文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

ニュース・解説

精神科入院 減らそう(2)管理が患者の意欲奪う

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

NPO法人 大阪精神医療人権センター 副代表 山本深雪氏

やまもと・みゆき うつ病で20代の時に自殺未遂、30代の時に精神科への入院を経験。1992年から人権センター事務局で精神障害者の人権擁護に力を注いできた。61歳。


 かつて大阪の大和川病院で行われていた暴力、人権侵害、劣悪医療の実態を追及した。1997年に廃院処分になった後、精神科病院の風通しを良くしたいと考え、大阪府内で「ぶらり訪問」を始めた。

 それが発展する形で2003年、大阪府に精神医療オンブズマンという全国初の公的制度ができた(現在の名称は療養環境サポーター)。私たち外部の人間が、カギのかかった閉鎖病棟まで訪れ、患者の声を聞いて病院の改善に役立てる取り組みを続けてきた。

 活動の中で感じるのは、病院が患者の意欲や力を奪っていることだ。家に帰らせてほしいと懇願しても「病状が悪いから無理」「もう少し良くなるまで」と、あきらめを強いられる体験を重ねる。

 看護職員の姿勢に問題が大きい。患者を集団として管理する意識が強く、事故防止を優先して、とにかく刺激を与えないという発想だ。いまだに友人の面会を認めない病院もある。好きな人に会いたいという自然な感情まで、良くないことと扱われる。

 そして入院した人は、他の患者が保護室(隔離室)に連れて行かれる様子、身体拘束される様子も見る。言いたいことを言えなくなり、職員に従う自分を作り出していく。

 そもそも精神障害者に一般の人々はどんなイメージを抱いているのか。会話が成立しない人? 常に興奮している人? 私も学生時代はそう思っていたが、自分が入院してみて「何や、普通の人たちやん」と思った。

 急性期はせいぜい1か月。6か月以上になると家族も本人も病院生活に慣れてしまう。急性期の症状が取れたら退院するのが本来の医療だ。厚労省が新規入院の患者は原則1年以内に退院させるとしたのは一定の前進だった。

 長期入院している人たちもけっして病状が重いわけではない。公営住宅を含めて空き家は膨大にあり、サポートとつながれば地域で暮らせる。

 今年、長期入院患者の退院支援など「地域移行」に関する厚労省検討会の議論ではっきりしたのは、入院患者が減らない根本原因が病院の経営上の理由であること。ベッドを埋めないと経営的に困るから、患者を手放したがらない。だからベッドを減らすことが肝心だ。

 残った病棟の診療報酬を一般科並みに上げれば、空いた病棟を居住施設にしなくても経営は維持できる。純粋な病床削減に補助金を出すのも長期的には得策だと思う。

 地域移行を本気で進めるために欠かせないのは、病棟に外部の人間が出向く仕組み。地域ごとに権利擁護事務所をつくり、入院経験のある仲間の力も借りて患者の権利を守り、退院を支援する。すべての精神科病院に週1回派遣できれば、大きく変わる。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事