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新生児集中治療室…早産児の発達促すケア

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痛み、ストレス軽減

 早産児が入院する新生児集中治療室(NICU)。痛みを感じやすく、成長するにつれて、落ち着きがないなど情緒の問題を抱えやすいことがわかってきた早産児へのケアが広がっている。

 今月中旬、東京都立墨東病院のNICU。高崎結太ゆうたちゃんが、お湯をはった洗面器につかっていた。母久美さん(39)が、保育器に両手を入れ、ガーゼで優しく体を拭く。隣で、看護師の大竹洋子さんが、結太ちゃんをじっと見つめていた。

 早産児の脳の発達や家族の絆作りを促すプログラム「ニドキャップ」の一コマだ。米国の心理学者が開発した。早産児の行動は、音や光といった環境や、ケアで受ける刺激への反応と考えて、まずはよく観察する。観察後、一連の行動から、ストレスで不安定になっているか、どう乗り越えようとしているかを評価し、痛みやストレスを減らす具体的な提案までリポートにまとめる。看護師や家族が、言葉で訴えられない子どもの心を理解し、処置やケアを見直すきっかけになる。

 日本では2010年から普及が始まった。同病院では、大竹さんと同僚の内海加奈子さんが、実践できる認定資格を得た。

 観察を終え、大竹さんが、久美さんに声をかけた。「もく浴の準備で、痛くて大泣きしていましたね」

 担当の看護師が、顔のテープをはがした時だ。とっさに久美さんが、両手を結太ちゃんのほおに添えた。

 「ほっとした顔になりました。タオルで全身を包んだり、一度、抱き上げてみたりしても落ち着きます」

 大竹さんは、湯上がりに口をもぐもぐする様子も注目した。医師が、おしゃぶりを口にあてると、勢いよく吸い、呼吸も安定した。

 「少しの助けがあれば、自分で気持ちを整えられる強さを持っています」

 久美さんは、「しぐさや表情の意味がよくわかりました。結太をよく見て、求めに応じていきたい」と力強く話した。

 患者の気持ちに応え、ストレスや痛みを減らす――通常の医療現場では当たり前のことも、NICUではようやく最近、本格的な取り組みが始まった。

 昨年12月、NICUの関連学会のメンバーらが、痛みを伴う処置をできる限り減らす必要性を訴える声明を発表。現在、痛み緩和の指針を策定中だ。

 背景には、早産児の発達に関する研究の進展がある。NICUで治療を受ける妊娠22週以降は、学習や相手の心を読み取る脳の機能が急速に発達する重要な時期だとわかった。

 早産児は退院後も、感覚が過敏だったり、注意欠陥・多動性障害など情緒の問題が起こりやすくなったりするとの研究も報告された。国立精神・神経医療研究センター知的障害研究部診断研究室長の太田英伸さんは、「情緒の問題は、遺伝や養育環境など様々な要因が絡む。NICUでの処置で受ける過剰なストレスとの関わりも否定できず、さらに研究が必要だ」と指摘する。

 40年以上、新生児医療に携わる東京女子医大名誉教授の仁志田博司さんは、元気に退院した早産児が、集団生活になじめず苦労する姿に幾度となく接してきた。「NICUは、救命や体の障害の軽減に一定の成果をあげたが、心を育む視点が不十分だった。痛みやストレスを減らし、発達を促すケアをさらに普及させたい」と話している。(中島久美子)

 早産児 
 妊娠22週以降、37週未満で生まれた赤ちゃん。低体重や、呼吸などの機能が未熟で、感染症にもなりやすい。国内で増加傾向にあり、現在、年間出生児の約6%にあたる。
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