を高めていることが、100歳以上の百寿者を対象とした調査などからわかってきた。「老年的超越」と呼ばれ、注目を集めている。

 「自然のままに生きる。自然が一番。思い出したり、忘れたりの繰り返しで、今は忘れることが多くなりました。年はとりたくないが、それも自然のなすこと」

 昨年6月、確かな記録が残る男性としては、史上最高齢の116歳で亡くなった京都府京丹後市の木村次郎右衛門さんは生前、長寿の秘訣ひけつとして「自然体」を強調していた。

 「ありがとう。みなさんのお陰で呼吸を続けています」。ユーモアと周囲への感謝の言葉を忘れなかった。機嫌がいいと、「サンキュー・ベリー・マッチ」と得意の英語も飛び出した。

 800人以上の百寿者を調査した慶応大の広瀬信義さんは「感謝の気持ちを忘れず、いつも前向きで、老いを自然体で受け止めている人が多い。木村さんはその典型だった」と話す。

 高齢者が合理的、自己中心的な思考から解放され、自然とのつながりを感じ、老いを受け入れるように価値観が変わることを、スウェーデンの社会学者のトルンスタムさんは「老年的超越」と名付け、高齢者の幸福感につながると指摘した。

 東京都健康長寿医療センター研究所の増井幸恵さんは、日本人の老年的超越について調べ、〈1〉生と死を近く感じる〈2〉先祖とのつながりを感じる〈3〉自然体で生きる〈4〉周囲へ感謝の気持ちを持つ〈5〉内面への意識が高まる――などの特徴を明らかにした。

 「人のありがたさを実感する」「一人でいるのも悪くない」「自分の人生は意義があった」「細かいことが気にならなくなった」など27の質問で、70~90歳代の2200人の老年的超越の度合いを調べたところ、70、80、90歳代と年齢を重ねた人ほど高くなることがわかった。本人の健康状態はあまり関係なく、女性の方が老年的超越の度合いが高かった。

 「一人でいることの良い面に注目できる」「見えを張らない」「無理をしない」という傾向のある人ほど、身体の機能が低下しても、幸福感を高く保てる傾向があった。

 増井さんは「元々の性格もあるが、『老年的超越』は高齢になると誰もが経験する心の変化で、老いを受け止める準備なのではないか」と推測する。

 高齢者の幸福感については、「健康状態を保ち、社会貢献的な活動を維持することが幸せな老いにつながる」という考えが欧米を中心に主流だった。

 しかし、増井さんは「元気な60~70歳代と80~90歳代では、幸せが違うのではないか」と指摘。「老老介護が増えているが、90歳代の親に『生涯現役』の価値観を押しつけて、頑張らせ過ぎないことが大切。一人で思索できる時間を作ってあげることも必要」と助言する。(杉森純)

◇       ◇        ◇

 ◆百寿者の幸福感 広瀬さんや増井さんが調査した百寿者のエピソードには、「老年的超越」をうかがわせるものが多い。

 105歳の東京の女性は介護が必要な状態になっていたが、「娘の話し相手になれる」と自分の価値、役割を見いだしていた。幸せについて、113歳の広島の女性は「年をとるのは自然。若い頃より幸せか不幸せかと考えるのは意味がない」、108歳の岡山の女性は「子供には子供の、親には親の幸せがある」。111歳の東京の女性は「心配や気になることがあっても気にしない」といつも話している。

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