文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

宋美玄のママライフ実況中継

コラム

「免疫力」が常套語…トンデモ医学ビジネスに注意!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック
粘土で遊ぶ娘です

 娘が最近よく口にするのは「かわいそう」という言葉です。ぬいぐるみがテーブルの角にぶつかったり、絵本やDVDで悲しいシーンがあったりすると、「かわいそう」「苦しいね」と言います。しかし、思い通りにならなくて私に物をぶつけたりすることが相変わらずあるので、「どうしてママにはかわいそうって言わないの?」と言うと、「だってかわいそうじゃないもん」とあっさり言われて笑ってしまいました。すっかり生意気女児の片鱗へんりんを見せてきて、これがまた親バカなことにめちゃくちゃ可愛かわいいです。

 先日、とても痛ましい報道がありました。

「赤ちゃんの免疫力高める」と施術、乳児死亡

2014年09月06日 14時09分 読売新聞

 大阪市淀川区で6月、「赤ちゃんの免疫力を高める」などとうたうNPO法人代表の女性(56)(新潟県上越市)から、首を強くひねるなどの施術を受けた神戸市の男児(生後4か月)が途中で意識不明になりその後死亡したことが関係者への取材でわかった。

 代表はマッサージなどの国家資格を持っておらず、昨年も新潟県で施術を受けた幼児が死亡していた。大阪府警は代表から事情を聞くなど死亡の詳しい経緯を調べている。

医療従事者でも、だまされる?

 マッサージの国家資格を持たない女性が「赤ちゃんの免疫力を高める」などとして生後4か月の男児の首を強くひねるなどの施術を行い、死なせたという報道です。しかも、昨年も新潟県で施術を受けた幼児が死亡したとのことです。報道だけでは昨年の死亡例の施術と死亡の因果関係は分かりませんが、乳幼児の首を強くひねるという行為が危険なのは言うまでもないことでしょう。首を強くひねって「背筋や首のゆがみ」を直しても「免疫力」がアップすることはありません。その施術を行っているNPOが数ある免疫の仕組みのどれがどう高まるとうたっているのかは知りませんが、「免疫力」という言葉は医学用語ではなく(私も便宜上使うこともありますが)、トンデモ医学ビジネスの常套じょうとう語なのです。

 ここまでひどいものでなくとも、子供の健康を願う親心につけこんださまざまなビジネスが横行し、もっともらしいキャッチフレーズのもとで成立しつづけています。妊娠中から骨盤にベルトを巻かないと「育てにくい子になる」「子どもが将来頭痛に悩まされる」というものや、おしゃぶりをしないと「子供の免疫力が下がる」というものなど、医学の知識がなければ「そうかな?」と思ってしまうものが多いです(中には医療従事者も信じてしまっているものもあります)。

現代医療の陰謀説唱え、不信感煽る手口も

 中には現代医療の陰謀説を唱えて不信感をあおり、我田引水的に自分のビジネスをすすめるものもあります。余程の知識がなければそういうものを否定するには勇気がいるかも知れません。また、マッサージなど体に触れる施術については、医師、歯科医師、はり師、きゅう師、マッサージ師、柔道整復師という国家資格がありますが、それ以外の整体師やカイロプラクターは国家資格ではありません。○○セラピストや○○アドバイザーはもちろんのことです。名乗っている肩書がどんなものかは知っておいた方がいいと思います。

 今回の事件では、NPO側は死亡と施術の因果関係を否定しています。因果関係が認められれば、刑事罰と損害賠償がふりかかりますので、否定するのは当然のことでしょう。今回の事件の問題点は、昨年にも幼児が死亡しており、今回が初めてではないことです。小さな子供を持つ親が危険な民間療法を受けさせないように見分けられればいいのですが、耳当たりのいい効果効能をうたっているとつい信じてしまうこともあるのが実情です。民間療法の健康被害についてもっと積極的に取り締まれるようにしてほしいものです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

son_n_400

宋 美玄(そん・みひょん)

産婦人科医、医学博士。

1976年、神戸市生まれ。川崎医科大学講師、ロンドン大学病院留学を経て、2010年から国内で産婦人科医として勤務。主な著書に「女医が教える本当に気持ちのいいセックス」(ブックマン社)など。詳しくはこちら

このブログが本になりました。「内診台から覗いた高齢出産の真実」(中央公論新社、税別740円)。

宋美玄のママライフ実況中継の一覧を見る

6件 のコメント

コメントを書く

発達と免疫反応の多様性と変化 時系列

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

解剖・生理医学会に来ています。特定物質や温度刺激への反応も年齢などの前提条件によって変わることが示唆される発表がいくつもありました。同じ発想で慢...

解剖・生理医学会に来ています。

特定物質や温度刺激への反応も年齢などの前提条件によって変わることが示唆される発表がいくつもありました。
同じ発想で慢性炎症によるホルモンのカスケード(反応系)の変化なんかも考えられそうです。
時系列を追うことで見え方が変わる研究もあるかもしれません。
連鎖反応の経路そのものが変わりうるということです。


妊娠による全身の変化だって、持続する新生物とその分離という意味では、悪性新生物と経時変化と切除後の変化に似ています。

アスリートマウスなんか制作すれば、過去の通常マウスやノックアウトマウスでの実験結果と違う結果を出すかもしれません。


同じ負荷の運動でも、人によって肉体的にも精神的にも与える状況は変わりますし、同じ人でも続けていれば体自体が変わって反応も変わるのは一般の方でも理解しやすいことではないでしょうか?
エピジェネティクスという横文字よりも経験的な一般論の方が理解しやすいですね。

特定刺激による脳の発達の変化なんかの発表もありましたので、PTSDの仕組みもある程度は研究が進むのかもしれません。

とはいえ、全ての経験は積み重ねであり、ある程度の相似性を見出すことはできても完全な一致を作るのは難しいのではないかと思います。

だからこそ、一般的な条件下での実験が主流なのでしょうけど、人間のもつ遺伝子や経験の多様性との相似を生み出すためには様々なアプローチが大事になるのかもしれませんね。


原理主義的な発想は必ずトンデモに向かいます。
現代医学の内容でも仮説的な内容の部分はあるのに、絶対的に振りかざす有資格者がいますね。
あるいは、人間自体がトンデモなのかもしれません。

つづきを読む

違反報告

肺癌と抗癌剤の多様性 三船久蔵十段

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

肺癌学会に来ています。分子標的薬の効果など新しい治療や検査の演題が目白押しです。標準治療への耐性や副作用もありますし、標準治療の対象にならない病...

肺癌学会に来ています。
分子標的薬の効果など新しい治療や検査の演題が目白押しです。

標準治療への耐性や副作用もありますし、標準治療の対象にならない病態も多々認めます。

現在進むEBMというデータの標準化は個体差を無視した部分もあり、そのために個々にとってベストにならない難しさがあります。
(とはいえ、標準治療がなければ混乱します。)

抗癌剤には大きな副作用があります。
毒には毒をもって制する発想の薬剤だからですね。
薬剤性間質性肺炎などの存在が全身への大きな影響を示唆します。
また、腫瘍崩壊症候群のように薬剤の効き過ぎがデメリットをもたらすこともあります。

その中で、患者や家族の理解や生活習慣も含めて治療にならざるを得ず、どうやって織り込んでいくかは今後の課題になると思います。

さもなくば、標準医療は耳触りのいいトンデモ医療に負けると思います。
これは癌だけではないと思います。


米国での尊厳死がニュースになりましたが、治療のゴールの設定によって話は全く変わります。
そういうことに敏感な人と鈍感な人もいます。
多くの人は身近に死を感じて生きているわけではないから当たり前ですね。

急に診断を突き付けられて、専門家でさえ理解の困難な、知識を説明されても一度に呑み込むのは難しいと思います。
だからこそ、多職種連携の時代です。


昨日、柔道の三船久蔵十段の動画を見ました。
自然体のまま相手の多彩な技をかわしたり、重心をずらして受け流したかと思いきや、一瞬のスキをついて160㎝程の自分より大きな相手を倒してしまいます。

まるで、治療の効かない癌のようでした。

けれども、ほとんどの時間は相手と共存しているわけで、癌と全身状態の兼ね合いに似ていると思いました。
目標設定と学習が良い人生のキモでしょうか?

つづきを読む

違反報告

自己免疫疾患とワクチン 副作用 NETs

寺田次郎関西医大放射線科不名誉享受

血液学会に行きました。10年程前にNETsという免疫学上のトピックの発見があって、様々な疾患の解明に向かっているそうです。種々の自己免疫疾患もそ...

血液学会に行きました。
10年程前にNETsという免疫学上のトピックの発見があって、様々な疾患の解明に向かっているそうです。

種々の自己免疫疾患もそうです。
免疫には自然免疫と獲得免疫がありますが、それらの連関と全身反応としての症状をイメージするといいのかもしれません。

現代医学では、いくつかの疾患をクリアするために、ワクチンを使って獲得免疫を強化するのですが、もしそのワクチンや添加物が不完全だったり、個体に合わなければ、メリットよりデメリットの方が大きくなります。

子宮頸がんワクチンの副反応はそう考えれば、突発的なサイトカインストームが起こっていたと考えられます。

要するに獲得しない方がいい獲得免疫の存在ですね。

僕もインフルエンザワクチンはいつも体調を崩すので、体質に合わないと考えて接種をやめました。

今後、ワクチンや添加物も選べる自由診療が発達するでしょうか?

また、鉄過剰が遺伝子に関与し骨髄異常を引き起こす演題がありました。
女性の鉄分不足はよくありますが、多すぎても、少なすぎてもいけないですし、また一緒に摂取する物質なんかとの関与も解明されると思います。
それは腸管免疫との関連も示唆されます。
あるいは虫垂炎に関しての見方も変わるでしょうか?

同じように、今まで言われてきた発がん性その他の疾患を引き起こすメカニズムについても今までの常識が覆るかもしれません。

正直、僕も疾患特異的な細かい知識はよくわかりませんが、大雑把な構造として理解すると、その理屈がトンデモかどうかわかると思います。

これさえ飲めばいつでも元気とか、モテるとか、そんな薬があったら、自分が使いますよね。

もっとも、プラセボ効果もバカにしたものでもないですけどね。

つづきを読む

違反報告

すべてのコメントを読む

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、ヨミウリ・オンライン(YOL)、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事