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原記者の「医療・福祉のツボ」

コラム

医療とお金(3)差額ベッド代は患者側が希望した時だけ

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 入院費用をめぐって、患者や家族が不満を抱いたり、病院とトラブルになったりする原因になりやすいのが、差額ベッド代です。

 差額ベッドは、正式には「特別の療養環境の提供」と言います。

 公的医療保険の範囲を超えるサービスについて、通常の保険診療分に上乗せして医療機関が費用を徴収できる保険外併用療養(選定療養)の一種です。

 厚生労働省の集計によると、2013年7月1日時点で、差額ベッドは全国に26万3687床。そのうち個室は17万3083床で、残りは2~4人部屋です。1日の料金は個室で平均7563円、4人部屋で2346円となっています。

 安いほうでは1日100円という病院もあります。

 一方、高いほうでは1日10万5001円以上(税込み)の個室が34室あり、最高は36万7500円。超高級ホテルのVIP向けスイートルームのような値段です。芸能人、財界人、政治家、あるいは海外から治療を受けに来た富豪などが使うのでしょうか。


治療上の必要、病院の都合で使うときは徴収できない

 差額ベッドの大事なポイントは、患者側が自由な意思に基づき、希望して利用した場合しか、料金を徴収できないことです。文書による同意も必要です。

 したがって、治療上の理由や病棟管理上の理由で、個室や広い部屋に入った場合は、ふだん差額ベッド代が適用される病室であっても、病院は上乗せ分を請求できません。

 具体的には、次のようなケースです。

・救急患者や、手術後の患者などで病状が重く、安静を必要とする場合
・集中治療を受けている場合
・免疫力が低下していて、感染症にかかるのを防ぐ必要がある場合
・終末期で著しい身体的・精神的苦痛を緩和する必要がある場合
・HIV感染の患者、クロイツフェルト・ヤコブ病の患者
 (患者が通常の個室でなく、特別に設備の整った部屋を希望した場合は別)
・MRSAなどに感染していて、他の患者への院内感染を防ぐ必要がある場合


 このほか、「空き部屋がほかにないから」「経過観察中は個室に入るのがルール」といった説明をして追加料金を取るのも、病院側の都合による押しつけだから、違反です。

 疑問を感じたら、地方厚生局かその出先の事務所(都道府県ごとにある)に相談しましょう。違反なら厚生局から病院に指導してもらい、すでに払った分でも返還を求めることができます。


納得したうえで利用する

 差額ベッドは、厚労省が定めた基準を満たす病室について、医療機関が地方厚生局に届ければ、原則として、その病院のベッド数の5割まで設定できます(自治体立の病院は3割まで)。

 差額ベッド代を徴収できる部屋の最低条件は次の4つです。

(1)1室は4床以下
(2)1人あたり床面積6・4平方メートル以上
(3)病床ごとにプライバシーを確保する設備がある
(4)個人用の机、イス、照明、私物収納設備がある


 料金は病院が自由に決めることができます。料金表やベッドの数は、院内の見やすい所に掲示することが義務づけられています。

 プライバシーのしっかり保てる部屋で過ごしたい、快適な環境がほしい、家族と水入らずの時間を持ちたい、仕事や面談のできる部屋でなければ、という場合もあるでしょう。お金に余裕がある人や、民間医療保険などの給付で料金を出せる人なら、活用すればよいでしょう。

 いずれにせよ、差額ベッドは、十分に納得したうえで利用することです。


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原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。2014年度から大阪府立大学大学院に在籍(社会福祉学専攻)。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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