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いい湯で健康 温泉と自然療法

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温泉の適応・禁忌症(その1)禁忌から「妊娠中」削除

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 1948年に制定された温泉法では、その第18条(温泉の成分等の掲示)に「温泉を公共の浴用又は飲用に供する者は、施設内の見やすい場所に、環境省令で定めるところにより、次に掲げる事項を掲示しなければならない」とあり、「1.温泉の成分、2.禁忌症、3.入浴又は飲用上の注意、4.前三号に掲げるもののほか、入浴又は飲用上必要な情報として環境省令で定めるもの」と記載されています。

  気づかれましたか? ここには「適応症を記載しなさい」とは書かれていないのです。では適応症は、どの様な経緯で掲示されるのでしょうか。実は法律では規定されておらず、最近までは、環境庁(当時)自然保護局長から都道府県知事宛てに送付された通知に含まれていたのです。ですから、適応症の掲示は知事の裁量に任されていたのです。

 温泉の適応・禁忌症は、専ら経験則に基づくものとされていますが、文献的に確認されているものも多数あります。日本温泉気候物理医学会では、環境省の要請を受けて適応・禁忌症に関する文献の調査を行い、その結果を環境省へ提出しました。それを受けて環境省はパブリックコメントを募集したのち、今年の7月1日付で新しい適応・禁忌症を都道府県知事、保健所設置市長、特別区長へ向けて、環境省自然環境局長名で通知しましたhttp://www.env.go.jp/nature/onsen/docs/kyokucho.pdf。この通知は地方自治法に基づいた「技術的助言」なのだそうです。

 この新しい通知を見ると、適応症の掲示については、「…必要に応じて定める手続きを経ることとする。また、掲示内容の決定に際しては、都道府県等は専門的知識を有する医師の意見を聴くことを原則とすることが望ましい」とされており、さらに、「その掲示の内容については引き続き知事の判断に委ねることとしていること」と記載されており、やはり掲示義務はないのです。

 温泉の一般的禁忌症(浴用)で大きく変わったのは、「妊娠中(とくに初期と末期)」が削除されたことです。下呂温泉(単純温泉)での調査では、温泉入浴は妊娠経過に悪影響を及ぼさず、生まれてきた新生児の健康状態も変わらなかったことが論文報告されています。しかし逆に、温泉入浴で流産頻度が増加し、新生児の健康状態が悪かったというような報告は今までありませんでした。

 温泉入浴は、健康な方でも長湯によるのぼせ、滑って転ぶ、酸性泉入浴での温泉ヤケド等々、好ましくない事象が生じることがあります。妊婦さんでしたら、これらのことに人一倍注意を払う必要があるとは思いますが、「それだからといって温泉入浴をしてはいけない」ということにはならないのです。

 妊婦さんもこの新しい浴用の注意事項を守って、温泉入浴を楽しんでください。

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いい湯で健康 温泉と自然療法_大塚吉則_顔120px

大塚吉則(おおつか よしのり)

北海道大大学院教育学研究院教授

 

1955年、北海道生まれ。79年、北海道大医学部卒、第1内科に入局。89年から米ニューヨーク市のコーネル医科大に留学。北海道大病院登別分院・医学部附属温泉治療研究施設(温研)勤務などを経て2007年から現職。国際温泉気候医学会(ISMH)アジア・オセアニア地区代表、日本温泉気候物理医学会理事長、日本生気象学会幹事、NPO健康保養ネットワーク理事長。主な著書に「新版温泉療法 温泉と自然が生み出す健康づくり」(Crews)、「そもそも、すべてが『体質』のせいなのか? 自然治癒力を引き出し幸せになる方法」(Medical Tribune)など。

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1件 のコメント

どうかなあ

あいうえお

ネズミの実験では42度15分の温浴で妊娠時期により異常が出ます。まあ、人間だったら5時間くらいにあたるから、通常は問題ないんでしょうけどね。

ネズミの実験では42度15分の温浴で妊娠時期により異常が出ます。まあ、人間だったら5時間くらいにあたるから、通常は問題ないんでしょうけどね。

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