宋美玄のママライフ実況中継
医療・健康・介護のコラム
虐待死を防ぐために…妊婦の社会背景つかむ努力を
今週から娘の保育園のクラスがひとつ上がりました。自分でできることが多くなって成長を感じますが、「まだ前のクラスが良かった」と毎朝ぐずっています。通園途中に座り込んだりするのですが、叱っても絶対に動かないので、ものすごく通園に時間がかかります。お友達もたくさん一緒に進級したので、早く慣れてほしいです。
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少し前の報道ですが、
子供虐待死51人 0歳児4割 「出産前支援」広がる 12年度調査 (2014年9月19日 読売新聞) 厚生労働省は19日、2012年度に虐待を受けて死亡した子供は51人(前年度比7人減)だったと発表した。0歳児が全体の4割を占め、生後間もない新生児が犠牲になるケースも依然として多い。幼い命を守ろうと、自治体や民間団体では、出産前から妊婦を支援する動きが広がりつつある。 厚労省の発表によると、虐待死した51人のうち、0歳児は22人(43%)で、半数の11人は生後24時間以内に自宅などで死亡していた。このほか、無理心中で39人(前年度比2人減)の子供が亡くなった。虐待死での加害者は、実母が38人(75%)で最も多く、実父が3人(6%)で続いた。(中略) 過去の調査でも、新生児が虐待の犠牲になるケースが目立っている。13年3月までの約9年半の間に虐待死した546人のうち、2割の111人は生後1か月未満の新生児だった。望まない妊娠だったケースが多く、自宅での出産が半数を超え、医療機関での出産は1割に満たなかった。(中略) 助産師らによる相談窓口を設ける自治体も増えている。大阪府が11年10月に始めて以降、静岡県、三重県のほか、今年に入って名古屋市や宮崎市でも始まった。 |
「望まない妊娠」が虐待に…
児童の虐待死が約9年半で546人に確認され、2割が新生児だったこと、半分以上は実母によるもので「望まない妊娠」などが背景にあるという報道です。「望まない妊娠」が虐待につながるというのは知られていますが、「バースコントロール、性教育の充実を」という方向に話が向かうことが多いです。それも非常に重要な話ですが、そこが強調され過ぎると妊娠という結果になった時点で「過ち」「自己責任」として扱われてしまい、授かった赤ちゃんに目が向けられなくなってしまいます(子供の貧困、「親の自己責任論」で片づけないで にも関連することが書いてあるので読んでみてください)。
この記事が出た時に、他紙の報道で「母親の約9割は妊娠届を提出せず、母子健康手帳も未発行のままだったといい、厚生労働省では『病院が妊娠と診断した際に、助産師らが相談にのれるような仕組みが必要だ』としている」と書かれた部分について、産婦人科医師とのツイッターで話題になりました。出産前の時点で助産師が相談に乗るのは無理ではないかという意見があったのですが、いわゆる未受診妊婦(全妊娠経過を通じての産婦人科受診回数が3回以下、もしくは最終受診日から3か月以上の受診がない妊婦)でも出産まで全く医療機関を受診しない妊婦の方が少ないので、妊娠中に社会的リスクのある妊婦を拾い上げることが全く不可能なわけではないと思います。
経済的理由やDV、家族関係…複雑な背景
大阪産婦人科医会による「未受診や飛び込みによる出産等実態調査報告書」については、度々報道されていますが、望んだ妊娠であっても未受診になる例も少なくなく、経済的理由以外にもDVや家族関係の悪さや知識・認識の問題など非常に複雑なようです。報告書を読むと、何とか行政の支援につなぎ、母子の安全を守りたいという試みが伝わってきます。
私はこれまでに多くの出産を扱っている医療施設で働いてきましたが、妊婦さんのバックグラウンドについてどこまで把握し、問題意識を持つかということに関しては、施設によってかなりばらつきがありました。妊婦健診のシステムで、助産師(もしくは看護師)と個別に話をする機会がある施設とない施設があり、個別に話をする際に育児の支援者はいるか、配偶者はいるか、DVはないかなど、身体に関するもの以外の社会的背景について聞いている施設は残念ながら一部にすぎません。人手の問題もありますが、母子の体が健康であればいいというものではありませんし、医療機関がどこまで抱え込むかは別問題として、育児困難のサインに未然に気付ける場所として産院は大きなウェートを占めるため、こういった意識を周産期施設が持つことは非常に大切だと思います(大阪府では思いがけない妊娠の相談窓口「にんしんSOS」を設けているようです)。
子どもを産めば母性が自然と芽生え、どのような困難にも耐えながら育児が出来る、というものではありません。虐待をする親が、みんな人でなしで鬼のような人格の持ち主というものでもありません。バースコントロールの啓発はもちろんのこと、既に宿った命をどうすれば救えるか、医療機関をはじめとした取り組みが実を結んでいくことを願います。
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「妊娠相談窓口」で検索するとそれなりにでます。自治体によって違うので、保健師などに相談もよろしいかと。妊娠検査薬も薬局で購入できるので、それの活...
「妊娠相談窓口」で検索するとそれなりにでます。
自治体によって違うので、保健師などに相談もよろしいかと。
妊娠検査薬も薬局で購入できるので、それの活用も。
相談先ってあることはあるので調べるしかないのが実情です。
あとは故意に住民票に記載しない方をどうするか。
難しい課題はたくさんあると思います。
社会保障という仕組みがあるので、それを使うといいです。
あとで使った分は返せばいい位の気持ちでまずは相談窓口へいくといいですよ。
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何のためのソーシャルワーカー?
ヨッシー
産婦人科からソーシャルワーカーに繋げられないのですか?それは医療の仕事ではなく福祉の仕事ではないのですか?
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それは医療の仕事ではなく福祉の仕事ではないのですか?
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