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原記者の「医療・福祉のツボ」

医療・健康・介護のコラム

医療のかかり方(20)出来高払いか、包括払いか

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 医療制度の理解に欠かせない知識として、今回は、診療報酬の「出来高払い」と「包括払い」について、押さえておきましょう。

 出来高払いは、一つひとつの医療行為の単価を積み上げて合計する方式です。居酒屋にたとえると、生ビール○○円を2杯、焼酎水割り△△円、刺し身盛り合わせ××円、というふうに単純に足し算して支払うのと同じです。

 これに対し、包括払いは、一般的な投薬、点滴、検査、画像診断などをどれだけやっても支払額が変わらない方式です。「まるめ」とも呼ばれます。「食べ放題・飲み放題で□千円」というパック料金のようなものですね。

 もともと、日本の公的医療保険の診療報酬は、出来高払いが基本なのですが、入院医療では包括払いのほうが多くなりました。

 それぞれの方式にはメリットとデメリットがあり、患者にとっても無関係ではありません。


過剰医療? 手抜き医療?

 出来高払いの場合、医療機関は、何らかの医療行為をすれば、それに見合った診療報酬を得られるので、必要な医療をやりやすいという利点があります。どういう医療行為を積み上げてその総額になったのか、明細書を見れば、患者側も理解しやすいでしょう。

 一方で、いろんな医療行為をやればやるほど、医療機関が受け取る額が増えるので、過剰診療になりやすいという問題があります。いわゆる薬漬け、検査漬けを招き、医療費の膨張につながるというわけです。

 包括払いの方式は、投薬や点滴、検査などをどれだけやっても医療機関の受け取る総額は変わらないので、必要性のはっきりしない投薬・点滴・検査が減り、医療費を抑えやすいことが利点です(手術、特別な薬・検査・処置などは別扱いで出来高払い)。

 その反面、医療機関から見ると、投薬や検査は、収入にならないのにコストだけかかるので、過少医療、つまり手抜きが起きる可能性があります。また、入院料が同じ額なら、投薬や検査がいろいろ必要な患者は歓迎されず、入院を受け入れるかどうかの場面で、患者の選別が起きる可能性があります。

 検査や治療を受けるかどうか選択する権利が患者にあると言っても、現実には、どういう医療行為をするか、主導しているのは医療提供者の側です。

 自分や家族が受けている医療の内容が、やりすぎではないか、足りないのではないかといった疑問を抱いたときは、入院料が出来高払いか包括払いかを考えてみる必要があります。


DPC適用病院、療養病棟の場合

 急性期医療に取り組んでいる病院の多くは、DPC(診断群分類包括評価)という入院料の算定方式が適用されています。入院基本料、投薬、注射、検査、画像診断、病理診断、一般的な処置は包括払いになります。これに出来高払いで上積みされるのは、手術、麻酔、放射線治療、特別な検査、高額な処置、リハビリテーション、精神科専門療法などです。

 長期入院向けの療養病棟では、投薬、注射、検査、画像診断、病理診断、一般的な処置が入院基本料に含まれます。

 さらに、患者の病状や受けている医療処置の内容に応じた「医療区分」と、日常生活の動作がどれぐらいできるかを示す「ADL区分」が、それぞれ3段階に分けられ、その組み合わせによって患者ごとに点数が違ってきます。療養病棟入院基本料1(患者20人あたり看護職員1人以上)という高いほうの看護ランクでは、1日あたり、次の点数になります(1点は10円)。医療区分、ADL区分とも、3のほうが重い状態です。

 医療区分1医療区分2医療区分3
ADL区分396714121810
ADL区分29191384 1755
ADL区分181412301468


 こういう点数設定に加え、療養病棟入院基本料1のランクには、医療区分2と3の患者が8割以上という条件もあるため、一般的には、病状が重くて寝たきりの患者が歓迎され、軽い病状の患者は敬遠される傾向があります。

 一般病棟でも、その病棟での入院が90日を超えた患者は、療養病棟と同じ区分の点数による包括払いになります。

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原昌平20140903_300

原昌平(はら・しょうへい)

読売新聞大阪本社編集委員。
1982年、京都大学理学部卒、読売新聞大阪本社に入社。京都支局、社会部、 科学部デスクを経て2010年から編集委員。1996年以降、医療と社会保障を中心に取材。精神保健福祉士。社会福祉学修士。大阪府立大学大学院客員研究員。大阪に生まれ、ずっと関西に住んでいる。好きなものは山歩き、温泉、料理、SFなど。編集した本に「大事典 これでわかる!医療のしくみ」(中公新書ラクレ)など。

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