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専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話

yomiDr.記事アーカイブ

「物わかりがいい患者」はやめよう

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 前回は離脱症状の話をしました。

 身体がその薬剤を必要としている状態―身体依存―で急に薬剤を中止すると、そのような離脱症状が出る可能性があるのです。

 前回私自身が経験したステロイドの離脱症状のお話をしました。

 離脱症状を起こさないとされる2週間程度の短期使用であったにもかかわらず、そのように離脱症状を来すこともあります。ですから、何年もステロイドを使用するような疾病の方が、医師の指示なしに突然ステロイドを中止したらどうなるかは、想像に難くありません(→ステロイドホルモンが枯渇しているために起こる副腎不全という病態を形成し得ます)。

 このように絶対、医師の指示なしではやめてはいけない薬があります。

 私は緩和医療で医療用麻薬もステロイドもよく使用します。

 その恩恵とすばらしさと、一方で誤った使い方をした場合の弊害もよく知っています。使うべき時に使わない、やめるべきではない時にやめる、ということが重要です。

 このような事情があるために、外来通院中の患者さんには、「調子が今一つで薬剤を減らしたい、中断したいという場合は自己判断しないで必ず電話ででもまず相談してください」とお伝えしています。医師の指示のない自己判断での中断はやめていただくようにお話ししています。大切な薬剤のいきなりの減量や中断は不利益をもたらすことがしばしばあるからです。

 しかし、どれだけそうは言っていても、次回の外来で

 「あの薬、1回飲んで調子悪くなったので飲んでいません」
 「調子が良いので、あの薬を1日3回から2回に減らしました」

 と悪びれずにお伝えいただくこともまれではありません。

 「ちゃんと連絡してください」とお伝えして、さらに急きょ相談しても敷居が低いように配慮しているにもかかわらず、そのような事例は時々あるのです。

 確かに怖いあるいは怖そうな先生には伝えにくい、という事情は臨床上よく見かけられます。無視し得ない現実です。「怒られるのが怖い」と飲んでいることにして済ましていた方も何人も知っています。あるいは忙しそうな外来において、よく言えば先生を手間取らせたくない、「良い患者=物わかりが良い患者」でありたい、などの気持ちがあるのでしょうし、悪く言えば、「はいはい」と聞くことでさっさと終わらせたい、というような場合もあるのかもしれません。

 以前私は在日米国人の患者さんと接して驚いたことがあります。処方した2つの胃薬に関して、丹念に効き方や作用の仕方まで含めて用法・用量を聞いていかれたのです。自分の体に入るものは、自分でしっかり理解してから服用するし、そう思えないならば納得いくまで質問するという姿勢が明確で、日本人の標準的患者さんとは大きな違いがあったのです。

 これからの医療では、「良い患者=物わかりが良い患者」ではありません。わからないことはしっかりと医師に聞き、効き方をていねいに説明してもらって理解して服用し、勝手に中断せず万事について相談する、効かない場合は伝え方に配慮しつつも効かないことをしっかりと伝えるなど、医療者だけではなく患者さんやご家族もやらねばいけないことがあります。

 ただ、それが当たり前になることで、医療者には薬効をきちんと評価し、また不要な処方を削減できるという利点が与えられ、それがゆえに患者さんにも本当に必要な薬剤のみを服用することで「メリット最大・デメリット最小」にできるという利点が与えられることになるでしょう。

 その薬、本当にやめていいですか?

 まずは主治医に尋ねること。どうかよろしくお願いいたします。

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専門家に聞きたい!終末期と緩和ケアの本当の話_profile写真_大津秀一

大津 秀一(おおつ しゅういち)
緩和医療医。東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター長。茨城県生まれ。岐阜大学医学部卒業。日本緩和医療学会緩和医療専門医、がん治療認定医、老年病専門医、日本消化器病学会専門医、日本内科学会認定内科医、2006年度笹川医学医療研究財団ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。内科医としての経験の後、ホスピス、在宅療養支援診療所、大学病院に勤務し緩和医療、在宅緩和ケアを実践。著書に『死ぬときに後悔すること25』『人生の〆方』(新潮文庫)、『どんな病気でも後悔しない死に方』(KADOKAWA)、『大切な人を看取る作法』『傾聴力』(大和書房)、『「いい人生だった」と言える10の習慣』(青春出版社)、『死ぬときに人はどうなる』(致知出版社)などがある。

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