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代々受け継いだ弁慶役

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 幼い頃からずっと憧れていた弁慶の役を、祖父(初代松本白鸚)の「三十三回忌追善」となる今回の公演で、初めて演じます。曽祖父(七代目松本幸四郎)、祖父、父(九代目松本幸四郎)と代々受け継がれてきた、家にとって大事な役です。

 弁慶役については、「(細身の)自分には合わないのでは」と悩んだこともあれば、「できなければ、高麗屋(幸四郎家の屋号)や染五郎を名乗る意味はない」と自らを鼓舞したこともあります。41歳の今、弁慶を演じられる喜びと大きな責任を感じ、身が引き締まる思いです。

 父には、「あまり思い詰めないように」とアドバイスされましたが、家族の間には、言葉を必要としない強い信頼関係があると思います。両親は、芝居でも何でも、「いつかできるようになる」と信じ続けていてくれる存在。自分も、長男(四代目松本金太郎)に対する気持ちは同じですから。歌舞伎の世界を息子と共有できるのはとてもうれしく、全てを教えたい。休みの日に家族で、息子も大好きな焼き鳥や、回転ずしを食べに出かけるのもまた、楽しい時間ですけどね。

 曽祖父や父は、弁慶を1000回以上演じました。今回の自分の公演は全25回ですが、千秋楽の後、「26回目も」と言われるよう精進したい。それが、弁慶役者として世に受け入れられ、父の期待に応えることにもつながると思います。(聞き手・石原毅人、写真・三浦邦彦)

 市川 染五郎(いちかわ そめごろう)さん 歌舞伎俳優。1973年生まれ。東京・歌舞伎座の公演「吉例顔見世大歌舞伎」(11月1日~25日)で、「勧進帳」の武蔵坊弁慶役を初めて演じる。

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