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1類感染症…エボラ出血熱の警戒高まる

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 西アフリカ地方でのエボラ出血熱の流行が拡大しています。米国やスペインでは帰国後に発症した例があり、日本でも万が一の患者発生に備えた警戒体制が強まっています。

 国は感染症法に基づき、エボラ出血熱や天然痘、ラッサ熱など、致死率や感染率の高い7つの感染症を「1類感染症」と定め、患者が発生した場合に受け入れる医療機関を定めています。国が指定する「特定感染症指定医療機関」(国立国際医療研究センター病院など3か所)、都道府県が指定する「第1種感染症指定医療機関」です。

 ところが各都道府県に1か所以上の設置が求められている第1種指定医療機関は現在、38都道府県に44か所(うち2か所は「特定」と重複指定)ある一方、青森、秋田、宮城、石川、香川、愛媛、大分、宮崎、鹿児島の9県では、未指定のままになっています。

 指定を受けるには、ウイルスが漏れないような細かな規定が定められた陰圧の個室病床が整備されていることや、感染症の専門医がいることなどの要件があります。施設の整備費用は国、県から全額補助されますが、通路など共用部分にかかる整備費用の負担や専門医の確保が難しいことなどに加え、地域の理解を得られていないことも、整備が進まない理由のようです。

 検査や研究を行う施設も未整備です。エボラ出血熱ウイルスなど第1種感染症の病原体を扱える「BSL(Biosafety Level)4」対応として整備された国立感染症研究所の施設(東京・武蔵村山市)は、住民の反対でBSL4施設としての運用は行っていません。もし国内でエボラ出血熱の患者が出ても、現状ではウイルスを分離して保管することはできず、対策のための研究も大きく制限されます。

 1999年の感染症法施行から15年。放置されてきた様々なツケが、今回のエボラ出血熱流行によって明らかになってきました。(田村良彦)


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